ネット・SNS上で風評被害を受けた! 相手に損害賠償を請求したい方へ

2020年04月16日
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ネット・SNS上で風評被害を受けた! 相手に損害賠償を請求したい方へ

千葉県に在住の方の多くは、「風評被害」という言葉に非常に敏感でしょう。
令和元年10月には、台風15号に伴う観光への風評被害を防ぐため、官公庁が千葉県の宿泊施設を案内するとともに情報発信を行うホームページを公開しています。

身近に起こりうる風評被害としては、インターネット上の掲示板やSNSの投稿が拡散されてしまうケースが多いようです。目を引くセンセーショナルな投稿は、真偽が定かでなくとも、ねずみ算式に容易に「拡散」されてしまうようになりました。もし、風評被害によって、あなたが営む業務に多大な損失が出ているのであれば、損害賠償請求を行いたいと考えることはごく自然なことでしょう。

ここでは、インターネットを媒体とした風評被害が発生した場合の対処法と、損害賠償請求の可否について、千葉オフィスの弁護士が解説します。

1、風評被害とはどのようなものか

一般用語となっている「風評被害」ですが、正しく理解するためにも意味をチェックしておきましょう。

風評被害とは、根拠のないうわさやデマなどの情報が広く伝播することで経済的な損失が発生してしまう状態を指します。
まったくのデタラメな情報だけでなく、実際に起きた事件や事故の情報をゆがめて広がってしまうこともこれに含まれます。

風評被害の具体的な事例
冒頭の「台風15号による被害」という情報を例に挙げてみましょう。

大型台風15号により、千葉県内の多くの地域が被害を受けてしまったことは紛れもない事実です。今もなお、政府による支援がゆき届かず、冬になってもブルーシートがかけられたままの家屋が点在していることに間違いありません。

ところが、その情報が広がっていく中で、まるで真実かのように「観光地まで被害を受けたのですべての宿泊施設が使えない」などと評価されてしまい、観光客が減少してしまうという現象が起こりえます。

これが「風評被害」の代表的なモデルケースです。

2、風評被害を起こした場合の責任

風評被害は、多数の人を媒介に情報が広がっていくことで起こりますが、情報をさかのぼっていくと必ずある特定の人物が情報を発信したことに端を発しています。

風評被害を引き起こした情報の発生源に、責任を問うことはできるのでしょうか。

  1. (1)刑事的な責任

    風評被害の原因となる情報を発信した者については、刑法第233条「信用毀損および業務妨害」の罪に該当する可能性があります。

    刑法の条文では、以下の通り規定されています。

    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者


    わかりやすく言うと、わざとうその情報を流すことで相手の社会的な信用をおとしめたり、売り上げ減少や株価の暴落などの経済的な損失を負わせたりすることを指しています。

  2. (2)「名誉毀損(きそん)罪」と「信用毀損および業務妨害罪」の違い

    ここでチェックしておきたいのが「名誉毀損」との違いです。

    名誉毀損罪
    名誉毀損罪は、ある事柄を公然と指摘することで人の名誉を傷つける犯罪です。
    その際に「その事柄が真実かどうか」は問われません(公共の利害に関する場合を除きます。)。
    また、その事柄を指摘されたことによって信用毀損や経済的損失が具体的に発生したことは必要ありません。


    信用毀損および業務妨害罪
    一方で、信用毀損および業務妨害罪では、流布した情報が虚偽である必要があります。もしその情報が事実であれば成立しません。
    信用毀損および業務妨害罪には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
  3. (3)民事的な責任

    民法第709条では、

    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


    と、不法行為による損害賠償について定めています。
    故意であれ、過失であれ、虚偽の風説を流布して他人の信用を傷つけ経済的損失を引き起こす行為は「不法行為」とみなされます。

    したがって、風評被害を起こした者に対し、その被害に対し損害賠償を求めることができます。

3、風評被害に対処する5つのステップ

現在の日本において、風評被害の多くは、インターネットの掲示板やSNSなどを介して情報が広がるケースが多いようです。

インターネット上の情報は、ひとたび伝播が始まれば爆発的に拡散してしまいますが、その情報の発生源について何らかの形跡が残るという意味では対処法が見いだしやすいともいえます。どのように対応すべきか解説します。

  1. (1)書き込みの削除を依頼する

    風評被害の深刻化を防ぐには、まず「火元を絶つ」、つまり風評の書き込みの削除を最優先させるべきです。

    SNSであれば書き込んだ本人に、個人のブログや企業のホームページなどであれば開設者に、掲示板サイトであれば運営者に対して、該当する書き込みの削除を依頼しましょう。
    掲示板サイトはそれぞれのサイトによって削除依頼の手順や条件があるため、各サイトのルールを確認しましょう。

    ただし、次に紹介する対応や損害賠償請求を視野に入れているのであれば、書き込みの削除を依頼する前にすべきことがあります。それは、証拠を取っておくことです。

    具体的には、スクリーンショットを撮る、URLを含むページのすべてを印刷するなどの証拠を必ず残しておくことを強くおすすめします。

  2. (2)仮処分の申し立て

    書き込みがすぐに削除されない場合、放置していたら被害が拡大してしまいます。

    そのため、裁判所に対し民事保全法に基づく「仮処分の申し立て」を行うとよいでしょう。
    仮処分とは、正式な裁判で判決を得るまでの間、裁判に勝訴したときと同様の状態を確保することができる手続きです。

    削除の仮処分が認められるためには、「被保全権利」と「保全の必要性」を明らかにする必要があります。名誉毀損やプライバシー侵害、著作権侵害を根拠にするケースが多い傾向があるようです。

    仮処分の申し立てを行うには、裁判所に対し、サイト運営者などに書き込みの削除を求める要件を満たした申立書と、裁判官が判断するための証拠を提出します。
    提出する証拠としては、前項で残すようにお知らせした、投稿した記事が掲載されている画面を印刷したものなど、こちらの権利が侵害されている現状を示すことができるものです。

    申し立てののち、裁判所において双方の言い分を聞く審尋期日が定められ、相手方にも通知されます。審尋を経て、裁判所が被害者の申し立てを認めた場合は、被害者は裁判所の定める担保金を供託します。通常は一定の手続きを経て還付されます。

    多くのケースで、裁判所が仮処分による削除命令を出した場合はすぐに削除に応じるでしょう。

  3. (3)発信者情報開示請求をする

    損害賠償を請求したい場合は、相手の身元情報が必要です。

    掲示板サイトなどでは、削除を依頼して対応してもらっても「誰が書き込みをしたのか」までは特定できません。また、掲示板サイトの運営側も、公開されている以上のユーザー情報を提供することができません。ブログなどであっても、ほとんどが本名を公開しているわけではないので、個人の特定は難しいでしょう。

    そこで、裁判所に対して「発信者情報開示請求」を行い、該当の風評被害にあたる投稿を書き込んだ者を特定できる情報を探します。発信者情報開示請求では、まず掲示板サイトにアクセスしたIPアドレスを特定し、次にIPアドレスから「プロバイダ」と呼ばれるインターネット業者を特定して情報開示の訴訟を起こします。

    この訴訟によって、インターネット業者からそのIPアドレスに該当する契約情報が開示されることとなり、行為者が特定できるのです。

  4. (4)損害賠償を請求する

    発信者情報開示請求によって特定した行為者に対して、損害賠償を請求します。
    示談による和解が望めない場合は、裁判所に訴訟を提起することになります。

  5. (5)刑事事件として告訴する

    行為者が損害賠償に応じない、または反省の姿勢がない場合は、刑事事件として告訴することも視野に入れる必要があります。

    信用毀損および業務妨害罪(刑法第233条)は、告訴・告発を要さない非親告罪ですが、強い処罰意思を示すためにも被害届の提出ではなく告訴による事件化が有効でしょう。

4、風評被害の対策を弁護士に依頼するメリット

風評被害は、拡散を防ぐために一刻も早く対処すべきで「時間との勝負」になります。
風評被害を受けた場合には、すみやかに弁護士に相談することをおすすめします。

削除請求を一般人が行うよりも、弁護士から依頼することで「法的措置をすぐにでも取る」という姿勢を示すことができます。
そのため、削除請求に早く対応してもらえる可能性が高まるのです。

また、弁護士に依頼すれば、以降の仮処分の申し立てや発信者情報開示請求、損害賠償請求などの法的措置を一任できるというメリットがあります。
ネット上に掲載された情報の流布の仕方によって対策は異なるため、IT分野に詳しい弁護士に依頼するとよいでしょう。

裁判所の手続きを個人でゼロから調べるより、申し立ての書類の作成や証拠収集に精通している弁護士のサポートを得て素早い対応を取るべきでしょう。

5、まとめ

現代社会では、単なる一個人が発信した情報が、たとえその内容が誤っていたとしてもネットを介して爆発的に拡散し、結果的に、プライバシー侵害や経済的利益の損失など大きな損害をもたらすことがあります。

いったん広まったインターネット上の情報を完全に削除することは難しいものですが、対処が早ければ早いほど拡散は抑えられます。また、風評被害の行為者を特定して、損害賠償請求など強い姿勢で対処することで信用回復を目指す必要があります。

ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスでは、ITやインターネット上のトラブルに対応した経験が豊富な弁護士がアドバイスを行います。
インターネット上の風評被害や誹謗中傷による被害を最小限に留め、問題を解決へと導くためにサポートします。

風評被害への対処はスピードが大切です。まずはお気軽にご一報ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています