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ウイルス作成罪とは? サイバー条約との関係や課題・問題点について

2021年09月13日
  • その他
  • ウイルス作成罪
ウイルス作成罪とは? サイバー条約との関係や課題・問題点について

千葉県では県の総合計画として「輝け!ちば元気プラン」を策定しており、犯罪の起こりにくいまちづくりの推進に向けた取り組みとしてサイバー空間の安全確保を掲げています。情報セキュリティー対策やサイバー犯罪対策の啓発とともに、官民連携で不正アクセス・フィッシングなどのサイバー犯罪を徹底的に取り締まると明言しているため、不正事案があれば厳しい対応を受けるのは明らかでしょう。

近年、コンピューターウイルスに関する事件がニュースで報じられる機会が増えています。特に平成30年から平成31年にかけては「コインハイブ事件」や「無限アラート事件」と呼ばれる事件が発生し、大々的に報じられて大きな関心を呼びました。

しかし、このような報道をみても、どんな行為が犯罪となるのか、どの程度の刑罰を受けるのかといった点がわかりにくく、疑問を抱えたままの方も少なくないかもしれません。本コラムでは「ウイルス作成罪」の概要や罰則、今後の課題や問題点について、千葉オフィスの弁護士が解説します。

1、ウイルス作成罪とは

まずは「ウイルス作成罪」とはどのような犯罪なのかを確認していきましょう。

  1. (1)刑法の「不正指令電磁的記録に関する罪」のひとつ

    「ウイルス作成罪」は、刑法第19章の2「不正指令電磁的記録に関する罪」に規定されています。
    正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、人の電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、またはその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録等を作成する行為を罰する犯罪です

    正確には刑法第168条の2第1項「不正指令電磁的記録作成罪」といい、通称として「ウイルス作成罪」と呼ばれています。

    ウイルス作成罪を含めた不正指令電磁的記録に関する罪は、平成23年の刑法改正によって生まれました。
    この改正は「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」と名付けられています。

    改正前の刑法においてコンピューター犯罪として規定されていたのは、第161条の2「電磁的記録不正作出・共用罪」や第234条の2「電子計算機損壊等業務妨害罪」などに限られていました。
    これらは、コンピューターがインターネットに接続されていないスタンドアロン状態での発生を想定したものであり、インターネットを悪用した犯罪への適用は困難です。

    そこで刑法を改正して不正指令電磁的記録に関する罪を新設し、多発するインターネット犯罪の取り締まりを強化するに至ったという経緯があります。

  2. (2)不正指令電磁的記録に関する罪にあたる行為

    不正指令電磁的記録に関する罪には、ウイルス作成罪のほかにも次のような犯罪があります。

    ● ウイルス提供罪(第168条の2第1項)
    コンピューターウイルスのソースコード(プログラムの作成者がプログラミング言語でプログラムの内容を記述したファイル)や実行ファイル(ソースコードを機械語に翻訳したもの)を提供した場合に成立します。

    ● ウイルス供用罪(第168条の2第2項)
    コンピューターウイルスを、その使用者の意図とは無関係に勝手に実行される状態にした場合に成立します。
    供用罪については未遂処罰規定が設けられているため、実際にコンピューターウイルスが実行される状態になっていなくても、その行為さえあれば処罰は免れません

    ● ウイルス取得罪・保管罪(第168条の3)
    コンピューターウイルスのソースコードや実行ファイルを、正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、取得・保管した場合に成立します。

2、ウイルス作成罪の罰則

ウイルス作成罪のほか、不正指令電磁的記録に関する罪の罰則は次のとおりです。

  • ウイルス作成罪・提供罪……3年以下の懲役または50万円以下の罰金(第168条の2第1項)
  • ウイルス供用罪……3年以下の懲役または50万円以下の罰金(第168条の2第2項)
  • ウイルス取得罪・保管罪……2年以下の懲役または30万円以下の罰金(第168条の3)


法律の定めでは懲役刑も規定されていますが、実際の事例に目を向けると罰金刑となるケースが多いようです。
たとえば、仮想通貨の取引承認を他人の端末で自動的に実行する「マイニング」という手法で報酬を得ていたウェブサイトの管理人には、ウイルス保管罪で罰金10万円が言い渡されています。

このような事例をみると「有罪判決を受けても罰金で済まされる」と考えてしまいがちですが、問題は刑罰の重さだけにとどまりません。

警察庁は全国警察に対して「積極的な検挙広報を実施し、本罪に抵触する違法行為のまん延防止に努めること」と通達しています。
逮捕・刑罰を受けた事実は大々的に広報されるおそれが高いため、個人・法人の信用を傷つけてしまう事態に陥る危険は極めて高いといえるでしょう。

3、ウイルス作成罪とサイバー条約の違い

ウイルス作成罪を含む不正指令電磁的記録に関する罪は、世界的な「サイバー条約」と密接な関係にあります。
サイバー条約とはどのような条約なのか、国内法におけるウイルス作成罪などとどのような関係にあるのかを確認しておきましょう。

  1. (1)サイバー条約とは

    サイバー条約とは、平成13(2001)年にハンガリーのブダペストにおいて締結された条約です。
    国境を超えて広範に影響を及ぼす危険のあるサイバー犯罪への対抗策として37カ国が署名、4カ国が締約しており、わが国も署名国に含まれています。

    条約には、違法なアクセス・傍受・データ妨害・システム妨害・コンピューター関連の偽造や詐欺のほか、世界的にも問題視されている児童ポルノ・著作権に関する犯罪の法整備と国際協力に関する事項が盛り込まれています。

  2. (2)条約への加盟で新たに生まれたウイルス作成罪

    サイバー条約に加盟している国として、わが国はサイバー犯罪に対抗するための法整備を進める責任に追われることになりました。
    この段階で、すでに不正指令電磁的記録に関する罪の新設を盛り込んだ刑法改正案はできあがっていましたが、国会での議論が膠着(こうちゃく)してしまいます。

    そうしている間に、国内ではこれまでに類を見ないサイバー犯罪が多発しました。
    ファイル交換ソフトによって「暴露ウイルス」が拡散してしまった、「トロイの木馬」によって個人情報が盗まれて偽造クレジットカードが横行したといった状況に社会は混乱します。
    このような状況から、法整備の必要が急務となり、条約から10年が経過した平成23年に不正指令電磁的記録に関する罪が成立しました。

4、ウイルス作成罪の課題・問題点

ウイルス作成罪をはじめとした不正指令電磁的記録に関する罪は、時代の流れや社会の要請に応えたかたちで創設された犯罪です。
ただし、実際にウイルス作成罪などが適用された事件をみると、多くの課題や問題点を抱えていることが浮き彫りになっています。

  1. (1)国内法の構成要件があいまいである

    ウイルス作成罪をはじめとした不正指令電磁的記録に関する罪は、国際的なサイバー条約の定めに準拠した内容になっています。
    ところが、サイバー条約では犯罪の類型を「違法アクセス・違法傍受・データ妨害・システム妨害」の四つに分類したうえで、処罰の対象や違法とはならない場合の条件といった「構成要件」が厳密に定められている一方で、国内法である刑法では構成要件があいまいなかたちでしか規定されていません

    どのような場合にウイルス作成罪などが適用されるのかが明確ではないため、サイバー条約に定められている4類型には該当しない目的であっても処罰を受けてしまう危険があるのです。

  2. (2)適用範囲が広いため思いがけず罪に問われるおそれがある

    ウイルス作成罪をはじめとした不正指令電磁的記録に関する罪は、刑法上の構成要件があいまいであるため、適用範囲を広く取る解釈が可能です。
    これは、未知のウイルスや技術の登場によって法律の規制が追いつかなくなる事態を防ぐために講じられた対策ですが、その反面、適用範囲が広すぎるため思いがけず罪に問われてしまうおそれがあります。

    たとえば、パソコンの画面に「何回閉じても無駄です」といったメッセージが繰り返し表示されるプログラムを電子掲示板で公開した、いわゆる「無限アラート事件(アラートループ事件)」では、プログラムを公開した女子中学生や大学生らが摘発されました。
    このプログラムは、パソコンやデータを破壊するような機能を持たないいたずらの一種としてとらえられていたものですが、四角四面に法律の定めに照らせばウイルス作成罪にあたります。

    本来、不正指令電磁的記録に関する罪は悪意のあるサイバー犯罪を取り締まる目的で創設された犯罪ですが、拡大解釈による適用を問題視する意見も少なくありません。

5、まとめ

ウイルス作成罪は、平成23年の刑法改正によって新設された「不正指令電磁的記録に関する罪」のひとつです。

コンピューターウイルスは、パソコンやデータを破壊する、個人情報を流出させるといった被害をもたらす危険なプログラムなので、悪意のある行為は厳格な処罰を受けることになるでしょう。
ただし、不正指令電磁的記録に関する罪は、構成要件があいまいであり適用範囲の広い解釈が可能であるため、正当な行為やいたずら程度であっても逮捕・刑罰を受けてしまう危険があり得ます。

思いがけず容疑をかけられてしまった場合は、弁護士によるサポートが欠かせません。
ウイルス作成をはじめとした不正指令電磁的記録に関する罪の容疑をかけられてしまい、逮捕や刑罰に不安を感じているなら、刑事事件の弁護実績が豊富なベリーベスト法律事務所 千葉オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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