弁護士が解説! チケット転売規制法が成立したが転売行為になるのはどこから?

2019年03月29日
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弁護士が解説! チケット転売規制法が成立したが転売行為になるのはどこから?

平成30年6月、千葉マリンスタジアムで開催されるライブのチケットが定価の10倍以上で販売されていたことが報道されていました。そもそも興行チケットなどの転売行為をする者は「ダフ屋」と呼ばれ、迷惑防止条例などにおいて、ダフ屋行為そのものが規制対象となっています。しかし、インターネット上の転売行為を直接禁止する法律がないためか、ライブなどの運営側が転売の禁止を明記していたとしても、不正が後を絶ちません。

それでも最近では、迷惑防止条例や詐欺罪などで逮捕されるケースも増加しています。平成31年6月からは、インターネット上での不正転売を禁止するチケット転売規制法が施行されるため、さらに逮捕者が増えることが想定できます。

そこで、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が、チケット転売規制法の概要や違反となるボーダーラインを解説します。

1、チケット転売規制法が成立。その内容とは?

アイドルなどのコンサートチケットをインターネット上でも転売することを禁止するチケット転売規制法が、平成30年12月に成立しました。実際に施行されるのは2019年6月14日からです。

チケット転売規制法の正式名称は「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」です。

この法律では「特定興行入場券」を「不正転売」してはならないとしています。違反した場合は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金または併科という刑罰です。

チケット転売規制法で重要なのは「特定興行入場券」と「不正転売」の定義です。

まず、特定興行入場券とは、興行主等が、販売時に、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつ、その旨を当該入場券の券面等に表示し、興業が行われる特定の日時及び場所並びに入場資格者又は座席が指定され、興業主等が、販売時に、入場資格者又は購入者の指名及び連絡先を確認する措置を講じ、かつ、その旨を当該入場券の券面等に表示しているものに限られています。不正転売とは、興行主の許可を得ずに、「特定興行入場券」を販売価格以上で反復継続の意思をもって販売することです。

2、チケット転売はどこから違法になるのか。

チケット転売が違法となるのは、反復継続の意思をもって特定興行入場券を高額転売することです。

したがって、「急用ができてコンサートに行けなくなったため、送料と手数料をプラスした金額で転売すること」は違法とはならない可能性があります。また、「特定興行入場券」に該当しないチケットは転売してもチケット転売規制法の規制対象とはなりません。

具体的には、無料で販売されたチケットやチケット転売規制法が定義する「興行」に該当しないチケットなどです。たとえば、コミックマーケットの入場券や駐車チケット、サイン会なども規制の対象外です。さらに、特定興行入場券の定義に当てはまるチケットでも、定価以下で販売する場合も、チケット転売規制法の規制対象とはなりません。

チケット転売禁止法に違反するかどうかは「対象チケットを定価以上で反復継続の意思をもって販売しているか」が判断基準となります。

3、チケット転売で逮捕された実例を解説

チケット転売禁止法は平成30年12月に成立しましたが、実際に運用されるようになるのは2019年6月からです。それまでは、法に触れるようなチケット転売を行うと、従来の法律によって逮捕されることになります。ここでは、これまでチケット転売で逮捕された実例を罪名ごとに解説していきます。

●人気アイドルのコンサートチケット転売した若者を埼玉県迷惑防止条例違反で逮捕
平成30年6月15日、20代男性3人がアイドルのコンサートチケットを転売目的で購入した罪で逮捕されました。埼玉県迷惑防止条例のダフ屋行為に違反した容疑です。彼らは、定価の2倍から5倍でチケットを転売し、1年半で460万円を売り上げていました。各都道府県の「迷惑防止条例」では「ダフ屋行為」と言って乗車券やコンサートのチケットを公共の場で転売することを禁止しています。

これまで、チケット転売で逮捕された多くの事例が、「迷惑防止条例違反」に該当しています。

●ファンクラブに入会してロックバンドのコンサートチケットを不正転売して「詐欺罪」で逮捕
平成29年6月、人気ロックバンドのファンクラブに登録し、転売目的でコンサートチケットを購入し定価以上の金額で転売した男性が「詐欺罪」の容疑で逮捕されました。チケット販売会社の社員は、「転売目的の購入」とは知らずに販売したので、社員がだまされたとして「詐欺罪」が適用されました。容疑者は、3年間で約6000万円の売り上げを記録していたと報道されています。

なお、詐欺罪で有罪となった場合は「10年以下の懲役に処する」と規定されており、罰金刑が存在しません。

●身分証を偽造して「偽造有印私文書行使」の疑いで男性教師を聴取
転売のためにチケットを購入するため、また不正転売チケットを購入して使用するために身分証明書を偽造して逮捕されるケースもあります。平成29年5月、人気アイドルグループの転売されたチケットを購入した中学教師は、チケットに印字されている購入者になりすますために、学生証を偽造して入場しようとした疑いがかけられています。最近は不正転売を防ぐために、チケットに購入者の氏名が明記されていることが多く、身分証明書を偽造するケースが増加しています。

もし、偽造有印私文書行使で逮捕され、有罪となった場合は「3ヶ月以上5年以下の懲役」に処される可能性があります。

4、チケット転売で逮捕されたら弁護士に依頼すべき3つの理由

チケット転売で逮捕された場合、早急に弁護士に依頼する必要があります。その理由は以下の3つです。

●逮捕後72時間が勾留されるかどうかが決定するため、早期の弁護活動が必要
チケット転売で逮捕された場合、逮捕から最長72時間身柄を拘束されます。最初の48時間以内に警察が捜査を行い検察に事件を引き継ぎます。引き継いだ検察官はその後24時間以内に「勾留」するかどうかを決定します。

勾留されてしまうと、起訴されるかどうかが決まるまでだけで最大20日間ものあいだ、留置場や拘置所で身柄を拘束されます。当然、学校や仕事に行くことができなくなるため、社会的信用が大きく損なわれてしまいます。だからこそ、まずは逮捕から72時間以内の弁護活動が重要なのです。

●不起訴・執行猶予付きを勝ち取るためには弁護活動が必要不可欠
逮捕され、勾留が決定した後でも弁護活動によって、「不起訴」や「執行猶予付き判決」を勝ち取れる可能性があります。証拠が不十分で罪を立証することができない場合は、不起訴となり、刑事裁判で罪を問われることも、前科がつくことはありません。

なお、日本では刑事事件では裁判にかけられると有罪になる確率が99%と非常に高いため、否認している場合を除き、起訴された場合は「執行猶予付き判決」を目指すことになります。特に、チケット不正転売で逮捕される可能性がある「詐欺罪」は、設定されている量刑が懲役刑のみとなるため、執行猶予付き判決を勝ち取ることが重要なポイントとなります。刑事事件の実績豊富な弁護士に依頼して、早急に弁護活動を開始してもらいましょう。

●被害者と早期に示談できる
刑事事件では、被害者との示談が済んでいることが起訴するかどうかの判断や、判決に影響します。通常、刑事事件で逮捕されても、被害者の連絡先を被疑者やその家族が知ることは困難です。

しかし、弁護士に依頼することによって、弁護士なら被害者の連絡先を担当検察官・警察官を通じて知ることができるケースがあります。逮捕後早い段階でご依頼いただければ,早く示談交渉をスタートできるという大きなメリットを受けることができるでしょう。示談できれば、不起訴の見込みが高くなる等有利に働きますので、示談交渉の実績が豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。

5、まとめ

平成31年6月から、チケット転売規制法が施行され、これまでよりもチケット転売に対する規制が厳しくなります。オークションサイトなどで転売禁止のチケットを繰り返し転売していると、チケット転売規制法違反で逮捕される可能性が高まるでしょう。

しかし、チケット転売規制法が施行する前であっても、従来の詐欺罪や迷惑防止条例違反などで逮捕される可能性があります。万が一、あなた自身やあなたの家族が事情聴取に呼び出されたり、逮捕されたりしたときは、早急に弁護士に依頼することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスでは、刑事事件に対応した実績が豊富な弁護士が、スピード対応します。まずは相談してください。

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