有罪判決を受けたらどうなる? 弁護士への依頼で回避はできるのか
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千葉県警のデータによると、令和2年中に千葉県で発生した犯罪の総数は3万4685件で、前年比で7108件の減少となりました。
罪を犯して刑事裁判で有罪判決を受けた場合、仮に実刑判決にならなかったとしても、社会的に大きな影響が生じる可能性があります。
そのため、起訴前・起訴後を通じて、弁護士に依頼して有罪判決を回避するための活動を続けることが大切です。
この記事では、有罪判決を受けた場合に生じる悪影響や、有罪判決を回避するためにすべきことなどについて、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が解説します。
1、有罪判決が言い渡された場合の弊害
罪を犯して刑事裁判にかけられ、有罪判決を受けた場合、以下のとおり、被告人にとっては非常に難しい状況が発生します。
そのため、できる限り有罪判決は避けたいところです。
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(1)実刑判決であれば刑務所への服役が必要になる
刑事裁判で受ける有罪判決には、重い方から順に死刑・懲役刑・禁錮刑・罰金刑・拘留刑・科料刑があります。
このうち、刑事裁判で問題になるケースが多いのは、懲役刑・禁錮刑・罰金刑です。
罰金刑については、罰金を納付すれば刑の執行が完了するため、刑務所に服役する必要はありません。
これに対して、懲役刑または禁錮刑の場合は、執行猶予が付かない限り、刑務所への服役が必要になります。
刑務所にて服役する場合、数か月から数年の間社会から隔離されてしまい、社会人としてのキャリアが断絶してしまいます。
その間、家族や友人に見放されるケースも多く、あまりにもたくさんのものを失い、その代償は大きい結果になりかねません。 -
(2)執行猶予付き・罰金刑でも前科が付いてしまう
また、仮に実刑判決を回避できたとしても、執行猶予付きの懲役刑や禁錮刑、または罰金刑が言い渡された場合には、法律上の「前科」が付いてしまいます。
「前科」について法律上明確な定義はありませんが、一般的には、刑事事件で有罪判決を受け、刑を言い渡された経歴をいいます。
(なお、禁錮以上の刑は10年間、罰金以下の場合は5年間、罰金以上の刑に処せられなければ、刑の言渡しが失効して前科は消滅します。また、執行猶予期間が経過した場合も、前科は消滅します。この点は複雑であるため弁護士にご確認ください。)
前科が付くと、次の項目で解説するように、さまざまな面で社会的な悪影響が生じます。
そのため、実刑判決を回避できたからよいというわけではなく、執行猶予付きや罰金刑の場合も含めて、有罪判決自体を回避するための努力をすることが大切なのです。
2、前科が付いた場合の社会的な影響とは?
刑事裁判で有罪判決を受けて前科が付いた場合、被告人には以下のような悪影響が生じてしまいます。
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(1)社会からのイメージ・信用力が失われる
日本では特に、犯罪の加害者に対する風当たりは非常に強い実情があります。
刑事裁判で有罪判決を受けると、実名報道などによっていわゆる「犯罪者」としてのイメージが定着してしまい、社会人として活動していくうえでの信用力を失ってしまいます。
また、家族も犯罪者の家族という目で見られ、自宅にマスコミが押しかけたりと日常生活を送ることも難しい立場に置かれる場合もあります。
もちろん、犯罪加害者を受け入れてくれる人もたくさんいますが、世の中の少なくない人々から白い目で見られることは、覚悟しておかなければなりません。 -
(2)一定の職業に就けなくなる
資格や職業に関する各種の法律では、禁錮刑以上を欠格事由と定めているケースや、前科がある場合には裁量により免許を与えないとしているケースがあります。
たとえば弁護士や弁理士などの士業や、警備員などの職業には、禁錮刑以上の有罪判決を受けてから5年以上が経過しなければ、法律上就くことができません。また、医師や看護師など裁量的に免許が与えられない職業があります。 -
(3)就職活動などで不利に働き得る
社会的なイメージの問題とも関連しますが、前科があるという事実だけで、就職活動・転職活動などにおいて不利に働くことがあります。
なお就職活動などの際には、基本的には自分から積極的に前科があるという事実を明らかにする必要はありません。
しかし、応募先の会社の方から前科についての質問を受け、それに対して虚偽の回答をして採用された場合、経歴詐称として、後で嘘をついたことが分かったときには懲戒解雇などの処分対象になる可能性があります。 -
(4)性犯罪者は自治体への届け出が必要な場合がある
大阪府や福岡県などの一部の自治体では、強制わいせつなどの性犯罪に問われ、刑期満了の日から5年を経過しない人が住所を移す場合に、自治体への届け出義務を課している場合があります。
(参考:「大阪府子どもを性犯罪から守る条例」(大阪府))
(参考:「子どもに対する性犯罪を犯した刑期満了者は住所等の届け出が必要です」(福岡県))
自治体から周辺住民に対して、犯罪の前科があることを広められるということは一切なく、子供に対する性犯罪を防止するとともに犯罪加害者の更生をサポートするための制度として制定されましたが、裏を返せば犯罪加害者がそれだけ警戒の目で見られる存在であることを示しているともいえるでしょう。
3、有罪判決を回避するためにすべきことは?
日本の刑事裁判の有罪率が非常に高いのは有名な話で、99.9%といった有罪率を聞くこともあります。すなわち起訴されてしまったらほぼ確実に有罪になってしまうということです。なぜなら、検察官が起訴する段階で確実に有罪にできる事件しか起訴しないことが挙げられるでしょう。
そこで、刑事裁判での有罪判決を回避するためには、刑事処分が相当ではないことを検察官や裁判官にわかってもらわなければなりません。
以下では、有罪判決を回避するための対処法として考えられるものを解説します。
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(1)犯人性を争う
犯罪について身に覚えがない場合には、犯罪事実そのものを争う必要があります。
犯罪事実を争う方法のひとつとして「犯人性を争う」ことが考えられます。
「犯人性を争う」とは、「自分が犯人ではない、自分とは別に犯人がいる」と主張することを意味します。
たとえば、- 犯行現場に自分はいなかった、同じ時間帯にアリバイがある
- 犯行現場に残された自分の痕跡(血液など)は、別の機会に残されたものである
などの事実の主張が認められれば、自分が犯人ではないことを示すことができます。
ただし、裁判で犯人性を争う場合には、刑事裁判の場で裁判官を説得しなければなりません。もし、やっていないことで犯人性を争う場合、仮に逮捕されれば最長23日間も身体を拘束されてしまい、警察や検察の取調べにより心身ともに疲弊してしまします。
刑事裁判で犯人性を争うハードルは高く、弁護士と協力して入念な準備をすることが要求されます。 -
(2)犯罪が不成立であることを主張する
犯罪事実を争うためにもうひとつ考えられるのが、犯罪の成立要件を満たさず、犯罪が不成立であると主張する方法です。
たとえば、- 自分の行為と結果の間に因果関係がない
- 自分には犯罪の故意がなかった
など、自分の行為の後に第三者の行為により結果が生じたような因果関係がない場合や、雨の日にコンビニで買い物をするため傘立てに自分の傘を立てていたが帰りに傘立ての他人の傘を自分の傘と信じて持ち帰ってしまったような故意がない場合には、犯罪の構成要件に該当する事実を一部でも否定し、それが認められれば、犯罪は不成立となります。
ただし、犯人性を争う場合と同様、刑事裁判で検察官と全面的に対決することは避けられないため、弁護士と相談をしながら周到に準備を行う必要があります。 -
(3)起訴猶予処分を目指す
起訴される前の被疑者の段階であっても、有罪判決を回避する方法は残っています。
日本の刑事司法の制度上、犯罪の被疑者を起訴するかどうかの判断は、検察官にすべて委ねられています(起訴独占主義、刑事訴訟法第247条)。
そして検察官は、「犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」とされています(起訴便宜主義、同法第248条)。
つまり、被疑者が罪を犯したことが確実であると検察官に判断された場合でも、被疑者の情状などを考慮して、検察官が起訴を差し控えることがあるのです。
これを「起訴猶予処分」といいます。
被疑者が起訴猶予処分になれば、刑事裁判は行われず、有罪判決を受けることもなくなります。
起訴猶予処分を実現するためには、捜査が始まってすぐに弁護士と協力して、取調べ対応や、被疑者の前科・前歴等の有無、情状面では、有利な材料を集めて、検察官にアピールすることが大切です。
情状面についてたとえば、- 被害者に対する謝罪をしたり、被害弁償をしたり、示談を成立させたりする
- 反省文を作成して、真摯(しんし)な反省の気持ちを表明する
- 職場の同僚や友人などに、被疑者の普段の人柄が良好であることを証言してもらう
などの方法が考えられます。
これらの方法を組み合わせて、弁護士が、起訴猶予処分を相当とする旨の意見書を作成し、証拠(被害弁償した際の領収書、監督者の意見書等)とともに提出して面談を求めるなどの活動をし、検察官による起訴・不起訴の判断がなされるまでの短期間に、効果的なアピールをします。
4、罪を問われる立場になってしまったら弁護士に相談を
捜査機関から罪を犯したことを疑われ、刑事裁判にかけられそうになっている方は、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
既に述べたとおり、被疑者が一度起訴されて刑事裁判に発展すると、非常に高い確率で有罪判決が下されるという統計があります。
したがって、有罪判決を回避するためには、犯罪事実を否定する証拠を示すなり、被疑者に関する有利な情状をアピールするなりして、検察官に起訴を思いとどまらせることができるように活動することがポイントとなります。
検察官を説得するためには、同じ法律の専門家である弁護士を通じてコミュニケーションをとるのがもっとも有効です。
また、弁護士は検察官がどのような点に着眼して起訴・不起訴の判断をするか理解しているため、事件の内容・性質に合わせた適切な弁護活動を行うことができます。
5、まとめ
刑事裁判で有罪判決を受けてしまうと、実刑判決であれば刑務所に服役しなければならず、執行猶予判決であっても前科が付き、社会的に大きな不利益を受けてしまいます。
有罪判決を回避するためには、犯罪の嫌疑がかけられ、又は逮捕された直後の検察官によって起訴が行われる前の段階から、刑事処分を行うことが相当な事案ではないことを検察官に対してアピールする必要があります。
そのためには、弁護士の力を借りながら、検察官への効果的なアピールにつながる証拠書類を集めたり、自己に有利な証言者を確保したりすることが非常に重要です。
ベリーベスト法律事務所では、刑事事件を専門的に取り扱うチームが、依頼者を刑事手続きから解放するために最大限尽力いたします。
捜査機関から犯罪の嫌疑をかけられ、又は罪に問われてしまい、困難な状況に陥っている方は、ぜひお早めにベリーベスト法律事務所 千葉オフィスにご相談ください。
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