家族が罪を犯してしまった!逮捕回避のためにできることは?
- その他
- 逮捕
- 回避
平成30年、千葉県では,殺人、強盗、放火、強制性交等、略取誘拐、強制わいせつの6種の重要犯罪で、417件、314名が検挙されています。警察統計における検挙とは、犯罪の行為者を特定する全ての活動を指しますが、そのなかには被疑者の逮捕についても含まれています。
もしあなたやあなたの家族が、何らかの罪を犯した自覚があるとしたら、いつ逮捕されてしまうのかと、心配しているのではないでしょうか。特に逮捕ともなれば、新聞などに実名掲載されてしまう可能性もあります。家族の立場からすれば、最愛の家族が逮捕されてしまうことは回避したいところでしょう。逮捕を回避するためにできることについて、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が解説します。
1、逮捕とは?
-
(1)逮捕の意味
「逮捕」とは、捜査機関や私人が,罪を犯したと疑われている人(「被疑者」といいます。)の逃亡や証拠隠滅を防止するために、その身柄を拘束することをいいます。
被疑者の身柄を継続して拘束するためには、前段階として逮捕という手続きを行う必要があります。
捜査機関から任意で事情聴取を受けたり、家宅捜索を受けたりしている段階は、「逮捕された」とはいいません。 -
(2)逮捕するためには理由が必要
たとえ捜査機関であろうと、むやみに被疑者を逮捕することはできません。
後で述べるとおり,逮捕には,通常逮捕,緊急逮捕及び現行犯逮捕の3種類がありますが,いずれも要件を満たすことが前提です。
実際に、最も件数が多い逮捕方法は、逮捕状をともない犯行の後日に身柄の拘束を行う「通常逮捕」となっています。
裁判所は刑事訴訟規則第143条の3に定める以下の基準に基づき、逮捕状発布の必要性を判断します。- 被疑者の年齢
- 被疑者の境遇
- 事件の重大さ
- 事件の態様
- 被疑者が逃亡する可能性の有無
- 被疑者が罪を犯した証拠を隠ぺいする可能性の有無
- その他の事情
-
(3)通常逮捕以外の逮捕とは?
逮捕には3種類あり、前述の「通常逮捕」のほかに「緊急逮捕」と「現行犯逮捕」があります。
緊急逮捕と現行犯逮捕の共通点は、主に以下の2点です。- 裁判所から逮捕状の発行がなくても被疑者を逮捕することが可能
- 逮捕されたあとで誤認であることが判明した場合や裁判所が「逮捕の必要があないと認めるとき」は釈放される(刑事訴訟規則第143条の3)
緊急逮捕は、刑事訴訟法第210条において以下に該当する場合に可能と定められています。
- 被疑者に死刑または無期、3年以上の懲役、もしくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があること。
- 検察や警察が裁判所から逮捕状の発行を待っていられないほど、事件に緊急性があること。
また、刑事訴訟法第212条および第213条で定める「現行犯逮捕」とは、以下の条件で認められます。
- 現在進行形で犯罪行為をしている、あるいは犯罪行為が終わってから間もないと認められる場合
なお、現行犯逮捕は警察や検察といった捜査機関だけでなく、一般人にも逮捕権が認められています。
2、逮捕されないまま罪に問われることはある?
-
(1)在宅事件とは?
警察に逮捕されると、取り調べを受けながら検察への送検を経て起訴または不起訴処分の判断が出されることになります。
このような事件を,「身柄事件」といいます。
場合によっては、逮捕から起訴処分または不起訴処分に至るまで、最長23日間も勾留(身柄の拘束)されることがあります。また、起訴後も保釈が認められない限り、引き続き勾留されます。
しかし、事件の内容や被疑者の状況次第では、逮捕されずに在宅のまま捜査を続けられることがあります。これは「在宅事件」と呼ばれています。
起きた事件が身柄事件になるか、それとも在宅事件になるかについての判断基準は、先述した刑事訴訟規則第143条の3です。
最近の事件では、東京都豊島区東池袋で起きた交通事故が記憶に新しいでしょう。自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(略して「自動車運転処罰法」と呼ばれます。)違反で逮捕される可能性があった事故ですが、事故を起こした男が退院しても逮捕されなかったことから、インターネット上で批判を呼びました。しかし、実際のところは以下の理由から逮捕しなくても今後の捜査や起訴が可能と警視庁が判断しているためと考えられます。先述した刑事訴訟規則第143条の3に照らして、考えてみてください。- 男が高齢で足腰も弱っており、顔と名前が全国に知れ渡っていることから、逃亡する可能性は極めて低いこと。
- 入院中に家宅捜索を終えている
- 事件そのものの状況から証拠隠滅は不可能であること。
- 男が事件を起こしたことをすべて認めていること。
ただし、この事件はやや極端です。在宅事件になるか身柄事件になるかの分岐点は、事件の凶悪性や重大性などが大きく考慮される傾向にあります。
なお、逮捕されたあとでも事件が軽微であると判断された場合は「微罪処分」とされ、警察限りで訓戒をして終了することもあります。 -
(2)在宅事件の流れ
警察は,捜査をした後,書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければなりません。これが「書類送検」と呼ばれる措置です。
その後,検察官は,起訴するか否かを決定するため,必要に応じて補充捜査を行いますので,、警察や検察の呼び出しがありましたら,これに応じて取り調べを受ける必要があります。捜査を遂げた後,検察官が起訴または不起訴の処分を決定します。不起訴となれば、前科がつくことはありません。
3、逮捕されたときに受ける可能性がある不利益とは?
逮捕イコール前科ではありません。「推定無罪」が原則の刑事司法では、逮捕されたとしても有罪が確定しない限り前科はつかないのです。ただし日本では、起訴されると99.9%と非常に高い確率で有罪となります。有罪になると、前科がついてしまいます。
前科は戸籍や住民票、住民基本台帳などに記載されるものではありません。判例でも,前科はみだりに公開されるべきものではないとされています。しかし、前科がつくと刑を終えたとしても検察庁が作成・管理している前科調書に一生名前が残ることになります。また、公務員など一部の職種への就職や資格の取得で制限を受けます。さらには、法律で前科者の入国を禁止している国もありますので,そうした国には渡航できなくなる可能性がある点に注意が必要です。
繰り返しになりますが、逮捕されたからといって前科がつくわけではありません。しかし、逮捕されることで以下のような不利益が生じる可能性が考えられます。
- 逮捕されて勾留が決定されるまでのおよそ72時間は、親族であろうと面会できない
- その後の面会や外部通信も、勾留期間中は厳しく制限される
- 捜査のために警察から勤務先に連絡が入る可能性がある
- 逮捕された事実と実名がマスコミに報道された場合、本人の著しい信用失墜になり、今後の社会生活に深刻な悪影響が出る可能性がある
このように、有罪になる・ならないにかかわらず、逮捕されることは本人にとってマイナス以外何物でもないのです。
4、逮捕回避のためにできることは?
逮捕を回避するためにご家族ができることは、あまり多くはありません。もっとも逮捕回避のために役立つと考えられる行動は、刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士にあらかじめ相談しておくことでしょう。
弁護士は被疑者の逮捕を回避するために、以下のような活動を行います。
-
(1)被害者と示談交渉
示談とは、民事上の争いごとを、被害者と加害者の話し合いによって解決することを目指すことです。
被害者へ財産的被害や精神的苦痛が生じている事件の場合、被害者から被害届や告訴届の提出を中止あるいは取り下げてもらうことが逮捕の回避につながることがあります。そのために、被害者との間で早いうちに示談交渉を成立させることは何よりも大切です。
ただし、刑事事件における被害者の多くは、本人はもちろんのこと加害者家族と直接交渉することを避ける傾向があります。つまり、個人が被害者と示談交渉を行うこと自体が非常に難しいといえるでしょう。しかし、被害者側との示談交渉に豊富な経験と実績をもつ弁護士であれば、被害者の心情を踏まえた示談交渉を行い、結果として逮捕を回避することが期待できます。 -
(2)警察や検察との交渉
事件が発覚する前に自首することによって逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断されれば、逮捕される可能性が低くなります。
自首の段階から弁護士に依頼すると、弁護士は警察へ同行してくれます。さらには、逮捕を回避するための内容を盛り込んだ弁護士名義の報告書を作成し、検察官に働きかけます。また、自首したあとも警察や検察官と交渉し、ご本人に逃亡や証拠隠滅のおそれがないことから在宅事件が相当であり、逮捕の必要性はないと説得します。
さらに、自首したあとの逮捕を回避するために、警察や検察官から取り調べを受ける際の有効なアドバイスが受けることができます。
5、まとめ
罪を犯してしまった本人は、複雑かつ不安定な心情に悩まされているはずです。そして、「逮捕されたくない」という気持ちは本人もご家族も共通していることでしょう。
逮捕を回避するための最善の方法は、できるかぎり早いうちに弁護士に依頼することです。もし事件が重く逮捕されてしまったあとでも、弁護士は早期釈放や不起訴処分に向けてベストを尽くします。逮捕を回避したいとお考えの場合は、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています