詐欺罪とは? 刑を軽くするにはどうすればよい?

2019年03月25日
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詐欺罪とは? 刑を軽くするにはどうすればよい?

千葉県千葉市のホームページでは、詐欺や悪質商法の注意一覧を掲載し、消費者に対して注意を呼びかけています。「振り込め詐欺」「チケット詐欺」「投資詐欺」「結婚詐欺」……。詐欺の例は枚挙にいとまがありません。詐欺は私たちの誰もが無縁ではいられない犯罪のひとつです。

身近な犯罪であるにもかかわらず、詐欺罪がどのような条件で成立し、詐欺容疑で逮捕されたらどうなるのかなどを知っている方は少ないのではないでしょうか。意外な行為が詐欺にあたることもありますし、身近な方が加害者として巻き込まれる可能性もあるかもしれません。そのとき、家族はどうしたらよいのでしょうか。

今回は、詐欺罪とその刑罰について、弁護士が詳しく解説します。

1、そもそも詐欺罪って?

詐欺といえば、「振り込め詐欺」を思い浮かべる方が多いかもしれません。振り込め詐欺への警戒は、巡回パトカーのアナウンスや、ATMの画面、レターパックのとじ口など、日常的に接していることでしょう。

警察署はもちろん市役所でも注意喚起をされているにもかかわらず、それでも後を絶たない詐欺。具体的にはどのような行為が詐欺罪として罪が裁かれることになるのでしょうか。

  1. (1)詐欺罪とは

    詐欺罪は刑法第246条に規定されている犯罪です。「人を欺いて財物を交付させること」、または、それによって「財産上不法の利益を得る、または他人に得させる」と詐欺罪に該当します。

    金品をだましとることだけでなく、「代金を払うと思わせてサービスを提供させたのに支払わないこと」も詐欺罪の要件に該当します。つまり無銭飲食や無賃乗車なども、詐欺罪にあたる可能性があるのです。法定刑は「10年以下の懲役」で、罰金刑はありません。

    また、詐欺罪には刑法第250条によって未遂罪が規定されています。したがって、仮に犯行に及んでこれを成し遂げることができなかったとしても、刑事罰に問われる可能性があります。

  2. (2)詐欺罪の成立条件

    詐欺罪が成立するポイントは以下の4つです。

    1. A)相手をだまそうとする行為があること
    2. B)相手がそれによってだまされること
    3. C)だまされた結果、相手が財物を手放すこと
    4. D)手放した財物が誰かの手に渡り、相手が損害を受けること
    5. E)上記A)→B)→C)→D)に、それぞれ因果関係が認められること

    これらをすべて満たした場合、詐欺罪の既遂が成立します。そして、相手をだまそうとする行為がなされれば、相手がだまされなくとも詐欺罪の未遂が成立します。
    もっとも、A)に関して、相手をだます行為のすべてが詐欺行為になるわけではありません。財物を交付させようとして相手をだますことが必要です。
    例えば、デパート等で、店員に対し、「向こうでお客さんが店員を呼んでいますよ」と嘘を言い、店員がそれを信じて視線をそらした隙に商品を盗んだとしても、この場合の嘘は、店員の気をそらしてその間に店員の意思に反して商品を盗むためになされたものであり、店員から商品を手渡してもらうためになされた嘘ではないため、詐欺行為ではなく、窃盗行為になります。

    また、詐欺罪の保護法益は「個人の財産」ですが、国や地方公共団体も財産権の主体として保護されます。したがって国有・公有財産に対する詐欺罪も成立します。

2、詐欺罪の刑罰

実際に詐欺で逮捕され、有罪となった場合の刑罰について解説します。

  1. (1)詐欺罪の刑期は? 累犯なら刑期2倍

    詐欺罪の法定刑は、前述のとおり「10年以下の懲役」です。

    ただし、犯罪結果の軽重や初犯であるかなどによって、実際の刑期は大きく変わります。
    具体的には、たとえば初犯で逮捕されたとしても、悪質性が低く、被害額が多額でなければ、執行猶予がつく場合もあります。

    一方で、過去にも裁判を受け懲役刑に処せられたことのある人物が、その刑の執行を終わった日から5年以内にまた罪を犯した場合等は、「累犯(るいはん)」と呼ばれます。累犯の場合、刑期は2倍まで科すことができますので、最長で懲役20年となります。それほど被害のない詐欺事件でも、累犯となれば常習性ありと判断されて執行猶予なしの実刑判決が下される可能性が高くなるでしょう。

  2. (2)再犯でも執行猶予がつく可能性はあるのか

    そもそも執行猶予というのは、更生を促すための制度です。たとえば、本人が深く反省している、犯罪の内容が軽微であるなどの理由で、刑務所に入ることがふさわしくないとされる場合に適用されます。

    詐欺罪の累犯であっても、犯罪の態様や本人の反省の度合いによっては、執行猶予つきの判決が下ることもないとはいえません。あきらめず、累犯で執行猶予を勝ち取るには、収監するまでにはあたらないとする理由などを主張していく必要があるでしょう。刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士へ対応を依頼することをおすすめします。

3、詐欺罪で逮捕された場合

実際に、詐欺を疑われて逮捕される場合は、どのような手続きを経るのでしょうか。
詐欺罪の逮捕は、3種類考えられます。

  1. (1)逮捕の種類

    ひとつは「現行犯逮捕」です。例えば、被害者やその家族など周囲の人が、金品を受け渡す前に詐欺であることに気づいて警察に連絡することによって、警察官が事前に受け渡し現場へ配備されます。そして犯人が金品を受け取った瞬間に、現場で取り押さえて逮捕するというものです。

    もうひとつの方法は「通常逮捕」です。被害届などにより詐欺被害が判明したのちに、捜査機関は防犯カメラの映像や現場に残された指紋、聞き込み、通話記録、インターネットのアクセス履歴などさまざまな手段で捜査を行います。その結果、罪をおかしたと疑われる人物「被疑者(ひぎしゃ)」が定まった場合に、捜査機関が裁判所に対して証拠を示し逮捕状を請求して行われる逮捕です。

    さらに、「緊急逮捕」という逮捕方法もあります。緊急逮捕とは、被疑者が一定の重い犯罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があり、かつ、裁判官の逮捕状を求めることはできないが逮捕する緊急の必要ある場合に、逮捕状なく逮捕する手続をいいます。例えば詐欺被害の通報があり、逃亡中の犯人を逮捕状請求前に警察官が偶然見つけたときに、その場で犯人を逮捕する場合等です。この場合、逮捕後ただちに逮捕状を請求しなければならず、逮捕状が発布されない場合はただちに被疑者を釈放しなければなりません。

    そもそも逮捕とは、身柄拘束により人権の一つである「自由権」を制限するものです。したがって、裁判所によりその逮捕請求が妥当なものであるか、原則として事前に判断する必要があるのです。逮捕状が交付された場合、それを持って被疑者の自宅などに向かい、逮捕状を被疑者に提示し、犯したと疑われる犯罪事実「被疑事実(ひぎじじつ)」の要旨を述べて身柄を拘束します。

  2. (2)逮捕された場合、どれくらいの期間拘束されるのか

    それではあなたの家族が詐欺容疑で逮捕されてしまったとして、一体どれくらいの期間拘束されることになるのでしょうか。

    ●逮捕後最大48時間は警察で取り調べ
    警察は被疑者を逮捕すると取り調べを行います。この取り調べは48時間以内と刑事訴訟法第203条にて定められています。この間に、検察へ送致するかどうかを判断するのです。疑いが晴れた場合は、この時点で釈放されます。

    ●検察送致後最大24時間は検察で取り調べ
    警察から被疑者の送致を受けた検察は「勾留(こうりゅう)」の必要があるかどうかを24時間以内に判断します。「勾留」とは、身柄拘束を続けることです。被疑者が定まった住居を有しないときや、逃亡したり、証拠隠滅をはかったりする可能性があると判断されると、検察は裁判所に対し「勾留請求」を行います。逮捕のときと同様に、人権のを制限することとなるため、裁判所による確認が必要となります。

    裁判所が勾留請求を認めた場合、さらに10日間身柄を拘束され、取り調べを受けることとなります。延長請求により、最初の勾留決定から最長で20日間まで身柄拘束が可能となります。

  3. (3)証拠の隠滅や逃亡の可能性が低い場合は勾留されないのか

    たとえば、定職に就いており、家族や身元引受人がいるなど、身元や住所がはっきりしているというケースもあるでしょう。その場合で、さらに、逃亡することによる本人の不利益が大きく逃亡の可能性が低いような場合は、勾留するにあたらないと判断されるケースもあります。ただし、組織的な詐欺行為の容疑があるときはこの限りではありません。

    弁護士に依頼してこれらの主張を検察に伝えることで、身柄解放の可能性が高まるでしょう。

4、詐欺罪で前科をつけないことは可能か

詐欺罪は重い犯罪であるイメージが強く、一度逮捕されてしまうと必ず前科がつくと思われているかもしれません。「前科」とは、逮捕だけでつくものではありません。「前科」は、起訴され、有罪になった場合につくものです。逮捕されたけれども、起訴されなかった場合の履歴は「前歴」と呼びます。

このように、「前科」は、起訴され、有罪になった場合につくものです。そのため、状況によっては起訴を回避し、前科がつかないで済む可能性もあります。まずは弁護士に相談したほうがよいでしょう。

日本の司法では、起訴されれば99%が有罪となるため、前科がつかないためには、まず「不起訴」を目指すことになります。

  1. (1)被害者と示談をする

    不起訴とするために、まずは被害者との示談を行うことになります。「示談」とは、当事者同士が話し合いを通じて事件を解決しようとするものです。

    刑事事件における示談では、加害者が被害者に謝罪するとともに賠償金を支払い、被害者から「宥恕(ゆうじょ)」の意志を文章(文言)などで示してもらうことを目指します。宥恕文言とは、「罪を許す」、「処罰を望まない」などの意思を言葉にしてあらわすことを指します。

    詐欺罪は親告罪ではないため、被害者と示談が成立したら必ず不起訴となるわけではありません。しかし、検察や警察は被害者の処罰感情を重視します。したがって、被害者と示談が成立し、被害者が処罰を望まず、加害者が反省して賠償金を支払ったことを示せば、よほどの重犯罪で刑罰が必要とされる場合など以外は、執行猶予や不起訴などを勝ち取れる可能性が高まるのです。

  2. (2)被害者が示談に応じない場合

    被害内容によっては、処罰感情が強く被害者が示談に応じない可能性もあります。しかし、被害者に謝罪と償いをするため積極的に働きかけた事実は、検察に情状酌量面で考慮される可能性があります。

    また、宥恕がなされず、刑事裁判で有罪となったとしても、それとは別に民事裁判で詐欺行為の賠償責任が問われる可能性があります。いずれにせよ賠償金は必要となるため、できるかぎり示談はしておいたほうがよいといえるでしょう。

5、まとめ

他人の大切な財産をだまして奪う犯罪である「詐欺罪」は、重大な犯罪です。しかし、弁護士のサポートがあれば、示談交渉により十分に反省し罪を償う方法についてアドバイスできますし、示談が成立すれば前科がつくことを回避する可能性が高まります。また、不当と考えられるほど法外な損害賠償金の請求を回避することもできるでしょう。

また、詐欺行為はしていないと主張する場合は、取り調べの初期段階から刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士のサポートが必須となります。家族が詐欺に関わっているかもしれない、または逮捕された場合は、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスで相談してください。長期にわたる身柄の拘束や起訴を回避など、あなたの家族が窮地から脱するための最善策を、スピーディーに実行します。

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