児童買春、児童ポルノにあたる行為とは? 逮捕されたらどうしたらよい?
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警視庁の発表によると、平成29年の児童買春など、子どもが性被害を受けた事件の検挙件数は2580件です。検挙件数は平成20年の3176件からやや減少したのち、平成24年以降ほぼ横ばいで推移しています。なお、平成29年における被害児童数は1823人もいて、高校生がおよそ半数を占めています。
SNSなどを通じて知り合った相手と性行為に及び、後で18歳未満と分かった場合、どうしたらよいのでしょうか。「児童買春」や「児童ポルノ」の定義や刑罰、逮捕に至った場合の対処について、千葉オフィスの弁護士が解説します。
1、児童買春とは
児童買春・児童ポルノ禁止法における「児童」とは、18歳未満の未成年者を指します。つまり、小中学生はもちろん、高校生でも18歳未満であれば児童買春として該当する対象となります。
かつて日本では、児童との性行為は児童福祉法や淫行条例において処罰されていました。しかし、1999年に「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」、通称「児童買春・児童ポルノ禁止法」が成立・施行されました。児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえた結果です。
児童買春・児童ポルノ禁止法第2条第2項において、「児童買春」が定義されています。具体的には以下のとおりです。
「児童買春」とは、「児童」、「児童に対する性交等のあっせんをした者」、「児童の保護者」または「児童をその支配下に置いている者」、に対して、「対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすること」をいいます。
児童に対して該当の行為をして有罪となると、「5年以下の懲役」または「300万円以下の罰金」の刑が処されます。なお、児童買春を周旋する行為や、児童買春の周旋を生業にしている者などは、罪がより重くなります。
2、児童買春を除き、児童に関する性的な行為をしたときに問われる罪とは?
児童買春以外にも、児童に対してみだらな行為について、次のような罪が定められています。本項で具体的に説明します。
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(1)児童ポルノ提供・製造罪(児童買春・児童ポルノ禁止法)
性行等にいたらなくとも、
わいせつな画像とは、「衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって、ことさらに児童の性的な部位(性器等もしくはその周辺部、でん部または胸部)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ、または刺激するもの」とされています。
児童ポルノ提供罪または製造罪で有罪になると「3年以下の懲役」または「300万円以下の罰金」の刑罰が処されます。また、不特定多数の者に提供し、または公然と陳列した場合は、「5年以下の懲役」もしくは「500万円以下の罰金」、またははその両方が科せられます。 -
(2)児童ポルノ所持罪(児童買春・児童ポルノ禁止法)
前項にあるような、児童のわいせつな画像を自己の性的好奇心を満たす目的で所持した場合に該当します。児童に自分で撮影させたわいせつな画像を送らせて、所持していた場合も、当然のことながら罰せられることになります。
有罪となれば「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」に処せられます。。 -
(3)千葉県青少年健全育成条例違反
各地方自治体により制定されている「青少年健全育成条例」においても、青少年に対するみだらな性行為やわいせつな行為が罰せられます。
千葉県では、深夜に青少年を連れ出した場合等も罪に問われます。具体的には次の①から③の行為が該当します。
なお、この条例でいう「青少年」とは、小学校就学の始期から十八歳に達するまでの者をいいます。
ただし、婚姻により成年に達したものとみなされる者は除きます。
①「みだらな性行為などの禁止」……青少年に対し、威迫、欺き、または困惑させる等、青少年の心身の未成熟に乗じた不当な手段によるほか、単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性行為またはわいせつな行為をした場合、「2年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」に処されます。
②「着用済み下着等の買受けなどの禁止」……青少年から着用済み下着等を買ったり、売却の委託を受けたり、売却の仲介をしたりして有罪となった場合、「30万円以下の罰金」または「科料」に処されます。
科料とは1000円以上1万円未満の財産刑をいいます。
③「深夜外出の制限」……青少年を脅かしたり、欺いたりするような不当な手段で、または保護者の委託もしくは承認等の正当な理由がなく、深夜(午後11時から翌日の午前4時まで)に青少年を連れ出すと「20万円以下の罰金」または「科料(かりょう)」に処されます。 -
(4)強制わいせつ罪・強制性交等罪(刑法)
13歳未満の児童とわいせつな行為・性行為を行った場合は、合意の有無に関わらず強制わいせつ罪または強制性交等罪に問われます。
強制わいせつ罪(刑法176条)は「6カ月以上10年以下の懲役」、性行等(性交、肛門性交または口腔性交をいいます)に及んだ場合は強制性交等罪(刑法177条)として「5年以上20年以下の懲役」に処されます。
いずれも罰金刑はなく、執行猶予がつかなければ即実刑となる、非常に重い罪です。また、未遂であっても罰せられます。
3、相手が18歳未満だと知らなかった場合はどうなる?
近年では、SNSなどを通じて面識のない相手と交流をもつことも増えています。性行為やわいせつな行為をした相手が未成年者とは思っていなかった場合は、どうなるのでしょうか。
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(1)児童買春罪には問われない可能性がある
児童買春罪は、対償の支払いを約束した時点と、性行為をしたときを通じて、相手が18歳未満と認識している場合に成立します。
もっとも、相手が18歳未満であるとの認識は、確定的に認識している場合はもちろん、「相手が18歳未満かもしれないが構わない」という認識であっても、たりるとされています。これは「未必の故意」と呼ばれ、「犯罪かもしれないが、大丈夫だろう」という犯罪実現の可能性の認識・認容があると評価され、犯罪の故意があるとされています。 -
(2)青少年健全育成条例違反には問われる可能性が高い
千葉県の青少年健全育成条例では、18歳未満と知っていたかどうかが問われることはありません。罰則について定めた第28条第7項にて、「当該青少年の年齢を知らないことを理由として前各号の規定による処罰を免れることができない。」と明記しているためです。ただし、相手が未成年であることを知らなかったことについて、行為をした者に過失がないときはこの限りではないとされています。あきらめずに、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
したがって、18歳未満と知っていても知らなくても、金銭のやりとりなく性行為をした場合、「青少年保護育成条例違反(淫行)として罪に問われる可能性が高いと考えておきましょう。保護者が認めていて、結婚を前提としているような真摯な交際関係があれば罪に問われない可能性がありますが、真摯な交際だと安易に考えるのはおやめいただいた方がよいでしょう。
4、児童買春を早期解決するために
万が一、児童買春をしたかもしれないという不安がある場合、またはその嫌疑をかけられた場合は、どう対処すべきでしょうか。
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(1)自首する
児童買春をした自覚があり、まだ事件が捜査機関に発覚していない場合は、自首をするという選択肢もあります。自首した事実は、量刑を判断する際に被疑者・被告人に有利に斟酌されるのが一般的です。
しかし、自首をしたからといって必ず不起訴処分となるわけではありません。まずは、刑事事件の事例に精通している弁護士にご相談ください。自首や任意出頭の際、弁護士に同行してもらうことも可能なため、不安があれば依頼しておくとよいでしょう、 -
(2)示談を行う
被害届が提出され、捜査によって自分に嫌疑がかかると、多くの場合、捜査機関より任意出頭を求められるケースが多いでしょう。この段階での出頭は、犯罪事実も犯人も捜査機関に発覚しているため自首にはなりません。児童買春を認める場合、すぐに弁護士に依頼して、まずは示談交渉を試みましょう。
「示談(じだん)」とは、事件の当事者同士が話し合い、解決を図ることを指します。被害者の処罰感情が強い場合、示談の成立は不可能でありませんが非常に難しいものとなります。性犯罪である以上、被害者の連絡先は弁護士にのみ開示されるケースがほとんどであり、弁護士による代理交渉が必須となるでしょう。
示談にあたっては、謝罪と十分な示談金を支払うこと、今後一切被害者にコンタクトをとらないこと、専門機関で再犯を防ぐためのカウンセリングを受けることなど、反省を示す行動を具体的に示します。双方が示談内容に合意し、被害者が被害届を取り下げる、告訴しないなどの意思を示すならば、不起訴処分となる可能性が高まります。 -
(3)贖罪(しょくざい)寄付を行う
児童買春における示談交渉は、多くの場合、被害者の親と行うことになります。しかしながら、示談で解決することを拒絶するケースもあるでしょう。その際は、贖罪寄付をして反省の意を示すことも検討すべきかもしれません。
贖罪寄附とは、日弁連及び各地の弁護士会が設けている制度です。罪を償う意思をしめすために金銭を寄付すると、弁護士会が寄附をしたことを示す証明書を発行してくれますので、これを情状証拠として裁判所に提出することができます。
寄付金は、日弁連及び各地の弁護士会が行っている人権の擁護と社会正義を実現する活動のための法律援助事業基金に充当され、弁護士による法律援助を必要とする人々のために使われます。 -
(4)無罪を主張する
人違いなど、無罪を主張する場合は、自白をせず黙秘を貫き、十分な証拠を提出する必要があります。逮捕後勾留されるまでの間、家族との面会は基本的にできませんが、弁護士であれば原則としていつでも接見が可能です。すぐに弁護士を依頼し、取り調べにどのように応じるか対策を練る必要があります。
容疑を否認する場合、逮捕された後勾留され、身柄拘束は長くなるケースが多いのが現実です。
その間、証拠集め、意見書の提出、過去の判例から見通しを立てる、家族との連絡の仲立ちを行うなど、弁護士にしかできない、さまざまな弁護活動を行います。
5、まとめ
近年はSNSなどを通じ「パパ活」などという言葉で、安易な行動に出てしまう未成年者もいるようです。まさにこのような不見識な未成年者をたしなめるべき立場である成人が、それに乗じて児童買春を行うのは言語道断です。
しかし、見た目、言葉遣い、思い違いなどによりどうしても相手が未成年だと見抜けなかった場合もあるかもしれません。重すぎる刑罰が科されないためにも、万が一児童買春の容疑がかけられた、または逮捕された場合は、一刻も早く弁護士に相談してください。
ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスでは、多くの刑事事件に対応しております。刑事事件の知識と経験を活かして力になります。ぜひご相談ください。
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