身元引受人になれる条件とは? 負う役割や責任などについて解説
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家族や知人が警察に逮捕されて、身元引受人となるように頼まれた場合、どうすればよいのでしょうか。そもそも身元引受人とはどういうもので、どのような責任を負うのか、詳しく知らないという方も少なくありません。
しかし、身元引受人の依頼自体は、決して珍しい話ではありません。
令和5年の千葉県における刑法犯検挙人員は7589人となっています。その中で、身柄の拘束を行う措置を回避し、送致前に身柄が解放されるときにはほぼ身元引受人を求められます。さらには、起訴されて裁判前に帰宅を望む「保釈」を求める際も、身元引受人がいなければ、保釈が認められる可能性は低くなります。
本コラムでは、身元引受人はどのような責任を負うのか、またどのような条件でなれるのか、断ることはできるのかなどについて、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が解説します。
1、身元引受人とは
身元引受人とは、被疑者(逮捕された段階)もしくは被告人(起訴された段階)の身柄を引き受け、釈放・保釈後の生活を監督する者をいいます。
なぜ刑事事件において身元引受人が求められるのかなどについてあらかじめ知っておきましょう。
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(1)身元引受人の意味
逮捕や勾留は処罰のために行われるものではありません。
被疑者・被告人が逃げたり証拠隠滅を行ったりすることを防ぐため、捜査機関の求めで逮捕や勾留などの措置が行われることになります。また、逃げるまでいかなくとも、住所不定の場合は取り調べや裁判の際に探し出して連れてくるという手間がかかりますので、やはり身柄拘束の必要性があると判断されるものなのです。
ただし、身柄を拘束しておく留置場や拘置所のスペースには限りがあります。 また、無罪推定の原則から被疑者・被告人の自由権もできるだけ保障する必要があります。そのため、実務上は身柄を解放しても差し支えなければ、そうしたほうがよいと判断されます。
そこで、逃亡や証拠隠滅が行われないように被疑者・被告人を監督してくれる人物がいれば、身柄拘束の必要性も低くなるので、釈放や保釈が認められやすくなります。 -
(2)身元引受人が必要となるタイミング
警察や検察から身元引受人が求められるのは、釈放や保釈をされるときです。
釈放とは身柄拘束から解放されることであり、保釈とは起訴された被告人の身柄拘束(勾留)を一時的に解除することをいいます。
また、実刑となって服役している受刑者が、刑期満了前に釈放される仮釈放においても、身元引受人が求められることが多いです。 -
(3)身元引受人がいない場合
身元引受人は法律上の明確な定義や根拠があるものではありません。したがって、いなければいないで仕方がないようにも思えます。
ところが、身元引受人がいない場合、上述のように逃亡や証拠隠滅などのおそれが否定できないため、身柄の解放は認められにくくなる現状があることも知っておきましょう。
2、身元引受人になれる者とその責任
身元引受人になれる条件やその責任などについて解説します。
依頼をされた場合の参考にしてください。
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(1)身元引受人の条件・資格
法律上、身元引受人となるにあたって、何か条件や資格が定められているわけではありません。
そのため、身元引受人となる者は、両親や配偶者、兄弟姉妹、親戚、身体を拘束されているのが高齢者であればその子どもなど、血縁関係にある身内がなるケースが多いでしょう。
しかし、身内がいない場合や、いても遠方にいて来られないといった場合は、友人や会社の上司に頼むことも可能です。また、同居している恋人なども身元引受人となることはできます。
他方、いくら条件や資格がないといっても、たとえば反社会的組織の構成員などのように、監督者としてふさわしくない人物であれば、身元引受人として認められないこともあります。 -
(2)身元引受人の役割
身元引受人として、被疑者・被告人の釈放・保釈後の生活を監督するとは、具体的にどういうことなのでしょうか。
大きく分けると3つの役割があります。
①逃亡や証拠隠滅を行わないように監視する
身元引受人は本来、被疑者・被告人の身柄を解放しても問題ないということを担保する役割を担っているため、上記の行動をとりわけ注意深く見張る必要があります。
②再犯防止と更生を促す
せっかく釈放・保釈をされたのに、そこで新たな犯罪が行われたのでは、身元引受人の意味がありません。
再犯防止と更生を促し、また、更生施設への付き添いなどもすることがあります。
③警察への出頭や裁判所への出廷の付き添い
釈放や保釈がなされるのは、捜査機関がわざわざ被疑者・被告人を探し出さなくてもよいという信用があってのことですので、確実に出頭や出廷をさせるのは大事な役目といえます。 -
(3)身元引受人の責任
問題は、これらの役割を適切に果たせなかった場合の責任です。
結論からいいますと、身元引受人が何か責任を問われたり罰則を科せられたりといったことはありません。
ただし、捜査機関側から身元引受人としては不適格と考えられるため、別の機会に身元引受人を引き受けようとする場合、信用されない可能性が生じます。
お問い合わせください。
3、身元引受人を引き受ける前に
家族や知り合いが困っていれば助けてあげたいと思っても、事情があってなかなかそうもいかない場合もあるでしょう。
そんなときに、以下のことを知っておけば、少しは気が楽になるかもしれません。
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(1)拒否や辞退ができる
身元引受人の求めを拒否することや、一度承諾してから辞退をすることは可能です。
その場合、捜査機関や弁護士へ早めに伝えることが重要になります。
特に仮釈放の場合、身元引受人の存在が条件となるため、不都合が生じた場合は速やかに申し出るようにしましょう。 -
(2)代行サービスの有無
身元引受人というと、賃貸住宅や老人ホームなどに入居する場合にも求められることがあります。これには民間の代行サービスなどもありますが、刑事事件の身元引受人とは異なるものです。
刑事事件における身元引受人の場合、その性質上、代行サービスはありません。 -
(3)弁護士と身元引受人
家族や親戚が近くにいない場合や、逮捕された事実を知られたくない場合など、身元引受人に当てがないときは、弁護士に相談することができます。
商業的な代行サービスはありませんが、弁護士と相談することで身元引受人となってくれる可能性がある人物を洗い出すことができますし、身元引受人が見つかった後の対応についても相談できます。
身元引受人の有無は、釈放や保釈、仮釈放の判断において大きく関わってきます。早期の身柄解放を求めるのであれば、身元引受人を用意する必要性は高いといえます。
どうしても、引き受けてくれる人物が見つからなければ、弁護士に相談するのもひとつの手です。
4、まとめ
今回は、刑事事件における身元引受人の役割や責任などについてご説明しました。
身元引受人がいることで、捜査機関や裁判所に対する、被疑者・被告人の信用性をアピールすることができます。
実務上、身元引受人がいなければ釈放や保釈が認められないケースも多く、早期解放を求める上で、身元引受人の存在は重要です。
もし、刑事事件で捜査機関に身体拘束を受けていて、身元引受人の当てがない、家族や親戚、上司などにも頼めないといった事情がある場合は、ベリーベスト法律事務所千葉オフィスの弁護士にご相談ください。
身元引受人の選定など、個別の事情に合わせてベストな方法を検討し、ご提案します。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています