同僚のDVDソフトを盗んだときの刑罰は? 窃盗罪の概要や解決方法を解説

2018年10月12日
  • 財産事件
  • 窃盗罪
  • 罰則
  • 逮捕
同僚のDVDソフトを盗んだときの刑罰は? 窃盗罪の概要や解決方法を解説

平成20年、千葉県内のとある社員寮で、同僚が寮内の部屋に保管していたDVDソフトを盗んだ男が窃盗罪に問われる事件が発生しました。男は、遊興費を捻出するために盗んだDVDソフトを換金するつもりだったそうです。

この事件のような行為は、「窃盗罪」に問われる可能性があります。もし、類似行為をしてしまった経験がある方なら、窃盗罪とはどんな場合に成立する犯罪なのか、どれくらいの刑罰を受けるのか、何年で時効を迎えるのかなどが気になるのではないでしょうか。他人の物を盗むことは犯罪だとわかっていても、刑罰などその詳細を知る方はあまり多くないようです。

そこで今回は、窃盗罪の概要や罰則、窃盗罪で逮捕された場合の流れや示談交渉の方法などについて、千葉オフィスの弁護士が詳しく解説します。

1、窃盗罪の概要

冒頭の事例のように、DVDソフトに限らず他人の占有物を盗んだ場合は「窃盗罪」に問われることになります。

では、窃盗罪とはどんな犯罪なのでしょうか? ここでは、どんな場合に成立して、どのような刑罰を受けることになるのかなど、窃盗罪の概要について解説します。

  1. (1)窃盗罪の定義

    窃盗罪は、刑法第235条に規定されている財産犯です。条文では「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪と」すると明記されています。

    「他人」ですから、「自分自身を除く人」が対象となります。そして「財物」とは、財産的価値があるものと定義されています。金銭だけでなく、事例のようなDVDソフトなどの物品も広く財物として対象となります。さらに「管理可能であればよい」という判例に基づいて、電気なども財物の対象とされています。

    そして「窃取(せっしゅ)」とは、盗む行為を指します。窃取という言葉自体は、ひそかに盗み取る行為を指していますが、本人を目の前にして堂々と盗む行為も窃取に該当します。つまり、置引やスリ行為など、持ち主の意思に反して盗み取ることも「窃取」となるわけです。一方で、持ち主をだまして自ら差し出させる行為は窃盗罪ではなく、詐欺罪や恐喝罪に該当します。

    ただし、直系血族もしくは同居の親族の財産を盗んだ場合は、刑法第244条に定められている「親族間の犯罪に関する特例(親族相盗例)」が適用されます。よって、加害者の配偶者、親、(同居の)兄弟などが被害者となった場合は、刑罰が免除されます。これらの親族以外の親族が被害者である場合は、告訴がなければ公訴提起できない「親告罪」に設定されています。もっとも、被害者の中に親族がいたとしても、親族以外の者も被害者である場合(例えば、父親とその友人の共同所有のものを盗んだ場合)には、親族相盗例の適用はありません。

  2. (2)窃盗罪の罰則

    刑法第235条では、窃盗の罰則について「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と定めています。

  3. (3)窃盗罪の時効

    窃盗を犯した場合の時効は7年です。

    ここで注意したいのが、時効の考え方です。刑事事件における時効とは、正しくは「公訴時効」といい、公訴時効を迎えると検察官は被疑者を起訴できなくなります。

    7年の計算は、犯罪行為が発生した日から満7年です。厳密に7年間の日数が経過しないと時効は完成しないことを覚えておきましょう。また、海外に逃亡するなど起訴されたことを告知できない場合や、所在不明のままでも検察官が起訴を繰り返すことで時効は停止します。単に「7年が経過した」といっても安心できるわけではありません。

    窃盗を犯してしまったのであれば、時効の完成を待つよりも、自発的に解決に臨むほうが賢明でしょう。

2、窃盗罪の証拠とは?

窃盗罪の証拠となるものは、まず、「被害者・参考人の証言」が考えられます。「盗むところを見た」や「犯人はこんな服装だった」などの証言は立派な証拠になります。

次に考えられるのが、指紋やDNAなどの「鑑識資料」です。犯人しか触りえない場所に残された指紋、犯行現場に残されたDNAなどの鑑識資料は、近年の科学捜査では非常に重要な証拠となっています。

最後に考えられるのが「物証」です。犯人が逃走した際にうっかり落とした所持品、侵入に使用した工具のほか、防犯ビデオカメラの画像も捜査の決め手となります。

3、窃盗罪で逮捕された場合の流れ

窃盗の疑いがある者は、「被疑者」と呼ばれる立場となります。窃盗の被疑者として逮捕されてしまった場合に、どのような流れで刑事手続が進んでいくのかを知っておきましょう。

●警察での逮捕
まず、警察に逮捕されると48時間以内の身柄拘束を受け、逮捕された事件についての取り調べを受けることになります。

●警察から検察へ
逮捕から48時間以内に、身柄を検察官に引き継ぐ「送致(そうち)」が行われます。
送致を受けた検察官は、24時間以内(最初の身柄拘束から72時間以内)に「勾留(こうりゅう)」と呼ばれる、身柄拘束を続けて捜査を継続する制度を利用すべきかを判断し、勾留が必要と判断したときは、裁判所に「勾留請求」を行います。

●検察官から刑事裁判所へ
裁判所が勾留請求を認めた場合は、原則は初回10日間、延長によって最長20日間までの身柄拘束が続きます。さらに、勾留が満期になる日までに検察官は、罪を裁くために「起訴」するか「不起訴」とするかを決めていきます(満期で釈放し、その後在宅のまま捜査を続行し、「起訴」か「不起訴」かを判断する場合もあります。)。

もし起訴されれば、これまでの「被疑者」から「被告人」と呼ばれる立場になります。

起訴には主に2種類あり、「公判請求(こうはんせいきゅう)」であれば、公開された法廷での裁きが待っていて、被告人として刑事裁判が結審するまで基本的に身柄を拘束されることになります。もうひとつは、書類のみの手続きで罰金刑の金額が決められていく「略式命令請求」があります。

同じ「窃盗」の罪が問われていても、実際の犯行内容で罪の重さは当然変わります。初犯で深く反省していれば、略式命令請求となるケースが多いものです。ただし、前科がつくことになりますし、逮捕から勾留を合わせると、起訴されるまでの間に最大で23日間の身柄拘束を受けることになります。

4、窃盗事件を解決する方法とは?

もし窃盗の疑いで逮捕され、身柄の拘束期間が長期にわたると、これまでどおりの社会生活が難しくなるケースが少なくありません。

事件が複雑であれば刑事裁判が長引いてしまうため、場合によっては逮捕されて数ヶ月間から6ヶ月程度の勾留を受けることもありえます。この間、当然ながら会社への出勤はできないので、長期欠勤となり解雇の対象となってしまうこともありえます。逮捕されてしまった場合は、なるべく早いタイミングで釈放してもらえるよう、行動する必要があるでしょう。

では、逮捕されずに時効を待てばいいのかといえば、それも間違いです。時効が過ぎるのを待ちながら、7年間も逮捕におびえた生活を過ごすことは、ひたすら不安な状態が続くことと同義です。それほどつらいことはないのではないでしょうか。

万が一、窃盗を犯してしまったものの、逮捕などを免れ、場合によっては事件化しないように解決する適切な方法は、少しでも早いタイミングで「示談」することです。被害者に対して心から謝罪し、被害を弁済することで事件化されなければ、逮捕・勾留という苦しい状況を回避することが期待できます。

また、すでに被害者が被害届を提出し、捜査が進んでいる段階でも、示談は有効に働きます。窃盗罪は、窃取の対象となった金品の被害が回復されれば、実質的には被害がなくなったことになるため、検察官は起訴を避ける傾向があります。よって、窃盗したものを返す、返せなければ弁償するなどの行動と、相手への謝罪があることを、示談書によって証明できれば、起訴を回避できる可能性が高まるというわけです。

示談成立のタイミングが遅くなり、検察官が起訴したあとだったとしても、示談が成立していることが刑事裁判で評価されて、執行猶予付き判決や罰金刑で済まされることもあります。

5、示談を効果的に進める方法とは?

示談を効果的に進めて、自分にとって著しく不利な条件とならないためには、弁護士への相談や依頼が必要不可欠だと考えておいたほうがよいでしょう。特に、犯罪被害者は犯人と直接会うことを嫌う傾向があります。弁護士が介入しない限り、示談交渉すらできない状態になってしまうことが少なくありません。

弁護士であれば、犯人となった自分の代理として、あるいは付き添うことで、効果的に示談交渉を進めてくれます。また、刑事事件の示談に精通している弁護士であれば、事例に応じた妥当な示談金も熟知しています。もし、被害者から不当に高額な金銭を要求されたとしても、弁護士であれば回避できます。

示談が成立したのちも、その内容を書面に残しておく必要がありますが、弁護士が作成した示談書であれば法的観点からの漏れがなくなります。もし事件化されてしまった場合でも、示談が成立している証拠として示談書を検察官や裁判官に提出し、情状酌量の材料となるように働きかけることが可能となります。

6、まとめ

今回は、窃盗罪の概要や罰則、示談について紹介しました。

たとえば傘を盗むことに罪悪感を抱かない方がまれにいるようですが、最長で10年間もの長い懲役刑を受ける可能性がある、れっきとした犯罪です。窃盗罪で事件化されて有罪判決を受ければ、執行猶予判決や罰金刑であっても前科が付き、実刑判決であれば身体の拘束を受けることとなります。一定期間の身柄の拘束を受けたり前科がつくことで、これまでの社会生活が一変してしまう可能性は否定できないでしょう。

窃盗事件を起こしてしまったときは、示談によって解決するのが有効です。窃盗事件の解決に向けた示談のご相談は、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスにご連絡ください。千葉オフィスの弁護士が、可能な限り起訴を回避できるよう、示談をはじめとした弁護活動を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています