死亡事故につながる「一気飲み」。ノリで強要しても罪に問われる!

2019年05月28日
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死亡事故につながる「一気飲み」。ノリで強要しても罪に問われる!

普通にお酒を飲んでいても体質や量によっては急性アルコール中毒になる可能性があります。一気飲みで大量のアルコールを一度に摂取し、さらにウォッカやテキーラなどの度数が強いお酒であれば、なおさらその危険性は高まります。急性アルコール中毒になれば、適切に介抱しなければ死亡してしまうこともあるでしょう。

では、一気飲みを強要して相手が搬送された場合や死亡した場合、強要させた側はどのような罪に問われるのでしょうか。ベリーベスト法律事務所千葉オフィスの弁護士が一気飲みを強要した場合に問われる可能性がある罪について解説します。

1、一気飲みを強要した場合はどのような罪になるのか

お酒の一気飲みを強要する行為は、さまざまな罪に問われる可能性があります。

ある大学で行われた新入生歓迎行事として行われた飲み会で起きた事件の事例では、新入生が一気飲みをさせられ、適切な介抱を受けられず、亡くなってしまったという事件があります。本事例は、厚生労働省のアルコール対策などを啓発するページにも掲載されています。

このように、一気飲みなど飲酒を強要して死亡させてしまうと、罪に問われたり、損害賠償請求が行われたりすることがあります。ここでは、問われる罪について解説します。

  1. (1)強要罪とは

    強要罪とは、暴行や脅迫によって意思に反する行為をさせる犯罪です。刑法第223条では強要罪で有罪になると「3年以下の懲役に処する」と規定しています。罰金刑がなく、有罪となれば懲役刑しかない点で、重い罪と言えます。

    一気飲みをさせる際に「飲まないとなぐる」と脅したり、実際に暴行を加えたりして無理やり飲ませた場合は、この強要罪が成立する可能性があります。

  2. (2)傷害罪とは

    刑法第204条では「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」と規定しています。他人に一気飲みをさせ、急性アルコール中毒にさせた場合は、この傷害罪が成立する可能性があります。

    睡眠薬を摂取させて数時間にわたって意識障害や筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒症状を起こさせたケースでも、傷害罪で有罪となります。被害者に社会的に許容された態様・量などを明らかに超えた飲酒をさせてアルコール中毒で心肺停止に陥らせた場合でも、傷害罪に問われる可能性があります。

  3. (3)傷害致死罪と過失致死罪

    傷害行為や故意によらない行為の結果、被害者を死亡させた場合には、傷害致死罪や過失致死罪に問われる可能性があります。

    ●傷害致死罪
    他者の身体を傷害し、その結果、死亡させた場合は傷害致死が成立する可能性があります。傷害致死罪で有罪になると「3年以上の有期懲役に処する」と規定されています。なお、懲役刑は、原則として、1つの罪だけの場合には、上限は20年となります(刑法12条)。

    ●過失致死罪
    過失により人を死亡させたものは50万円以下の罰金に処するとされています。

    傷害致死と過失致死は、いずれも被害者が死亡することに故意がない場合ですが、その違いは、死亡させる結果となる行為が傷害行為によるのか、過失行為によるのかによります。多量の飲酒をさせて急性アルコール中毒で死亡させた場合、多量の飲酒をさせる行為が暴行ないし傷害行為と考えられる場合には、過失致死ではなく傷害致死に問われる可能性が高いと言えます。

    具体的な事例を紹介します。
    ホストクラブの関係者Aが、他の店舗の従業員Bに無理やり酒を飲ませました。Bにアルコール中毒の症状が出たにもかかわらず、AはBに酒を飲ませ続け、Bは心肺停止状態に陥りは死亡しました。酒を飲ませたAは傷害致死罪に問われました。刑事裁判の結果、酒を飲ませたAは傷害致死罪で有罪となり、懲役3年6ヶ月の有罪判決が言い渡され、その後、控訴されましたが、高等裁判所でも、その結論は維持されました。

    このように、飲酒の強要が暴行行為ないし傷害行為とみられた場合は、傷害致死罪に問われる可能性が高くなります。

  4. (4)傷害現場助勢罪

    被害者に直接お酒を飲ませてはいないものの、飲み会に参加して、その場ではやし立てるなどのせん動行為をすれば、この罪に問われる場合があります。

    刑法第206条では、傷害罪や傷害致死罪に当たる行為が行われている現場において、勢いを助けたものは、自分では傷害行為などをしなくても、「現場助勢」の罪で1年以下の懲役もしくは10万円以下の罰金もしくは科料が課せられると規定しています。

    傷害現場助勢罪は、飲み会などの場において、社会常識を超える態様・量などの飲酒を強要している加害者に便乗して、コールをかけて場を盛り上がらせるなどの行為も当てはまります。しかし、その場にいた全員が現場助勢罪に問われるかどうかは、状況によって判断する必要があるでしょう。詳しくは弁護士にご相談ください。

  5. (5)保護責任者遺棄致死罪とは

    被害者を泥酔させた後、容体が急変しているにもかかわらず放置していると保護責任者遺棄致死罪に問われる可能性があります。

    保護責任者遺棄致死罪(刑法第218条および第219条)では、「老年者、幼年者、身体障害者または病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、または、その生存に必要な保護をしなかった場合に3月以上5年以下の懲役に処される」と定めています。

    その場に泥酔した方と泥酔させた人しかいないような状況で、しかも、泥酔した方の生命や身体に危険が認められるような場合に、泥酔した方を放置し、その結果、死亡に至らせたことは、「病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄した」とみなされ、保護責任者遺棄致死罪が成立する可能性があるといえるでしょう。

2、民事での損害賠償請求について

一気飲みの強要で相手が病院に搬送されたり、死亡したりした場合は、刑事責任だけでなく民事責任も問われる可能性があります。損害賠償請求の訴訟を起こされるなどして、多額の慰謝料や治療費などを支払わなければならなくなることもあります。

飲酒強要による死亡事件では、刑事罰に問われたものの最終的には嫌疑不十分として不起訴となったものの、民事裁判では、適切な処置を行わなかったことから「安全配慮義務」に違反しているとされるものもあります。

被害者の年齢が若い場合は、損害賠償請求の額も高額になります。ホストクラブの場合は、店側に損害賠償命令が下されることもありますが、サークルなどの一気飲みの場合は、状況により、その場にいた全員、もしくはサークルの長などに損害賠償請求がなされる可能性があります。一気飲みを直接強要していない方でも、同席して強要する行為を止めなかった時点で同調したとみなされる可能性があるかもしれません。

3、一気飲みの加害者になってしまったら弁護士に依頼するべき

一気飲みを強要してしまい、加害者として刑事や民事的な責任を問われそうな場合は、いち早く弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談することで、現状がどのような状態であるのかを判断できます。さらに実際に依頼をすることによって、刑事や民事的な面で、必要以上に重い責任を負わされる事態を回避するための助言・活動をしてもらえます。

まず、弁護士にいち早く依頼し、逮捕前であれば被害者と示談交渉をすることで、刑事告訴されずに済む可能性があります。逮捕された後も、弁護士による弁護活動によって、勾留などの身柄拘束を回避し、大学や仕事への影響を最小限にできることも少なくありません。また、不起訴に持ち込むために証拠をそろえ、検察官に主張することもできます。

これらの弁護活動は早く始めれば始めるほど、社会的影響を最小限にできます。なるべく早く相談してください。

なお、一気飲みを強要した主要メンバーではない場合も、状況によっては、傷害現場助勢罪や保護責任者遺棄致死罪に問われる可能性がないとはいえません。その場に居合わせた全員が損害賠償請求を受けるかもしれないということも、覚えておく必要があります。いずれの場合も、刑事告訴や損害賠償請求の訴えを起こされる前に、弁護士に相談して最適な対策を話し合いましょう。

4、まとめ

一気飲みを強要すると、飲み会の主催者や飲酒を強要した方は加害者となり、強要罪・傷害罪・傷害致死罪・過失致死罪等に問われる可能性があります。被害者に直接お酒を飲ませていない場合でも、状況によっては、傷害現場助勢罪や保護責任者遺棄致死罪に問われる可能性もあります。

これらの罪に問われる可能性がある場合は、できれば逮捕前、遅くても逮捕直後に弁護活動をスタートし、社会生活への影響を最小限に抑える必要があります。ベリーベスト法律事務所千葉オフィスには刑事事件に対応した実績が豊富な弁護士が在籍しています。過去に一気飲みを強要したことがある方は、ひとりで悩みを抱えず、まずはご相談ください。あなたの状況を確認した上で、迅速に対応をスタートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています