痴漢で逮捕されてしまったら!? 示談の方法や進め方を紹介

2019年09月12日
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痴漢で逮捕されてしまったら!? 示談の方法や進め方を紹介

平成30年9月に千葉県の男性が、18歳女性の体を触ったとして現行犯逮捕されたものの、最終的には不起訴となったことが報道されました。痴漢で逮捕されると、痴漢の疑いを持たれた被疑者本人だけではなく、その妻や子どもといった家族の生活にも大きな影響を与える可能性は否定できません。たとえ起訴に至らなかったとしても、家族として一刻も早い対応をしたいとお考えになることは当然のことです。

今回は、痴漢の疑いをかけられてしまった場合の示談の方法や進め方について、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が紹介します。

1、示談交渉には素早い判断が必要

痴漢行為をした場合、前科をつけないためには早期の示談交渉が重要です。ここでは、痴漢で逮捕されて有罪になった場合の刑罰と、示談が重要な理由、冤罪の場合の対処法を解説します。

  1. (1)痴漢で逮捕されて有罪になった場合の刑罰

    痴漢は、刑法の強制わいせつ罪と各都道府県の迷惑防止条例違反に問われる可能性がある犯罪です。一般的には、下着の中に手を入れて直接触るなどの悪質性が高いものは強制わいせつ罪に問われる可能性があり、それ以外の痴漢行為が迷惑行為防止条例違反に問われるケースが多いと考えられます。

    なお、千葉県内で痴漢行為により、千葉県の迷惑防止条例違反として罪を問われ、有罪となったときは、「6ヶ月未満の懲役または50万円以下の罰金」の範囲で処罰が科されることになります。ただし、痴漢の常習者と判断されると「1年以下の懲役、または100万円以下の罰金」に処される可能性があるでしょう。

    もし、強制わいせつ罪として処罰を受ける場合は、より重い罪が課されることになります。具体的には、起訴されて有罪になると「6ヶ月以上10年以下の懲役」に処されると規定されています。罰金刑の設定がなく、有罪になれば執行猶予がつかない限り刑務所で服役することになるでしょう。

  2. (2)痴漢で示談が重要な理由

    痴漢で逮捕されて、検察官が「正式起訴が必要」と判断されると刑事裁判が開かれます。日本の刑事裁判の有罪率は99.9%なので、起訴されると有罪になる可能性が非常に高くなります。

    しかし、その前に被害者との示談が完了しており本人も反省していることが明らかであれば、「不起訴処分」になるケースがあります。不起訴処分になる理由はさまざまですが、痴漢の場合は、被害者と示談が完了していることが起訴・不起訴の判断に大きな影響を与えます。そこで、痴漢で逮捕されたらできるだけはやく被害者と示談を完了させておいたほうがよいと考えられます。

  3. (3)冤罪など本人が罪を認めていない場合

    電車やバスの中で痴漢の疑いをかけられてしまった場合は、駅員室には行かずに両手を上げたまま微物検査をしてもらう、などの対応が有効といわれています。可能であればその場で弁護士を呼び、対応を依頼したりアドバイスを受けたりしたほうがよいでしょう。なお、ベリーベスト法律事務所では、「痴漢冤罪顧問弁護士緊急ダイヤルサービス」を用意しています。利用を検討してみてもよいかもしれません。

    しかし、すでに逮捕されてしまった場合はそれらの対処法は行えません。一刻も早く弁護士に弁護を依頼することをおすすめします。万が一、痴漢の被疑者として逮捕されてしまうと、48時間は家族とも面会が許されない閉鎖空間で身柄を拘束され、取調べ等が行われます。。痴漢の罪を認めていない場合は、警察による厳しい取り調べが行われるケースが少なくありません。逮捕当時はやってないから大丈夫と考えていた方が、48時間の身柄拘束中に行われる取り調べに音を上げて、おかしてもいない痴漢の罪を認めてしまうことも少なくないようです。

    痴漢冤罪の被害にあった場合は、不利な自白を避けるためにも早急に弁護士に依頼し、取り調べに対するアドバイスやサポートを受けることを強くおすすめします。

2、家族が痴漢をしてしまった場合の示談の進め方

次に家族が痴漢をしてしまった場合に、起訴を回避するための示談の進め方を解説します。

  1. (1)そもそも示談や示談交渉とは?

    「示談」とは、トラブルの当事者である被害者と加害者が話し合い、慰謝料などの支払いを条件にトラブルの解決を図ることです。これは民事上の手続きで、示談が完了したからと言って警察が捜査を取りやめる訳でも、すぐに無罪になるわけでもありません。しかし、示談が完了していることで、不起訴になる可能性は高くなります。

    示談交渉では、加害者から被害者への損害賠償の金額や各種条件を取り決めます。双方が内容に合意したら、トラブルを防ぐため示談書を作成して、署名捺印が完了すれば示談が完了します。

    示談交渉は、当事者同士が直接行うこともできますが、痴漢の場合は、被害者が加害者に対して嫌悪感を抱いていることが多く、直接交渉することは非常に困難です。また、被害者の連絡先は加害者や家族にも開示されることはありません。その場合は、物理的にも示談交渉を行うことは不可能です。したがって、多くのケースで、加害者は弁護士に示談交渉を一任します。弁護士が交渉することで、被害者も冷静に話し合いのテーブルにつきやすくなるでしょう。

  2. (2)示談の進め方

    次に弁護士に依頼した場合の示談の進め方を解説します。

    弁護士に、示談交渉を依頼すると弁護士は捜査機関に被害者の連絡先を問い合わせます。捜査機関は、被害者にその旨を伝えた上で、被害者が了承すれば、弁護士は被害者の連絡先を入手できます。被害者が、弁護士に連絡先を通知することを認めた時点で、示談交渉に応じてくれる可能性は高いと考えられます。

    その後弁護士は、被害者と慰謝料の支払いや加害者に求める条件などを被害者と交渉して、示談内容を決めていきます。その際に、前もって加害者の方に、用意できる慰謝料の金額を確認しておきますので、支払い不能な示談金で合意する心配はありません。

    しかし、あまりにも用意できる金額が少なすぎると、被害者が示談に応じてくれない可能性がある点に注意が必要です。

  3. (3)痴漢の示談が成立すると起訴されにくくなる

    問われている容疑が、迷惑行為防止条例違反の場合は、起訴前に示談が完了していれば不起訴になる可能性が高いと考えられます。起訴されても、略式起訴といって1日で手続きが終わり罰金を支払うだけの軽微な処分が下されるケースもあるでしょう。

    強制わいせつ罪に問われている場合は、被害者との示談を成立させて告訴を取り下げてもらえれば、不起訴になるケースもあります。強制わいせつ罪は、「非親告罪」といって、被害者の告訴がなくても起訴できるように改正されましたので、告訴を取り下げたからと言って必ず不起訴になる訳ではありません。しかし、示談の完了が起訴不起訴の判断に大きな影響を与えることは間違いありません。

  4. (4)痴漢の示談金の相場とは?

    次に、痴漢の示談金の相場を解説します。示談金とは、慰謝料などの相手に対する損害賠償金の総額です。痴漢の場合は、怪我をしているなどの被害がないことがほとんどなので、慰謝料=示談金となります。

    迷惑防止条例違反に問われている場合の慰謝料の相場は実際の犯行内容によって大きく異なります。そのため、相場といえる金額はありません。ただし、悪質性が高い場合や、加害者の方の収入が高い場合などは、高額な示談金を請求されることもあるでしょう。

    強制わいせつ罪に問われている場合は、より精神的な損害が大きいと考えられます。したがって、迷惑防止条例違反よりもさらに高額な示談金を用意しておいたほうがよいでしょう。

  5. (5)示談金以外で条件がつけられる場合もある

    痴漢の示談では、示談金の支払い以外に条件をつけられるケースが少なくありません。たとえば「今後総武線を利用しないこと」などの条件です。通勤通学で使わざるを得ない場合は、受け入れられない場合もあるでしょうが、受け入れたほうが示談を成立させやすくなるでしょう。

    示談書には条件を破った場合のペナルティーも盛り込むケースがあります。条件を守らなければさらなる慰謝料を支払わなければならない可能性もあります。

  6. (6)被害者が未成年だった場合

    痴漢の被害者が未成年の場合は、交渉相手は本人ではなく父母などの親権者になります。被害者の親権者は、痴漢への処罰感情が強く、示談交渉に応じにくい傾向にありますので、示談金が高額になることが少なくありません。この場合は、早急に弁護士に依頼して被害者とその両親に対して誠意ある対応を行う必要があります。

3、再犯防止のために

家族が痴漢で逮捕された場合は、示談が成立し不起訴になったとしても安心せずに再犯防止のアフターフォローが必要になります。痴漢は常習性が高い犯罪であり、不起訴処分で終わったからとさらに痴漢行為を重ねてしまう可能性があります。

千葉県の迷惑防止条例では、常習的に痴漢を行っている場合はさらに罪が重くなりますし、2度目に逮捕されれば、不起訴になる可能性は非常に低くなります。

そのため、家族は本人に対して医師などの専門家によるカウンセリングを受けさせるなど、外部の力を借りた再犯防止策を検討したほうがよいでしょう。痴漢などの性衝動が抑えられない方は、病気が隠れている場合もありますので、早めに医師の診察を受けて、対処法を一緒に考えてあげることが大切です。

4、まとめ

今回は、家族が痴漢の疑いをかけられてしまった場合の示談の方法、進め方について紹介しました。痴漢の場合、初期対応を間違ってしまうと被害者側が加害者側の連絡を拒否することもありえます。スムーズな示談のためにも、弁護士に早めに交渉を依頼しましょう。

ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスには刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が在籍しています。迅速に相手と連絡を取り示談交渉をスタートするとともに、適切な弁護活動を行います。痴漢をしてしまった方の身柄を一刻も早く解放するため、日常生活を取り戻すため、まずはご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています