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婿養子の相続権とは? 遺産を相続できる場合について解説

2021年05月31日
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婿養子の相続権とは? 遺産を相続できる場合について解説

千葉市内における、2019年中の死亡者数は9340人で、前年比563人の増加となりました。
死亡者数が増加するに伴い、相続手続きが発生する頻度も増えていることになります。

夫が妻の実家に「婿入り」して、婚姻時に妻の姓に変更して妻の両親と同居していたケースでは、夫が婿養子と呼ばれて、血のつながった家族同然の生活を送っているケースが多いでしょう。
そのため、婿入り先の両親が亡くなった場合、婿入りした夫としては、当然自分も財産を相続できると期待するのも自然な流れと言えます。

しかし、婿入りした夫はもともと他人のため、他の家族から相続に関して冷遇されるケースも少なくありません。この場合、「婿入りした夫に法律上の相続権があるかどうか」が重要なポイントになります。

この記事では、婿養子の相続権の有無を判断するためのポイントなどを中心に、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が解説します。

(出典:「令和元年合計特殊出生率等(確定数)の統計データ」(千葉市))

1、婿養子として相続権を得られるかどうかは「養子縁組」がポイント

「婿養子」とは、現在は法律用語ではありませんが、一般的に、妻の両親と養子縁組をしている夫をいいます。婚姻時の姓を妻の姓に変更したが、妻の両親と養子縁組まではしていない夫も「婿養子」と呼ばれることがありますが、「婿養子」として法律上相続権を得られるかどうかは、亡くなった養親(=被相続人)と「養子縁組」をしているかどうかによって決まります

※以下、本文中の「婿養子」とは、妻の両親を養親として「養子縁組」をしている夫を指すこととします。

  1. (1)養子縁組とは?

    「養子縁組」とは、民法上の手続きに従い、もともと実の親子(血縁上の親子)ではなかった人の間に、法律上の親子関係を発生させることをいいます。
    養子縁組をした場合、多くの法律関係において、養子は実の子と同等の取り扱いを受けます

    養子縁組をするためには、養子縁組が認められるための要件を満たしたうえで、役所に対する届け出を行う必要があります。

  2. (2)養子縁組をしていれば「子ども」として相続権がある

    養子縁組をした場合、養親(=被相続人)が亡くなった際、養子は養親の「子ども」として相続権を有します

    民法第887条第1項に基づき、被相続人の子どもは、原則として相続人となります(欠格事由・廃除の場合は例外)。
    したがって、「婿入りした夫が妻の両親と養子縁組をしているケース」では、妻の両親のいずれかが亡くなった場合に、夫は婿養子として相続権を獲得できるのです。

  3. (3)養子縁組をしていない場合は相続権がない

    逆に言えば、妻の両親と養子縁組をしていなければ、妻の両親を相続することはできません。
    養子縁組をしていなければ、婿入りした夫と妻の両親との間には、法律上の親子関係がないからです。

    たとえ妻の両親とどんなに長く同居していたとしても、「妻の両親の生前に養子縁組をしていなければ、婿入りした夫に相続権は一切発生しない」のです。

    また、結婚の際に妻の姓へ変更していた場合でも、養子縁組の届け出が行われていなければ、やはり婿養子として相続権を得ることはできません。

2、婿養子の相続割合と実親の相続権について

養子縁組をした婿養子が、妻の両親の相続権を有するとしても、その相続割合は実の子と比べてどうなるのでしょうか。

また、婿養子の実の両親が亡くなった場合の相続については、婿養子はどのような権利を有するのでしょうか。

以下では、上記の2つのポイントについて解説します。

  1. (1)婿養子の相続割合は実の子と同じ

    婿養子を含めて、相続においては、「養子」は実の子と同等に取り扱われます。
    したがって、養子と実の子の相続割合(相続分)は同じです。

    たとえば、妻の父が亡くなり、相続人が以下の計4人だったとします。

    • 配偶者(姑)
    • 実の子2人(婿養子の妻を含む)
    • 婿養子


    この場合、配偶者と子どもで2分の1ずつ相続分を分け合います(民法第900条第1号)。
    前述のとおり、養子と実の子の相続分は平等ですので、実の子2人と婿養子の計3人で、子どもに割り当てられた2分の1の相続分を等しく分け合います。

    すると、各相続人の相続分は、以下のとおりになります。

    配偶者(姑):2分の1
    子ども(実の子2人と婿養子):各々6分の1
  2. (2)婿養子は実親との関係でも相続権を有する

    妻の両親と養子縁組を行っても、実の両親との間で、法律上の親子関係が消滅するわけではありません。

    したがって婿養子は、実の両親のいずれかが亡くなった場合には、その「子ども」として遺産相続をすることが可能です。

3、養子縁組を解消された場合、相続権はどうなる?

たとえば妻と離婚をした場合などには、妻の両親との間で養子縁組を解消(離縁)するのが通常です。離婚しても自動的に養子縁組が解消されるわけではなく、離婚とは別に養子縁組を解消する手続が必要となります。

養子縁組が解消された場合、それまで婿養子だった夫が有していた妻の両親の相続権はどうなるのでしょうか。

  1. (1)養子縁組の解消(離縁)により相続権は消滅する

    養子縁組を解消した場合、養親と養子の間の法律上の親子関係は消滅します。

    婿養子の相続権は、養親との間にある法律上の親子関係を根拠にしています。
    したがって、養子縁組の解消(離縁)により法律上の親子関係が消滅すれば、婿養子としての相続権も自動的に消滅してしまいます

    よって、養子縁組解消の後で妻の両親が亡くなったとしても、婿養子として妻の両親の遺産を相続することはできません。

  2. (2)養子縁組の解消(離縁)に必要な手続きとは

    養子縁組の解消(離縁)をする方法には、以下の方法があります。

    ① 協議上の離縁
    養親と養子の間の合意に基づき、養子縁組を解消する方法です(民法第811条第1項)。
    協議上の離縁をするためには、特に理由は必要なく、養親・養子間の合意さえあれば足ります。養親・養子間で合意があれば、役所に離縁の届出を出すことにより、養子縁組関係は解消することになります。

    ② 調停離縁
    調停離縁とは、家庭裁判所において、調停委員会の関与のもと、養親と養子の間で離縁の条件等について話し合い、双方の合意によって離縁する方法です
    協議上の離縁ができない場合に、離縁したいからといってもいきなり離縁の訴えを提起することは原則としてできず、まずは調停離縁を申し立てる必要があります。

    ③ 審判離縁
    審判離縁とは、調停手続きによって養親と養子間で合意できない場合に、裁判所が離縁を認める審判をすることがあり、この審判が確定することによって離縁する方法です。

    ④ 裁判離縁
    協議上の離縁の話し合いがまとまらず、調停手続によっても離縁の合意ができなかった場合に、養親・養子のどちらかが相手を訴え、訴訟手続きの中で養子縁組の解消を認めてもらう方法です。
    裁判離縁は相手の同意なく強制的に離縁する方法であり、裁判離縁が成立するためには、以下のいずれかの法律上の離縁事由が必要となります(民法第814条第1項)。

    • 他の一方から悪意で遺棄されたとき
    • 他の一方の生死が3年以上明らかでないとき
    • その他養子縁組を継続し難い重大な事由があるとき


    上記からわかることは、これらの離縁事由が存在しない限り、婿養子は養子縁組の解消(離縁)を受け入れる必要はないということです。

    家庭によっては、婿養子から相続権を奪うために、長年同居していた婿養子に対して養子縁組の解消(離縁)を迫るケースも存在します。

    しかし、養子縁組の解消(離縁)には、原則として「養子側の同意」が必要です。
    婿養子として納得がいかない場合は、このような不当な離縁要求には応じず、自身の権利を適切に主張しましょう。

4、「婿養子には相続させない」という遺言書がある場合の対処法は?

婿養子に遺産を相続させないため、被相続人が、実の子だけに遺産を相続させるという内容の遺言書を作成しているケースがあります。

しかし、このような内容の遺言書によっても、婿養子の相続権を完全に奪うことはできません。

  1. (1)婿養子には「遺留分」がある

    養子縁組をした婿養子は、妻の両親の法律上の「子ども」として、「遺留分」という権利を有します

    遺留分は、遺産を相続できる最低保障額を意味し、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められています。

    婿養子も妻の両親の法律上の「子ども」なので、遺留分権利者として、一定金額の遺産を相続する権利が保障されているのです。

    遺留分割合は、婿養子の法定相続分に2分の1をかけた割合となります(民法第1042条第1項第2号)。

  2. (2)遺留分侵害額請求により金銭の請求が可能

    遺言書などによって、婿養子が有する遺留分未満の金額しか相続分を得られなかった場合、婿養子は他の相続人に対して「遺留分侵害額請求」を行うことができます(民法第1046条第1項)。

    遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された遺留分権利者が、他の相続人に対して、侵害分(不足分)に相当する金銭を請求することをいいます。

    遺留分侵害額請求を行う際に重要なのは、遺留分の基礎となる相続財産の全てを漏れなく把握したうえで、遺留分侵害額を計算することです。

    相続財産の把握漏れがあると、請求できる遺留分侵害額が少なくなってしまうので、専門家に相談して、徹底的に財産評価を行う必要があります。

  3. (3)遺留分侵害額の計算例

    以下の設例を用いて、実際に遺留分侵害額を計算してみましょう。

    • 法定相続人は配偶者(妻の母)、実の子2人(妻とその弟)、婿養子の計4人
    • 相続財産の全体額は6000万円
    • 遺言書で指定された相続分は、配偶者3000万円、実の子2人各1500万円(婿養子は0円)


    まず、婿養子の遺留分額を計算します。

    婿養子の法定相続分は、子どもに割り当てられる2分の1を3等分した「6分の1」です。
    これに2分の1をかけることで、婿養子の遺留分割合は「12分の1」となります。

    相続財産の全体額は6000万円なので、これに婿養子の遺留分割合(12分の1)をかけると、婿養子の遺留分額は「500万円」です。

    したがって、婿養子は他の相続人に対して、計500万円の遺留分侵害額の支払いを請求できます。

    この事例では、相続分はすべて遺言によって指定されているので、他の相続人は、計500万円の遺留分侵害額について、指定を受けた自身の相続分(遺贈)の金額に応じて各々分担します。

    よって、婿養子は各相続人に対して、それぞれ以下の金額の遺留分侵害額請求を行うことができます。

    配偶者(妻の母):250万円
    実の子2人(妻とその弟):各125万円

5、まとめ

婿養子は、妻の両親から見ればもともとは他人ですが、妻の両親と養子縁組をしたことにより、妻の亡くなった両親が有する遺産を相続することが認められます。

もし婿養子の方が、妻の実家から相続に関して冷遇された場合、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスにご相談ください。
法定相続分・遺留分などの法的な権利内容を具体的に検討したうえで、依頼者の正当な権利を実現するためにサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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