違法ドラッグで問われる罪は? 合法・脱法・危険ドラッグとの違いや逮捕後の流れ
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違法な薬物として多くの方がイメージするのは「覚醒剤」や「大麻」が一般的かもしれません。
千葉県警察のホームページにおいて公開されているデータによると、令和元年中に千葉県内で検挙された覚醒剤事犯は553件、大麻事犯は148件でした。
しかし、近年の薬物取り締まりにおいては、「違法ドラッグ」も重視されています。
千葉県警察・千葉県では、それぞれのホームページで違法ドラッグに関するページを開設して「持たない、買わない、使わない」と注意を喚起しています。
違法ドラッグは、使用者の身体に重大な危険をおよぼすだけでなく、他者にも危害を与えてしまうおそれも高く、法律によって所持・使用が禁止されています。
厳しい罰則も規定されているので、絶対に手出しをしてはいけません。
このコラムでは、「違法ドラッグ」で問われる罪・罰則や逮捕されてしまった場合の流れについてベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が解説します。
1、「違法ドラッグ」とは?
まずは「違法ドラッグ」とはどのような薬物を指すのかを確認しましょう。
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(1)違法ドラッグ
違法ドラッグは、「麻薬」または「向精神薬」には指定されていないものの、これらと「類似する有害性を有することが疑われる物質」であって、もっぱら人に乱用させることを目的として製造・販売されています
身体に摂取する目的ではないように見せかけていても、実際には身体への使用が常態化しており、法律の規制をかいくぐるかたちで社会にまん延している危険な薬物です。
また、違法ドラッグのなかには、従来の麻薬の化学構造を部分的に変化させたものや、これまでは国内で知られていなかった新たな幻覚性植物に由来するものも多く、薬物乱用者と法律のいたちごっこが続いてきました。 -
(2)違法ドラッグの販売方法
違法ドラッグの多くは、たとえば覚醒剤のように「注射などで身体に摂取するもの」や麻薬のように「錠剤を経口摂取するもの」といった形式をとっていません。
お香やハーブ、アロマオイルといったフレグランス用品や、入浴用のバスソルトといった日用品として販売されているものが多数です。
一見すると何ら危険性を感じないパッケージやラベルが使用されていますが、香りなどを楽しむ目的ではなく、身体への摂取を目的として販売されています。
インターネットを通じて身体への摂取方法の情報が容易に得られるため、誰でも簡単に薬理作用を得られるという点が問題視されています。
2、合法ドラッグや危険ドラッグとは別のものなのか?
「違法ドラッグ」のほかにも、世間では「合法ドラッグ」「脱法ドラッグ」「危険ドラッグ」といったさまざまな名称のドラッグが流通しています。
これらは、名称に関係なくほとんどが法律によって禁止されている危険な薬物です。
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(1)名称が「合法」「脱法」でも違法
「合法」や「脱法」といった呼び名がつくと、あたかも「合法と認められている」「法律で規制されていない」という印象を受けてしまうでしょう。
実は、これらのドラッグ類は、呼び名が変遷してきただけで全て同じものです。
平成12年ごろまでは「合法ドラッグ」と呼ばれていたものが次第に「脱法ドラッグ」と呼ばれるようになりました。
平成17年ころには厚生労働省の検討会が「違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)」と呼称し、さらに平成26年には厚生労働省と警察庁によって「危険ドラッグ」という名称を発表したという経緯があります。
「合法」「脱法」「違法」「危険」とさまざまな名称で呼ばれているドラッグ類は、「すべて同じもの」として法律の規制を受けます。
合法・脱法といった名称にだまされて、法律が認めている、安全性が確認されているといった誤解をしないように注意しましょう。 -
(2)安全性が高いというのは誤解|違法ドラッグの症状
違法ドラッグには麻薬と類似する成分が含まれているため、麻薬を使用したときと同様の症状が発症します。
- 幻覚・幻聴
- 妄想・錯乱
- 嘔吐(おうと)
- 疲労感・倦怠(けんたい)感
- 機能低下
摂取した直後は「気持ちがいい」「不安から解放される」「頭がすっきりする」といったいわゆる多幸感が得られるといわれていますが、身体には深刻なダメージが残ります。
続けているうちに依存症となり、禁断症状に耐えられず繰り返し薬物を使用することになります。
また、これらの行為によって身体に耐性がついてしまうため、より強い効果があるドラッグを求めるようになり、増量も避けられません。
毒性が強いため、使用後に「急性中毒」に陥って死亡してしまう、幻覚・幻聴作用によって錯乱し他人に危害を加えてしまう、自動車の運転中に発作を起こして事故を起こしてしまうといった事例も報告されています。
3、違法ドラッグで問われる罪|医薬品医療機器等法違反とは
違法ドラッグは法律による規制を受けます。
「合法」「脱法」などとして店舗やインターネットで販売されているものでも、実際には法律によって禁止されている違法薬物となります。
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(1)「指定薬物」として医薬品医療機器等法違反に問われる
違法ドラッグを規制するのは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。通称、「医薬品医療機器等法」「薬機法」とも呼ばれています。
この法律は、もとは「薬事法」という名称でしたが、平成26年の改正によって名称が変更されました。
医薬品医療機器等法第2条15項は「中枢神経系の興奮もしくは抑制または幻覚の作用を有する蓋然(がいぜん)性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物」を「指定薬物」と定義しています。
ここでいう「指定」は、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて指定するもので、省令によって多数の物質が指定を受けています。
これら指定薬物は、医薬品医療機器等法第76条の4により、医療等の用途に供する場合を除き製造・輸入・販売・授与・所持・購入・譲り受け使用が禁止されています。 -
(2)「合法だと聞いていた」は認められるのか
違法ドラッグのなかには、販売店などが「合法だ」と説明して販売するケースが目立ちます。
この場合、購入・所持していた場合でも、「違法だという認識がなかった」と主張できるのではないかと考える方もいるでしょう。
ここで、違法ドラッグに関する有名な判例を紹介します。
【福岡高等裁判所 薬事法違反被告事件 平成28年(う)第181号】
ハーブ販売店で「合法で規制の対象ではない」と説明を受けて購入した植物片について、違法な薬物であるのかの故意が争われた事例です。
この事例では、被告人が「販売店の説明を受けて合法だと認識していた」と主張しました。
しかし、裁判所は「指定薬物と同様に規制され得る同種の物であると認識している」「指定薬物が含有されていないと信じた合理的な理由があったとはいえない」とし、訴えを退けています。
省令によって指定された薬物の規定まで理解していなくても、指定薬物と同様の薬理作用があることを認識している以上は故意が否定されません。
たとえ「合法だ」と聞かされていても、違法ドラッグとしての薬効を期待して購入・所持したのであれば処罰は避けられないでしょう。 -
(3)医薬品医療機器等法違反の罰則
指定薬物に関する禁止行為があった場合は、その目的に応じて刑罰が科せられます。
- 医療等の用途以外の用途に供するために業として指定薬物を製造・輸入・販売・授与・所持した場合(医薬品医療機器等法第83条の9)
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれらを併科 - 医療等の用途以外の用途に供するために業としてではなく指定薬物を製造・輸入・販売・授与・所持した場合(同法第84条28号)
3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらを併科
店舗はなくても、ネットオークションやフリマサイト・フリマアプリなどを利用して繰り返し販売している事実があれば、業として販売しているものとして厳しい刑罰を科せられるでしょう。
また、個人で使用する目的や興味本位であっても、所持・購入・使用は禁止です。
販売者が検挙され、取引履歴などから購入・所持が発覚した場合は、芋づる式に検挙されて厳しい刑罰を科せられてしまうおそれがあります。 - 医療等の用途以外の用途に供するために業として指定薬物を製造・輸入・販売・授与・所持した場合(医薬品医療機器等法第83条の9)
4、違法ドラッグで逮捕された! その後の流れとは?
違法ドラッグの所持や使用などで逮捕されると、その後はどのような処分を受けることになるのでしょうか?
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(1)身柄拘束を受けて刑事裁判にかけられる
逮捕されると、警察段階で最長48時間、検察官の段階で最長24時間の合計72時間にわたる身柄拘束を受ける可能性があります。
さらに、検察官の請求によって裁判官が勾留を認めると、原則10日間、延長請求によってさらに最長10日間の身柄拘束を受けるため、逮捕から最長23日間にわたって社会から隔離されます。
この期間は、自宅へ帰ることも、会社や学校へ通うことも許されません。
携帯電話・スマートフォンなども使用できないため、自由な連絡もできません。
さらに、検察官が「刑事裁判で罪を問うべき」と判断すれば起訴され、被告人として刑事裁判を待つ身となります。
被告人になると、出廷を確保するためさらに勾留が続くので、保釈されない限り刑事裁判が終わるまで身柄拘束が続きます。 -
(2)有罪判決を受ければ刑罰が科せられる
刑事裁判では、さまざまな証拠や証言をもとに裁判官が有罪・無罪を審理します。
わが国の司法制度では、検察官が起訴した事件の99%以上が有罪判決を受けているため、起訴されれば極めて高い割合で有罪判決が下されます。
有罪の場合は、さらにどの程度の刑罰が適当であるのかが審理され、量刑が言い渡されます。
業としてではない所持や使用であれば、「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」、またはこれらの併科(2つ以上の刑罰を同時に課す)という法定刑の範囲内で量刑が決定します。 -
(3)厳しい処罰を避けるためには弁護士の協力が不可欠
違法ドラッグの所持・使用などは法律によって厳しく規制されています。
発覚すれば逮捕・刑罰は避けられないでしょう。
厳しい処罰を避けるためには、刑事事件の弁護実績を豊富にもつ弁護士への相談が有効となります。
弁護士によって、二度と違法ドラッグに手を出さないことの誓約や家族などによる監督体制の強化、依存症から立ち直るための自助グループへの参加といった方策を、検察官や裁判官に示すことで、更生が期待されて刑罰が軽減される可能性も高まるでしょう。
また、警察官・検察官による取り調べに際しては、どのような内容を認め、どのような疑いは否定するのかを明確にする必要があります。
これらも薬物事犯の対応実績が豊富な弁護士のサポートによって、取り調べにおける正しい対応についてのアドバイスも得られるでしょう。
5、まとめ
違法ドラッグは、「合法・脱法」などまるで安全性が確保されており法律の規制を受けないものであるかのようなイメージで販売されるケースがほとんどです。
しかも、お香・ハーブ・アロマといった日用品を装って広く販売されているので、誰でも容易に購入し、使用することが可能です。
違法ドラッグの所持や使用が発覚し、逮捕・勾留されてしまった場合は、直ちに弁護士に相談してサポートを求めましょう。
ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスには、薬物事犯をはじめとした刑事事件の対応実績が豊富な弁護士が在籍しています。
逮捕・勾留からの早期釈放や厳しい処分の回避を目指すには、弁護士の協力が欠かせません。
まずはお気軽にベリーベスト法律事務所 千葉オフィスまでご一報ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています