夫や息子が痴漢の再犯で捕まった際に知りたい、量刑の重さと対策とは
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突然、警察から「あなたの夫や息子を痴漢で逮捕した」などと連絡がきたら、だれでもパニックになります。もし以前にも痴漢容疑で逮捕された経験があるとすれば、再犯だから処罰が重くなるのではと心配になることでしょう。
しかし、家族が痴漢の再犯で逮捕されたといっても、実際は刑法上の再犯にあたらない可能性があります。
本コラムでは、痴漢容疑で二度目の逮捕をされた事件を想定して、痴漢再犯の量刑や逮捕後の動きについてベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が解説します。


1、刑法における「再犯」の定義
再犯とは、一般的には罪を犯した者が再び罪を犯すことを指す言葉です。しかしながら、法的には厳密な定義があるのです。
刑法における再犯の定義は、刑法第56条に3項にわたって定められています。ここでは、「懲役刑を科せられた者」が懲役刑執行後または執行を免除された日から5年以内にまた罪を犯した場合に、さらに有期懲役を科せられることを示しています。
つまり、痴漢容疑で逮捕された経験があったとしても、そのときに「不起訴」となっていれば、二度目の逮捕でも再犯とは呼びません。刑法上の「再犯」には該当しないためです。
ただし、警察や検察には、一般的に「前歴」と呼ばれる、かつての逮捕記録が残っています。よって、以前にも痴漢の容疑で逮捕された前歴がある被疑者が、再び痴漢の容疑で逮捕されたとなれば、検察官は「反省をしていない」と捉えます。つまり、痴漢で再度逮捕されたときは、不起訴を獲得するのは前回よりも難しくなるといえるでしょう。
2、痴漢容疑での逮捕が二度目なら量刑は重くなる可能性大
痴漢事件は、各都道府県が制定している「迷惑防止条例」違反に該当します。ただし、同じ痴漢でも、しつこく触り続けたり、服の中に手を入れて身体を触ったり抱きついたりした場合は、迷惑防止条例違反ではなく、より刑罰が重い不同意わいせつ罪(刑法176条)の容疑がかけられます。
たとえば千葉県において「迷惑防止条例」違反で逮捕・起訴された場合は、初犯かつ成人であれば、同条例の13条の2にのっとり、「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられることになります。
不同意わいせつ罪の場合は、「6ヶ月以上10年以下の拘禁刑」となります。わいせつ行為によって相手にケガを負わせた場合にはより重い罪である不同意わいせつ致傷罪となり、無期または3年以上の懲役の可能性も生じます。
では、痴漢の逮捕が二度目だったときは、量刑は重くなるのでしょうか?
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(1)前回の処分が不起訴だった場合
以前に痴漢容疑で逮捕された際、検察官が不起訴処分を下していたときは、今回逮捕されたとしても「刑法上の再犯にはあたらない」といえます。
よって、痴漢で逮捕されたのが2回目だとしても、必ず実刑判決が下されるわけではありません。しかし、警察官や検察官から「痴漢行為を繰り返す可能性が高い」と判断されることは間違いないでしょう。
もし、いわゆる「迷惑防止条例」違反に該当する痴漢だったとしても、常習と認められてしまえば、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される可能性があります。
常習とみなされないように振る舞い、二度目の逮捕でも「不起訴」を勝ち取るためには、まずは、前回の逮捕時同様、早い段階での示談を成立させることが第1の条件です。 -
(2)前回の判決が罰金刑だった場合
以前に痴漢容疑で逮捕されて起訴されたとき、裁判で罰金刑の判決が下されたというケースもあるでしょう。この場合は懲役刑ではないため、刑法上の「再犯」にはあたりません。
二度目も実刑判決ではなく罰金刑となる可能性はありますし、もし早い段階で示談が成立すれば不起訴を勝ち取ることもできるでしょう。
ただし、被疑者がこれまでに迷惑防止条例に違反する行為を何度も繰り返していた場合は、起訴される可能性が高くなります。常習と判断されると、罰金の額や量刑が重くなることもあるでしょう。
いずれにしても、不起訴を獲得するためには、なるべく早い段階で被害者との示談を成立させることと、本人が今後もう二度と痴漢を行わないための対策を練ることが欠かせません。
ただし、被疑者本人や家族がいくら口頭で「もうしません」といっても、警察官や検察官の信用は得られません。しっかりと根拠を示して交渉するためには、専門家の助言や手助けが不可欠となります。 -
(3)未成年者が痴漢容疑で二度目の逮捕をされた場合
未成年者が痴漢容疑で二度目の逮捕をされたケースでも、前回よりも厳しい処分が下される可能性は十分にあります。
14~19歳の未成年者が被疑者となる少年事件の場合、被疑少年を更生させることを目的に処分が決定されます。刑罰を与えることが目的ではない点が、成人事件との大きな違いです。
よって、たとえ早い段階で被害者との示談が成立しても、少年事件で被疑少年への処分が軽くなるとは考えにくいでしょう。また、再度逮捕されている以上、家庭裁判所は前回の処分で更正したとはいえず、前回と同じ処分では更正は難しいとする可能性が高まります。
ただし、弁護士に相談すれば、勾留されないように働きかけることや、少しでも処分が軽くなるよう働きかけることが可能です。審判不開始や不処分を獲得できるよう、なるべく早い段階で弁護士へ相談してください。
3、痴漢で逮捕されたら弁護士に相談して示談成立を目指す
被害者と示談について交渉しようと思っても、痴漢の場合は「加害者やその家族に自分たちの個人情報を知られたくない」と考える被害者が多いものです。当然のことながら、警察は被害者の情報を開示することはないでしょう。そのため、情報集めにも難航し、なかなか示談交渉をはじめることができません。
そこで、確実に示談を成立させるためには、法律の知識に精通しており示談交渉のプロである弁護士の力に頼ることをおすすめします。弁護士であれば、あなたの家族と被害者や警察の間に立ち、冷静な示談交渉を進めることができます。
しかし、痴漢の再犯の場合は示談成立だけでは起訴を回避できない可能性があります。そこで、痴漢行為をやめさせるための具体的な措置の提示が必要となるでしょう。
お問い合わせください。
4、痴漢行為をやめさせる措置も検討しよう
痴漢行為をやめさせるための具体的な措置には、性犯罪における再発防止プログラムなどを受けさせることなどが代表的です。痴漢行為は常習化しやすく、かつ本人の認知のゆがみが矯正されない限り、再犯しやすい傾向があります。
近年の研究では、アルコール依存症などと同様の依存症の一種だと考えられつつあるようです。本人が認知のゆがみを自覚できるようになるまでは数年の月日がかかるともいわれていますが、専門医の力を借り、家族が支えることで再犯を防ぐことができるでしょう。
5、まとめ
家族が痴漢の再犯で逮捕されたとしても、実際は刑法上の再犯にあたらない可能性があります。当然のことながら一度目より、二度目の逮捕の方が処分が重くなる傾向にあります。二度目はより慎重な対応が必要となるわけです。
事件の早期解決のためにも、家族が痴漢容疑で二度目の逮捕をされたときは、ひとりで悩まずにベリーベスト法律事務所 千葉オフィスまでご相談ください。刑事事件の対応経験が豊富な弁護士が迅速丁寧に弁護活動を行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています