送り付け商法の被害にあった場合の対応法。 不明な荷物が届いたら?

2021年12月06日
  • 一般民事
  • 送り付け商法
  • 対応
送り付け商法の被害にあった場合の対応法。 不明な荷物が届いたら?

千葉県消費者センターと、千葉県内の各市町村の消費生活相談窓口には、2019年度・2020年度・2021年7月末までの累計で6031件の新型コロナウイルスに関連する消費生活相談が寄せられています。

その中でも、新型コロナウイルスに便乗した悪質な「送り付け商法」に関する被害が頻発しており、警察や消費者庁からそれぞれ注意喚起がなされています。注文した覚えのない商品が、ある日突然一方的に送り付けられてくる場合があります。

このような「送り付け商法」に直面した場合には、決して代金を支払うことなく、特定商取引法のルールを踏まえて適切に対応してください。この記事では、送り付け商法の被害に遭った場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が解説します。

1、送り付け商法とは?

一部の悪質な通販事業者等により、「送り付け商法」と呼ばれる悪徳商法が行われています。
事業者に言われるがまま代金を支払い、返金に応じてもらえないといった被害事例も少なくありません。

まずは「送り付け商法」がどのような商法であるのかを正しく知ったうえで、実際に被害に遭わないよう警戒しておきましょう。

  1. (1)頼んでいない商品が一方的に送り付けられてくる

    「送り付け商法」とは、消費者の側から注文していないにもかかわらず、販売業者から一方的に商品を送り付ける悪徳商法です。

    送り付け商法の対象となる商品のパターンは、きわめて多種多様です。
    たとえば食品・化粧品・ブランド品などがよくある例ですが、最近では新型コロナウイルス感染症が流行した関係でマスクが送り付けられる例もあります

  2. (2)返品できなければ代金を支払うようにと脅される

    送り付け商法の目的は、

    「頼んでないとしても、使ったんだから代金を支払うべき」
    「返品できないなら、代金を支払うべき」


    などと難癖をつけて、消費者に対して無理やり商品を買わせる(代金を支払わせる)ことにあります。

    送り付け商法によって商品の送付を受けた方の多くは、「怖いから捨ててしまおう」と考え、手元に商品を保管していません。
    また、食品や化粧品などが届いた場合には、「ラッキー」とばかりに自分で食べたり使ってしまったりするケースもあるでしょう。

    このような行動をとりがちな消費者の心理に付け込んで、商品代金を無理やりせしめるというのが、送り付け商法の典型的な手口になります。

2、送り付け商法により頼んでいない商品が届いた場合の対処法

送り付け商法の被害に遭わないためには、送り付けられた商品や、その後事業者から行われる請求への対処法を正しく心得ておくことが大切です。

以下の各点に留意して、送り付け商法への適切な対処方法を身に着けておきましょう。

  1. (1)代金を支払う義務はない

    注文していないのに送られてきた商品については、受け取った側は代金を支払う義務を負いません。
    「注文をしていない=購入の意思表示がない」わけですから、事業者と消費者(受け取った側)の間に商品の売買契約が成立していないのです

    したがって、もし事業者から商品の代金を支払うように要求されたとしても、支払う義務はない旨を伝えて拒否しましょう。

  2. (2)商品は直ちに処分できる|保管も不要

    送り付け商法によって送られてきた商品を勝手に処分すると、後から事業者に損害賠償などを請求されるのではないかと懸念される方もいらっしゃるでしょう。

    しかし、現行の特定商取引法では、消費者の側に送られてきた商品を保管する義務は一切ありません
    後に解説するとおり、以前は商品を処分する前に一定期間商品を保管しなければならなかったのですが、現行の特定商取引法では、保管期間の定めは撤廃されています。

    したがって、送られてきた商品を捨ててしまっても構いません。
    また、たとえば食品であれば食べてしまったとしても代金を支払う必要はありませんし、化粧品であれば使ってしまったとしても代金を支払う必要はありません。

    仮に後で事業者から「使ったなら(食べたなら)代金を払え!」と要求されたとしても、特定商取引法で処分が認められている旨を伝え、代金の支払いを毅然(きぜん)と拒否してください。

  3. (3)誤って代金を支払った場合は、返金を請求できる

    前述のとおり、送り付け商法に遭った消費者には、事業者に対して代金を支払う義務はありません。
    しかし、中には事業者の圧力に負けて代金を支払ってしまった方もいらっしゃるかと思います。

    送り付けられた商品に対する代金の支払いは、消費者から見て義務のない行為ですので、事業者が受け取った代金は「不当利得」に当たります。
    したがって、代金を支払ってしまった消費者は、事業者に対して不当利得に基づく損害賠償請求を行うことができる可能性があります(民法第703条、第704条)。

    送り付け商法は、消費者を狙った悪徳商法の一種であり、事業者に支払った代金をそのままにしておくことは、悪徳商法を助長することにもつながります。
    そのため、適宜弁護士にご相談のうえ、支払ってしまった代金の取り戻しを図りましょう。

  4. (4)しつこい督促を受けた場合は相談窓口へ

    代金支払いの義務がないにもかかわらず、事業者が請求書を送りつけて、しつこく督促を行ってくるケースも散見されます。

    あまりにもしつこく督促が行われている場合、事業者の側に恐喝罪(刑法第249条第1項)などが成立する可能性があります
    このような状態では、消費者の方が自力で事業者に対応するのは難しいかもしれません。

    もし送り付け商法の事業者が再三にわたって督促をしてくる場合には、後述するいずれかの相談窓口に相談して、対処法についてアドバイスを求めるとよいでしょう。

3、2021年特定商取引法改正による送り付け商法の対策強化について

2021年7月6日に施行された改正特定商取引法では、消費者が送り付け商法への対策を採りやすくなるルール変更が行われました。

法改正以前の旧法では、送り付け商法によって送られてきた商品を処分するには、送付があった日から14日が経過する必要があるとされていました(事業者に対して引き取りを請求した場合には、引き取り請求の日から7日経過後に処分可)。

しかし、2021年7月6日施行の改正特定商取引法では、消費者は一切商品を保管する必要がなく、直ちに商品を処分できるようになりました(同法第59条第1項)。

以前は、消費者が送り付けられた商品を間違って処分してしまい、後で事業者から損害賠償を請求されるような事態が頻発していました。
しかし、現行の特定商取引法の下では、事業者が消費者の保管義務を根拠に損害賠償を請求することができなくなっています。

また、売買契約の成立を偽って商品を送付した事業者は、その商品の返還を請求できないことも明文化されました(同法第59条の2)。

このように、改正特定商取引法では、送り付け商法に対する消費者保護を強化し、より効果的に被害を防止できるような規制内容になっています。

4、送り付け商法被害の主な相談先

送り付け商法への対処法がわからない方や、すでに代金を支払ってしまった方は、速やかに行政や専門家からアドバイスを受けることをお勧めいたします。

送り付け商法被害の主な相談先は、以下のとおりです。

  1. (1)警察や消費者庁のホットライン

    送り付け商法に関する被害の相談は、警察や消費者庁のホットラインを通じて行うことができます。

    特に、送られてきた商品の取り扱いに困っている場合や、事業者からの督促に対して不安を感じている場合には、一度ホットラインに連絡を取ってみましょう。
    特定商取引法のルールに触れながら、代金を支払わなくて良いことや、商品は処分してしまって良いことなどについてアドバイスを受けられるでしょう。

  2. (2)弁護士

    送り付け商法の事業者の圧力によって、すでに代金を支払ってしまった場合には、弁護士に相談することをお勧めいたします。
    弁護士から事業者に連絡をすれば、代金の返還を受けられる可能性があるためです。

    もし事業者が代金の返還に応じない場合には、訴訟や刑事告訴などの手続きについても、弁護士のサポートを受けることができます。

    送り付け商法の悪徳事業者から、商品代金を取り戻したいとお考えの方は、お早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

「送り付け商法」は、消費者が注文してもいない商品を一方的に送り付け、消費者をだましたり脅したりして代金の支払いを受けようとする悪徳商法です。

代金の支払い義務はないうえに、商品を直ちに処分してしまってよいことを覚えておけば、実際に送り付け商法に遭った場合でも適切に対処できるでしょう。
もし誤って代金を支払ってしまった場合には、弁護士へのご相談をお勧めいたします。

ベリーベスト法律事務所では、悪徳商法の被害に遭った消費者の方をサポートするため、随時法律相談を承ります。
身に覚えのない商品が送られてきた方、すでに代金を支払ってしまった方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています