遠方に住む息子が結婚詐欺で逮捕された! 詐欺罪の量刑や逮捕後の流れは?
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平成30年7月、千葉県我孫子市で交際していた女性に「大学病院の医師だ」とかたり、新居に引っ越すための費用50万円をだまし取った容疑で、「結婚詐欺師」が逮捕されました。彼は過去にも結婚詐欺で2度逮捕されており、被害総額は1000万円を超えていると報道されています。
身内が結婚詐欺に手を染めたと聞けば、家族であれば大きなショックを受けることでしょう。家族として責任を感じる方もいるかもしれません。しかし、罪を犯したのは本人であり、家族に責任はありません。それでも、家族であればできることがあります。それは、被疑者に弁護士をつけることです。
今回は、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が、結婚詐欺で捕まるケースや捕まった場合の量刑、逮捕後の流れ、そして家族ができることについて丁寧に解説します。
1、結婚詐欺とは? どのような行為が結婚詐欺になるの?
結婚詐欺は、「結婚する意思」がなかったのに、相手を「結婚できる」と勘違いさせて、金銭や不動産などの財産をだまし取る行為です。
「結婚式を挙げるためにお金が必要」、「結婚するためには事業の借金を返さなければならない」などのうそで相手をだまし、現金を受け取るものが多い傾向にあります。
ただし「最初は本気で結婚するつもりだった」というケースであれば、結婚詐欺には当たらない場合もあり得ます。「結婚する意思がないにもかかわらず、結婚できると相手に勘違いさせるために嘘をついたかどうか」が重要になります。
もし、「最初から結婚するつもりがなかった」または「最初は結婚するつもりだったが、後に結婚する意思がなくなった」にもかかわらず、「結婚するつもりであるとうそをつき、受け取るお金を結婚式や事業の借金にあてるつもりがないのにあるように装った」ことが、立証されれば、詐欺罪で逮捕される可能性が高いでしょう。
2、詐欺罪の量刑は? 刑務所に入るのか
刑法には「結婚詐欺」という罪状はありません。多くの詐欺行為は刑法第246条に規定された「詐欺罪」として、裁かれます。
詐欺罪で逮捕されて有罪となった場合の量刑は「10年以下の懲役」です。罰金刑の設定はなく、裁判で有罪となり執行猶予がつかなければ、刑務所に服役しなければなりません。数ある犯罪の中でも比較的重罪に分類されます。
なお「10年以下の懲役」は刑法で定められた刑罰です。したがって、被害者から「民事訴訟」を起こされ損害賠償を請求された場合は、たとえ服役することになったとしても損害額や慰謝料等を支払う必要があり得ます。
3、結婚詐欺で逮捕されたら身柄はどうなる? 拘束期間は
次に結婚詐欺で逮捕されてから裁判までの流れを解説します。
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(1)72時間の身柄拘束
詐欺罪で逮捕されると、最初の48時間は警察による取り調べが行われます。その後検察官に事件が引き継がれて、検察官は24時間以内に「勾留」が必要かどうかを判断します。
この最長72時間のあいだは、家族の面会が制限されます。依頼を受けた弁護士であれば、自由に本人と接見することができます。原則として自分や家族が弁護士に依頼しなければ、留置場という閉鎖された空間でたったひとり、警察官や検察の厳しい取り調べを受けなければなりません。
取り調べ中に発言した内容が、調書という形で記録されるとあとから覆すことが難しくなります。もし、身に覚えが一切ない結婚詐欺事件で逮捕されてしまったときは、早急に弁護士を依頼し、否認を貫き通す必要があるでしょう。 -
(2)勾留の決定
検察官が、勾留が必要と判断した場合は検察官が裁判官に「勾留請求」を行います。裁判官も勾留が必要と判断すれば「勾留」が決定します。
裁判官や検察官は、「逃亡の恐れがあるかどうか」、「証拠隠滅の恐れがあるか」などの視点から、勾留が必要かどうかを判断します。弁護士は、逃亡の恐れや証拠隠滅の恐れがいないことについて意見を述べ、裁判官や検察官に勾留が必要であると判断しないように訴えかけることもできます。
勾留が不要と判断されれば「在宅事件扱い」として、身柄を拘束されることなく自宅に帰ることができます。ただ、無罪になったわけではないので、引き続き捜査や取り調べは続きます。呼び出しに応じて捜査に協力する必要もあります。しかし、身柄を拘束されるストレスから解放されるので、早く日常生活を取り戻すことが可能です。 -
(3)最長20日間の勾留
勾留が決定すると、原則として10日間、必要が認められればさらに10日間の最大20日間拘置所等に身柄が拘束され、取り調べが行われることになります。
勾留期間は、本人にとってはつらい期間となるでしょう。検察は勾留中であれば勾留期間中に、在宅事件扱いの際は取り調べが終わり次第、起訴するか、不起訴とするかを決定します。
刑事事件では「起訴」と判断されると、刑事裁判が開かれます。刑事裁判の有罪率は99%を超えています。起訴となればほぼ有罪となり、前科がつくと考えておいたほうがよいでしょう。
不起訴となれば、前科はつかず、勾留されていた場合は身柄が釈放され元の生活に戻ることができます。 -
(4)刑事裁判
起訴が決定されると、刑事裁判が開かれます。検察官がこれまでの取り調べや捜査で得た証拠を提出して「有罪」であることを主張します。
被告人側は、無罪を主張するのであれば、有利な証拠を提出する必要がある場合もあります。結婚詐欺の場合は、罪を認めた上で、「執行猶予付き判決」を得られるようにする、という弁護方針を採ることも多いでしょう。
刑事裁判になっても、執行猶予付き判決が下されれば、刑務所に入る必要はないので、社会復帰を目指すことができます。
4、詐欺で逮捕された息子のために家族ができること
詐欺罪でご子息が逮捕された場合に家族がまずできることは「早く弁護士に依頼すること」です。
刑事事件で逮捕され、勾留を受ければ「国選弁護人」に弁護を依頼することができることもあります。しかし国選弁護人に依頼できるタイミングは「勾留を請求された後」に限られます。また、当番弁護士がいると思う方もいるかもしれません。たしかに、逮捕後の72時間には「当番弁護士」といって、弁護士会から派遣された弁護士と話をすることはできます。しかし、当番弁護士は、弁護士会が任意に指名するため、必ずしも詐欺罪に精通した弁護士であるとは限りません。
したがって、まずは勾留を回避するための弁護活動をしてほしいときは、弁護士と相談したうえで依頼することをお勧めします。勾留が決まると、逮捕から起訴されるかどうかが決まるまでだけでも最長23日もの間、仕事や学校へ行けないという事態に陥ります。たとえ不起訴となったとしても、退職や退学を迫られてしまう可能性は否定できません。したがってスピードが勝負の刑事事件にとって、「受け身の弁護士選び」では、不利になってしまう可能性があるのです。
たとえ遠くに離れて暮らしているとしても、家族であれば「詐欺事件や刑事事件に対応した実績が豊富な弁護士」に依頼することはできます。逮捕されたという連絡が届いたら、まずは状況を警察署などに確認し、いち早く弁護士に相談することをおすすめします。
5、弁護士に依頼したほうがよい理由とは
まず、詐欺罪において、逮捕後に重要なのは「いかに早く弁護活動をスタートできるか」、といえます。弁護士に依頼することによって、身柄の拘束期間や起訴されるかどうか、などに大きな影響を与えます。
先ほどお話ししたように、逮捕されてからの最長72時間、面会が制限され孤独な時間を過ごすこととなります。厳しい取り調べによって、自分に不利な供述をしてしまう可能性があるでしょう。そのような事態を防ぐためにも、早く「味方」である自分の弁護士と今後の対策について話し合う必要があるのです。
また、逮捕されてから72時間以内に「勾留するかどうか」が、判断されることになります。逮捕直後に弁護士に依頼することで「勾留」を避けられるかもしれません。また、弁護士に依頼することで、「不起訴」を勝ち取れるケースもあるでしょう。不起訴となれば前科がつくことはありません。
さらに、起訴するかどうかの判断に「被害者との示談が完了しているかどうか」が大きく影響します。したがって、早い段階で弁護士による示談交渉をスタートして、被害者との示談を完了させたほうがよいケースも多くあります。しかし、弁護士に依頼しなければ、被害者との示談交渉は非常に難しく、まともに話を聞いてもらえない可能性もあります。できるかぎり早く弁護士に交渉を依頼しましょう。
万が一起訴されてしまっても、弁護士に依頼しておけば「執行猶予付き判決」を目指して裁判を進めることも可能です。たとえ有罪となってしまっても、執行猶予付き判決が下されれば、これまでと同じような生活を取り戻すこともできるでしょう。
つまり、弁護士に依頼することで、「社会復帰への道」が開かれやすくなるのです。
6、まとめ
詐欺罪で逮捕された場合に重要となるのは、できるだけ早い段階に「弁護士による弁護活動」をスタートさせることです。たとえあなたが、逮捕された場所から遠い地域に住んでいたとしても、全国に支店がある弁護士事務所であれば、素早い対応が可能となるでしょう。
対応が早ければ早いほど、事件の影響を最小限に抑え、元の暮らしを取り戻せる可能性が高めることができます。ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスには、結婚詐欺をはじめとした刑事事件に対応した実績が豊富な弁護士が在籍しています。まずはお気軽にご相談ください。
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