家族が電車で置き引きをした?! 逮捕されてしまったときすべき対処法

2020年06月12日
  • 財産事件
  • 置き引き
  • 電車
家族が電車で置き引きをした?! 逮捕されてしまったときすべき対処法

平成30年6月、JR千葉駅に停車中の電車内で、乗客女性が持っていたバッグを持ち去った男性が逮捕される事件が発生しました。犯人は、犯行を目撃したほかの乗客に取り押さえられましたが、当時は酒に酔っており容疑を否認したそうです。

電車内で他人が置いていた金品を盗むいわゆる「置き引き」は、窃盗罪に該当する可能性が高いでしょう。この事件のように、酔っぱらって記憶がない状態だとしても、持ち主や目撃者によって取り押さえられれば現行犯逮捕となり、大々的に報道されてしまう可能性は否定できません。

もし、あなたの家族が電車内や駅の構内での置き引き容疑で警察に逮捕されたとしたら、どう対応すべきなのでしょうか。置き引きの罪や刑罰、逮捕後に取るべき対策などについて、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が解説します。

1、「置き引き」はどのような罪に問われる?

置き引きは、「窃盗罪」もしくは「占有離脱物横領罪(逸失物等横領罪)」のどちらかに該当するケースが多いでしょう。具体例とともに説明します。

  1. (1)窃盗罪

    窃盗罪は、「他人の財物を窃取した者」を対象に刑法第235条に規定された犯罪です。裁判で有罪となれば「10年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」に処されます。

    窃盗は、空き巣、自転車盗、万引きやひったくり、スリ、車上ねらいと同じく、他人の占有している財物を奪い自己の占有に移したこと、つまり自分の物にした場合に問われる罪です。

    たとえば、駅のベンチに置いてあったカバンを持ち去ったケースで考えてみましょう。持ち主が「ベンチにカバンを置いた」と認識したまま短時間その場からそれほど距離を離れていなかったというケースならば、カバンは持ち主の占有から離れたとはいえません。
    そのため、このケースでカバンを持ち去ったとすれば、「窃盗罪」に該当するでしょう。

  2. (2)占有離脱物横領罪(逸失物等横領罪)

    一方、持ち主の手を離れて相当の時間または距離が離れていた物を持ち去った場合は、持ち主の占有を離れたといえますから「占有離脱物横領罪」に問われる可能性が高いでしょう。簡単に言えば、「落とし物をネコババした」ときに適用される罪です。

    同じく駅のベンチにカバンが置いてあったとして、カバンの持ち主がカバンを置き忘れて電車に乗って数駅が過ぎたころに気がついたとすれば、すでに相当な時間と距離が離れているため持ち主の占有を離れていることになります。

    このケースでは、カバンは「落とし物」と同じ扱いになるため、このカバンを持ち去った場合は「占有離脱物横領罪」に問われることとなるでしょう。

    刑法第254条の「逸失物等横領罪」の条文によると「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料に処する」と規定されています。

    このように「落とし物」を持ち去った場合は「占有離脱物横領罪」と呼ばれます。なお、科料(かりょう)とは、1万円未満の金銭を強制徴収する罰則です。

2、置き引きで逮捕されるケース

  1. (1)現行犯逮捕の場合

    置き引きをしたその場で、被害者や周囲の人に取り押さえられた場合、「現行犯逮捕」となります。かけつけた警察官に身柄を引き渡されることとなるでしょう。

  2. (2)通常逮捕の場合

    現行犯逮捕を免れ、うまくその場を逃げおおせたとしても、電車での置き引きであれば証拠が多数残っている可能性が高いといえます。目撃者の証言、電車内や駅構内の防犯カメラの映像、ICカードの入出場記録、中身のクレジットカードやキャッシュカードの使用履歴などから身元が割り出されることも当然考えられます。

    この場合、警察は裁判所が発布した逮捕状に基づいて逮捕する「通常逮捕」を行う可能性が高いでしょう。

    通常逮捕の場合は、自宅などに警察がやってきて、逮捕状の罪状を読み上げて身柄を拘束します。裁判所が被疑者の逮捕を認めるのは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足る相当な理由があり、逃亡または証拠隠滅のおそれがある場合に限られます。

  3. (3)逃亡または証拠隠滅のおそれがない場合

    逃亡または証拠隠滅のおそれがない場合は、逮捕されず在宅事件扱いとなり、任意捜査を受けることになります。警察から出頭してほしいなどの要請が来たときは、かたくなに拒むよりも、素直に応じたほうがよいことが多いはずです。

    なぜなら、30万円以下の罰金、拘留または科料にあたる罪において、逮捕できるのは、被疑者が住所不定の場合または正当な理由なく出頭の求めに応じない場合に限る(刑事訴訟法第199条1項)とされているためです。
    罪状が「占有離脱物横領罪」の場合は、いきなり逮捕とはならず、まずは任意の取り調べに応じるよう求められるケースがほとんどでしょう。

    もちろん、これも出頭拒否を続けていると逃亡のおそれがあるとされて通常逮捕されてしまう可能性があります。
    ひとりで出頭することに不安がある場合は、弁護士に相談してください。出頭時に同行することができます。

3、逮捕後の流れ

置き引きで逮捕されてしまった場合は、次のような流れで刑事手続きを受けることになります。

  1. (1)警察での取り調べ

    逮捕後は警察に移送され、逮捕事実についての取り調べを受けることになります。警察は、逮捕から48時間以内に取り調べを終えて、被疑者を釈放するか、検察庁に送致するか判断します。

    嫌疑不十分で釈放されるケースと、罪ははっきりしているものの軽微な事件(窃盗の場合おおむね被害額が2万円以下)の場合は「微罪処分」といい、検察へ報告のみで釈放されるケースもあります。微罪処分の場合、逮捕の前歴は残りますが前科はつきません。

  2. (2)検察への送致

    送致には2種類あり、被疑者の身柄ごと送致する場合と、事件の捜査書類のみを送致し被疑者の身柄は釈放するケースがあります。後者はニュースなどの報道では「書類送検」と呼ばれているようです。

    身柄ごと送致を受けた検察官は、被疑者の取り調べを行い、さらに身柄を拘束して取り調べを尽くす必要があるのかを判断します。身柄の拘束が不要であると判断されれば、在宅事件扱いとして身柄は釈放されます。しかし、この時点で無罪放免になったわけではないので、呼び出しに応じて取り調べに協力する必要があります。

  3. (3)勾留

    「勾留(こうりゅう)」とは、検察においても身柄拘束を行ったまま取り調べを行う措置を指します。この時点で有罪かどうかが決まっているわけではないので、刑罰ではありません。

    逃亡のおそれがある、証拠隠滅の可能性があるなど、身柄拘束を続ける必要があると判断した検察官は、送致から24時間以内に裁判所に勾留を請求します。これが認められれば原則10日間、最長で20日間の身柄拘束が行われることになります。勾留中は、自宅に戻れず当然仕事や学校に行くこともできません。

  4. (4)起訴・不起訴の判断

    捜査の結果、被疑者の責任を刑事裁判で問う必要があると検察官が判断した場合、検察官は被疑者を起訴します。起訴された被疑者はこの時点から被告人となり、刑事裁判を待つこととなります。

    起訴には、略式命令と公判請求があります。略式命令の場合は簡易的な裁判で有罪と、処罰の内容が決定されるため、すぐに身柄が解放されます。

    公判請求の場合は、公開された刑事裁判を通じて、有罪か無罪かが争われ、有罪の場合は処罰が決定することになります。しかし、起訴後は保釈請求が可能です。保釈が認められた場合は自宅で過ごしながら裁判に臨むことができます。

  5. (5)裁判

    刑事裁判が開かれると、裁判官は検察の主張と弁護側の主張双方を聞いた上で、判決を下します。起訴から判決までは数か月程度かかりますが、事案によっては1年以上かかるケースもあるでしょう。

4、逮捕連絡を受けた家族が弁護士を選任すべき理由

家族が逮捕されてしまった場合、連絡を受けた身内としてできる最善のサポートは「弁護士を選任すること」です。

置き引きをはじめとした窃盗事件は、千葉県内だけで年間3万件以上発生しています。
しかし、すべてが送致されているわけではありません。犯行が悪質ではなく被害額が小さい、被害者との示談が成立しているなどの状況であれば、検察に送致せず「微罪処分」で終わるケースも少なくないのです。

本項では、弁護士のみが行えるサポートについて解説します。

  1. (1)逮捕直後から接見しサポートできる

    逮捕から72時間は、たとえ家族であっても原則として面会はできません。この間、逮捕された被疑者と直接話ができるのは、自由な接見交通権が認められている弁護士だけです。

    接見を行った弁護士は、逮捕された直後の不安を取り除き、取り調べにどのように応じるかアドバイスを行います。ここでいち早く事情を伺い、深い反省の態度を示すことを促すなど、微罪処分となるようサポートします。

  2. (2)被害者感情を悪化させず、示談を進められる

    置き引きの被害者がはっきりしている場合は示談交渉が有効でしょう。
    なぜなら、警察や検察、裁判所は、被害者の処罰感情を非常に重視しているためです。被害者への弁済とともに精神的な損害を補う示談金を支払う示談が成立していれば、犯行内容が悪質ではない限り、重すぎる処罰を受ける事態を回避できるでしょう。

    示談交渉は弁護士を介して行うことを強くおすすめします。
    弁護士であれば加害者が直接交渉するよりも被害者の処罰感情を悪化させず交渉を進めることができるためです。

  3. (3)示談成立の可能性が高まり、処分が軽くなりやすい

    示談とは、加害者が謝罪と弁済を行う代わりに被害者に示談書において「宥恕文言(処罰を望まない意思)」を示してもらい被害届を取り下げてもらうことを目指します。示談が成立していれば、微罪処分獲得や勾留回避、勾留の中止の可能性が高まります。

    また、有罪判決を受けたとしても、被害弁済がなされていることが評価されて量刑が軽くなることも期待できます。

  4. (4)裁判で弁護活動を行うことができる

    無罪を主張するならば、逮捕時から一貫して主張したほうがよいでしょう。
    その場合も、弁護士のサポートは欠かせません。無罪の証拠や証言を集めるには、身柄拘束中も自由に動ける弁護士に依頼することとなります。

    事件の初期段階から弁護士を選任していると、有効な弁護活動を迅速に行うことができるでしょう。

5、まとめ

あなたの家族が電車の中で置き引き行為をしたとして犯罪の被疑者となったという連絡を受けたらどうすべきかについて解説しました。逮捕されてしまった方を救うためには、警察から連絡を受けたお身内の親身なサポートが必須です。

家族が置き引きで逮捕されてしまった場合は、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスまでご相談ください。置き引きを含めた刑事事件に対応した実績が豊富な弁護士が、あなたの大切な家族をサポートするために尽力します。刑事事件の弁護活動はスピードが勝負です。悩んでいるよりも、まずはご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています