わいせつ物頒布等罪とは? 逮捕されたときはどうすればいい?
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千葉県警少年課と千葉中央署などは、平成29年9月、インターネットを通じて無修正DVDを販売していた大阪府在住の夫婦をわいせつ物頒布容疑で逮捕しました。この事件は、サイバーパトロールによって発見されたと報道されています。
インターネット上で、わいせつな写真などを公開すると、自分だけではなく世界中から閲覧できる状態になります。それが警察に発見されれば、こうした写真などを根拠に、ある日突然「わいせつ物頒布等罪」により逮捕されるという事態もありえないとは言い切れません。
そこで、今回は「わいせつ物頒布等罪」について、どのような罪なのか、逮捕後の対応はどうすればよいのか、ベリーベスト法律事務所・千葉オフィスの弁護士が解説します。
1、わいせつ物頒布等罪の基礎知識
どのような行為が「わいせつ物頒布等罪」にあたるのでしょうか。
まずは、わいせつ物頒布等罪の内容を理解していきましょう。
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(1)わいせつ物頒布等罪とは
わいせつ物頒布等罪とは、刑法第175条に規定されている犯罪です。わいせつな画像や文書などを「頒布」または「公然と陳列」したことが罪となります。
「頒布」とは、不特定または多数の人に対して交付・譲渡することをいいます。頒布方法は有償・無償を問わず、レンタル契約であっても対象となります。
次に「公然陳列」とは、不特定または多数の人がその内容を認識できる状態に置くことを意味します。
一般の人の目にふれる場所に展示すること、映画館での上映、インターネット上でだれでも簡単に見られる位置にわいせつ画像を配置することも「公然陳列」に該当すると考えられています。
なお、有罪となったときの法定刑は「2年以下の懲役」もしくは「250万円以下の罰金」もしくは「科料(1000円以上1万円未満)」または懲役及び罰金を併科すると規定されています。
わいせつ物頒布等罪が保護する対象は、「健全な性風俗あるいは公衆の性的感情」とされています。つまり、特定の被害者がいなくとも「健全な性風俗に反する」「公衆の性的感情に反する」と判断されると、わいせつ物頒布等罪にあたる可能性があります。 -
(2)「わいせつ」の定義
刑法第175条の「わいせつ」の概念について、判例は「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反する」ものをいうとしています(最高裁判所判例 昭和32年3月13日)。
一般的に人間の身体のうち、性器や臀部、女性の胸部といった部位が露出されていれば、性的なものを連想させられることが多いでしょう。しかし、露出部位だけで機械的に判断できるものではなく、その扱われ方によるといえるでしょう。
何を「わいせつ」と判断するかは、「わいせつ」の概念が時代や社会によって変化しうる相対的、流動的なものと考えられますので、たびたび議論となっています。
2、わいせつ物頒布等罪で逮捕された場合
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(1)早期釈放されるためには
逮捕から起訴までの流れを知っておきましょう。
逮捕された後48時間以内に検察官へ送致されます。
検察に送致された場合は、検察はそこから24時間以内に裁判所に対して「勾留(こうりゅう)請求」を行うかどうかを判断します。「勾留」とは引き続き身柄を拘束して取り調べを行うことを指します。勾留期間は10日間で、さらに10日間延長することが可能です。
逮捕に続き、勾留されると、身柄拘束の期間が長期化して、職場復帰・社会復帰が難しくなる傾向があります。できるだけ早く弁護士へ依頼し、勾留を避けるように検察官や裁判所に対して働きかけを行った方がよいでしょう。勾留が決まった後でも、裁判所に対し、身柄を拘束するにはあたらないと主張する「準抗告」を申し立てることができます。これも弁護士のサポートが必須といえるでしょう。
逮捕されず、または逮捕後に勾留されずに、起訴(または不起訴)に至るまでの間、自宅で普段どおりの生活をしつつ、検察や警察から呼び出しがあったときに捜査を受ける事件を「在宅事件」といいます。
「在宅事件」となれば、ひとまずは日常生活に戻れます。その後適宜呼び出しに応じて取り調べを受けることになります。
身に覚えのない事件で警察に逮捕された場合は特に、早めに弁護士に相談してください。警察官に事実と異なる内容の調書を作成されないように、取り調べ対応のアドバイスを受けることをおすすめします。弁護士に依頼していれば、あなたに代わって証拠を集めて、釈放を求めるための意見書を提出することも可能です。
自分や家族にできることには限界があります。まずは、弁護士へ早急に依頼したほうがよいでしょう。刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士であれば、状況に応じた、適切なサポートを行うことができます。 -
(2)示談で解決は可能?
わいせつ物頒布等罪には、実質的な被害者がいる場合といない場合があります。
たとえば、他者のわいせつ画像を自分のホームページでアップした場合は被写体となった人が実質的な被害者になると考えられます。この場合は弁護士を通して、被害者と示談交渉を行うことが考えられます。示談が成立すれば、警察に被害届を提出された後でも、不起訴となる可能性が高まります。
なお、被害者が未成年の場合は示談交渉の相手は被害者の保護者になります。この場合、示談交渉は難航する傾向にあるので、注意が必要です。
いずれの場合も、示談交渉の経験が豊富な弁護士であれば、スムーズに進められることもあるでしょう。加害者本人もしくは家族が直接被害者と交渉することは難しいと考えたほうがよいかもしれません。
3、わいせつ物頒布等罪で逮捕された場合の弁護活動
前述のとおり、わいせつ物頒布等罪で逮捕されたときは、わいせつ物の頒布等によって利益を得ているケースと得ていないケース、また、被害者がいるケースといないケースが考えられます。その他についても状況によって対応が異なるため、できる限り将来への影響を最小限に抑えたいのであれば、弁護士に依頼することをおすすめします。
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(1)反省を促す
実質的な被害者がいる場合のわいせつ物頒布等罪事件では、示談の有無や被害者の処罰感情が被疑者の処分に大きく影響します。
被疑者本人が罪を認めているのであれば、弁護士としては本人に反省を促し、自分の行為の問題点を認識するよう働きかけます。また、被害者がいるのであれば、被害者への謝罪と示談をすることで反省を示すことが可能です。 -
(2)再犯防止のための環境調整
わいせつ物頒布等罪の加害者の中には、自己の性的衝動をコントロールできず、何らかの問題を抱えているケースもあります。そうしたケースでは、再度同じ罪を繰り返さないようにするため、依頼者と相談しつつ、必要であれば矯正プログラムや治療を受けてもらうことが考えられます。カウンセリングやクリニックに通うことで加害者の抱える問題を根元から解決できるように努めている証拠を、裁判所へ提出することになるでしょう。
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(3)贖罪(しょくざい)寄付
贖罪寄付とは、実質的な被害者がいない犯罪、被害者に対して弁償できない犯罪の場合に、加害者が犯罪被害者支援団体などに寄付を行うことです。
自分自身の性器等を写したものがわいせつ物にあたるとされたケースでは「公衆の性的感情に反する」といして逮捕されているので、被害者は個人として存在しません。この場合は贖罪(しょくざい)寄付という形で、犯罪被害者支援団体その他公共の利となることに金銭を払うことで反省の意を示すケースもあります。また、わいせつ物頒布等罪などで不当に利益を得ていた場合は、その利益を寄付することで、行為者の反省を示すことができるでしょう。
いずれの場合も反省の意を形として示すことによって、不起訴処分や情状酌量による量刑の軽減が行われる可能性があります。具体的な方法などは弁護士と相談しながら決めることをおすすめします。
4、まとめ
わいせつの判断基準はあいまいで、時代によってその判断基準も揺れ動いているものです。軽い気持ちでインターネット上に性的な画像を載せることはやめましょう。
逮捕されたとなれば、罪を認める場合でも無実を主張する場合でも、すぐさま弁護士へ依頼してください。
児童ポルノなどのわいせつ画像の事件は、周囲に知られると社会的地位や人間関係、家庭にも影響が及ぶ可能性が否定できません。今後の人生に悪影響を及ぼさないよう、早期釈放・不起訴を目指して状況に適した弁護活動を行う必要があります。
わいせつ性の判断を裁判で問うのであれば、その論理的な主張を綿密に組む必要があるでしょう。ベリーベスト法律事務所・千葉オフィスの弁護士が、刑事事件に対応した豊富な経験を生かしたサポートをいたします。
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