家族が振り込め詐欺グループの一員として逮捕されたらどうしたらいい?

2019年09月04日
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家族が振り込め詐欺グループの一員として逮捕されたらどうしたらいい?

近年は、10代20代の若年層が振り込め詐欺の末端として、アルバイト感覚で罪を犯して、逮捕されるケースが急増しています。千葉県警では、電話を使った詐欺事件に少年を加担させないためのリーフレットを作成し、配布しています。

もし、あなたの家族が振り込め詐欺で逮捕されたら……。どうすれば良いのか、ご存じでしょうか。ここでは、振り込め詐欺グループの一員として逮捕された場合の対処法を、千葉の現役弁護士が解説します。

1、軽いアルバイトのつもりが逮捕……振り込め詐欺グループの現状

警察庁がまとめた統計資料によると、平成30年中に検挙された振り込め詐欺をはじめとした特殊詐欺容疑による検挙人数は2686人でした。このうち暴力団員などの主犯格は全体の2割強にすぎません。残りの被疑者は、受け子やかけ子と呼ばれる末端の役割を担った者たちです。彼らは、友人などから割りがいいアルバイトがあると誘われ、振り込め詐欺とは知らずに加担することが多く、気づいたときには抜けられない状況に陥っているケースもあるようです。特殊詐欺全体の検挙人数の約3割が高校生をはじめとした10代の少年少女だったという事実があります。

千葉県警の発表によると、平成31年1月2月の2ヶ月間で、認知された振り込め詐欺またはその類似詐欺の件数は184件と前年度の188件と同等の件数で推移しています。被害総額は2ヶ月間で約2億9200万円です。千葉県内では千葉市と柏市での発生が多い傾向にあります。

2、振り込め詐欺グループの一員として逮捕されるとどうなる?

振り込め詐欺で逮捕された場合の流れを解説します。振り込め詐欺などの組織犯罪の場合、末端の役割を担っていたとしても、逮捕される可能性が高いと言えます。

  1. (1)逮捕されると家族に連絡がある?

    被疑者を逮捕した警察には、その被疑者の家族に連絡を入れなければならない、といった明確な規則は定められていません。被疑者が警察に対して、家族などへの連絡を希望したとしても、連絡をしてくれるのは弁護士ぐらいで、普通はそのようなことはしてくれない場合が多いでしょう。

    また、振り込め詐欺容疑で逮捕される場合、加害者の所在地と被害者の所在地が異なるケースは少なくありません。被疑者となったあなたの家族が千葉市内に住んでいたとしても、他県から被害届が出ていたのであれば、他県の警察に逮捕され、身柄を拘束されてしまう可能性があるということです。

  2. (2)逮捕された後の手続き

    逮捕されると、留置場に身柄を拘束されて、警察官による取り調べが行われます。逮捕から勾留が決定されるまでの間の約72時間は基本的に家族や知人との面談は禁じられ、弁護士以外と接見することはできません。警察は、被疑者を逮捕したときから48時間以内に、検察官へ被疑者の身柄を送致しなければなりません。
    警察官による取り調べは、厳しく、場合によっては不利な自白をしてしまう方も少なくありません。

    事件の送致を受けた検察官は、24時間以内に「勾留の必要性」を判断し、勾留が必要と判断すれば、裁判所に「勾留請求」を行います。裁判所によって勾留が必要と判断されると、まずは10日間、延長されると更に10日間、最大20日間ものあいだ留置場や拘置所に身柄が拘束されます。

    勾留期間を満了するまでに、検察官は被疑者を起訴すべきか否かを判断します。起訴が不要と判断されれば、身柄は解放され前科がつくことはなくもと通りの生活に戻ることが可能です。

    検察官が、公判請求が相当であると判断すると、1ヶ月から1ヶ月半後に刑事裁判が開かれます。日本では刑事裁判の有罪率は99.9%と言われており、無罪になる可能性は非常に低いでしょう。

    刑事裁判では、事件への関与の深さ、振り込め詐欺グループにおける立場や役割など総合的な観点から責任の有無や刑罰の軽重を決定します。振り込め詐欺は、ご存じのとおり、高齢者がターゲットにされることが多く、大きな社会問題になっています。被害額も大きいことから、末端の役割である受け子やかけ子にも実刑判決が出ることも珍しくありません。

3、振り込め詐欺グループの一員として逮捕されたら、まずは弁護士に相談!

振り込め詐欺は社会的にも非常に注目されている犯罪です。警察、検察庁、裁判所とも、罪が重いと判断する傾向があります。そもそも、振り込め詐欺で問われる可能性がある詐欺罪の刑罰には罰金刑の設定がなく、有罪になれば懲役刑に処されます。たとえ末端であろうと、執行猶予がつかない限り、刑務所で服役しなければならなくなる非常に罪が重い犯罪なのです。

振り込め詐欺への関与があると判断されると逮捕され、勾留され、起訴されて有罪になる確率も非常に高くなっています。これらの罪での身柄の拘束を避け、罪を軽減するためには、弁護士のサポートが必要不可欠です。

  1. (1)逮捕直後に無料でよべる「当番弁護士」

    逮捕された場合は、無料で当番弁護士を留置所に呼び、アドバイスを受けることができます。ただ、当番弁護士は基本的には1回しか呼べません。

    逮捕直後から弁護士に弁護活動を行ってもらうためには、弁護士を探して弁護を依頼する「私選弁護士」を選任する必要があります。もちろん、当番弁護士に私選弁護士になってもらうよう依頼することも可能です。

  2. (2)弁護士費用がない場合は国選弁護人

    検察官の請求によって裁判官が勾留を決定した場合において、被疑者が貧困その他の理由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、被疑者の請求により弁護人を付さなければならないとされています。ここで裁判官が付する弁護人が、「国選弁護人」です。国選弁護人を選任する「貧困」の基準として、貯金などの資力が50万円以上あるかどうかが一つの目安とされています。

    ただし、被疑者は自分で誰を国選弁護人にするのか選ぶことができません。振り込め詐欺の弁護が不得意である弁護士が選任される可能性もあります。

  3. (3)早急な対応を望むならば私選弁護士への依頼を

    振り込め詐欺グループの一員として逮捕されてしまった場合、まずは詐欺事件の弁護経験が豊富な弁護士事務所になるべく早く相談をするのがベストです。

    逮捕からできるだけ早い時間に弁護士を選任すれば、まずは勾留を回避するための弁護活動が可能です。具体的には、勾留請求の段階で「勾留は必要がない」と主張する意見書を提出し、もし勾留が認められても、裁判所に対して、勾留決定の取消しと検察官の勾留請求の却下を求める準抗告を申し立てることができます。

  4. (4)起訴までに被害者と示談すべき理由

    刑事事件は「逮捕から起訴前までが勝負」と言われています。起訴前に被害者との示談交渉を進めたり、担当検察官に起訴しないように働きかけたりする活動が重要となります。これらの働きかけにより、起訴を回避できれば刑事裁判によって裁かれることはなく、前科はつきません。しかし、起訴後に弁護士を選任したとしても、無罪判決を得ることは非常に難しくなります。

  5. (5)保釈で日常生活に戻ることも可能

    起訴が決定すると、保釈を請求しなければ起訴から初回の公判が開かれるまでの期間の1ヶ月から2ヶ月程度身柄の拘束が続きます。その後も、1ヶ月に1回程度の裁判に出席するために、結審するまで勾留が延長されてしまうことになるのです。もちろん、その間は仕事をすることも帰宅することさえできなくなります。

    事件の構造が複雑な振り込め詐欺事件では、刑事裁判が長期化することも多いものです。弁護士による保釈請求を行わなければ、数ヶ月にわたって身柄が拘束され続け、社会から断絶されてしまいます。

    しかし、弁護士が保釈を請求して保釈が認められれば、保釈金を納めて、刑事裁判に確実に出頭することを誓約した上で、勾留が解かれて一時的に日常生活に復帰することができます。

4、まとめ

振り込め詐欺は、社会問題化しており警察も検挙に力をいれています。裁判所もも重い判断を下す傾向があります。

振り込め詐欺は、高額報酬を得られるアルバイトなどと称して日常生活を送っている人々を犯罪行為の手先として利用する、非常に悪質な犯罪です。もし何らかの理由で振り込め詐欺グループの一員として逮捕されてしまった場合は、逮捕の事実を知った時点でまず弁護士に相談し、最良のサポートを受けるべきです。

ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスでも、状況に応じて最適なサポートを行います。逮捕直後から刑事事件に対応した経験が豊かな弁護士がサポートすることで、できるだけ早い日常生活への復帰が期待できるでしょう。逮捕の影響を最小限に抑えるために、まずはご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています