養育費の減額は可能? 減額が認められるケースと減額までの流れ

2022年10月03日
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養育費の減額は可能? 減額が認められるケースと減額までの流れ

千葉市の2020年の婚姻件数は3959件、離婚件数は1438件となっています。

離婚協議や離婚調停で取り決めた養育費の金額は、後に事情変更があった場合、減額が認められる可能性があります。収入が減ったり新しく子どもができたりしたことが原因で養育費の支払いが難しくなった場合には、お早めに弁護士までご相談ください。

本コラムでは、養育費の減額が認められるケースや減額の手続きの流れ、養育費を滞納した場合のリスクなどについて、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が解説します。

1、養育費の減額が認められるケースの例

離婚後に子どもと同居しない親は、子どもと同居している親(親権者)に対して、子どもの生活費などに充てる養育費を支払う義務を負います。
別居している間にも親子関係は存続しており、親は子に対する扶養義務を負うためです(民法第877条第1項)。
また、子に対する扶養義務は、両親が資産や収入などに応じて負担すべきものとされています。

しかし、養育費を取り決めた後で、夫婦の収入バランスなどに変化が生じることもありますその場合には、養育費の減額が認められる可能性があるのです

具体的には、以下のいずれかに該当する場合、養育費の減額が認められる可能性があります。

  1. (1)義務者の収入が減った

    子に対する扶養料である養育費の額は、両親の資産や収入などに応じて負担するのが原則です。そのため、養育費を支払う側(義務者)の収入が減った場合、義務者の負担すべき子の扶養料は減少します。
    したがって、養育費を取り決めた当時よりも義務者の収入が減った際には、養育費の減額を請求できる可能性があるのです。

  2. (2)権利者の収入が増えた

    養育費を受け取る側(権利者)の収入が増えた場合、権利者が負担すべき子の扶養料の金額が増える反面、義務者の負担すべき子の扶養料は相対的に減少します。
    このため、養育費を取り決めた当時よりも権利者の収入が増えた際には、義務者は養育費の減額を請求できる可能性があります。

  3. (3)権利者の再婚相手が、子どもと養子縁組をした

    権利者が再婚しただけでは、再婚相手と子どもの間に親子関係は生じないため、再婚相手が子どもを扶養する義務は発生しません。
    しかし、権利者の再婚相手が子どもと養子縁組をした場合、再婚相手と子どもの間に法律上の親子関係が生じて、再婚相手の扶養義務が発生します。
    この場合、子どもと同居している再婚相手が第一義的な扶養義務を負う一方で、子どもと同居していない義務者の扶養義務は副次的なものに後退します。
    その結果、義務者が負担すべき子どもの扶養料は大幅に減少することになります。

    これにより、権利者の再婚相手が子どもと養子縁組をした際には、義務者は養育費の減額を請求できる可能性が高くなるのです

  4. (4)義務者が再婚して子どもができた

    義務者が再婚して子どもができた場合、義務者は前配偶者との間の子どもに加えて、新しく生まれた子どもも扶養する必要があります。
    子どもの人数が増えれば、義務者がそれぞれの子どもについて負担すべき扶養料の金額も減少します。
    このことを理由として、義務者が再婚して子どもができた際には、義務者は養育費の減額を請求できる可能性があるのです。

2、養育費の減額を求める手続き

養育費の減額を求める手続きには、交渉・調停・審判の三種類となります。

  1. (1)相手と直接減額交渉を行う

    まずは相手に連絡を取り、養育費の減額を求めて、直接の交渉を試みましょう。
    交渉がまとまれば、特に大きな費用をかけることなく、早期に養育費の減額を実現できます。

    相手が養育費の減額に難色を示している場合には、弁護士を代理人として減額交渉を行うことも検討してください

  2. (2)養育費減額調停を申し立てる

    相手との間で養育費減額の交渉がまとまらない場合、次の手段として、家庭裁判所に対して養育費減額調停(養育費減額請求調停)を申し立てることになります。

    養育費減額調停は、家庭裁判所で行われます。
    調停委員が当事者双方の主張を公平に聞き取りながら、合意形成に向けた調整を図ることになります。
    最終的に裁判官が提示する調停案に当事者双方が同意した場合には、調停調書が作成されます。
    調停調書には新たな養育費の金額や支払方法などが記載されますので、その後は、調停調書の内容に従って養育費を支払うことになるのです。

    養育費減額調停のメリットは、中立的な立場にある調停委員が仲介することにより、当事者同士で交渉するよりも冷静な話し合いが期待できる点です。
    相手との直接的な交渉が暗礁に乗り上げてしまった場合には、養育費減額調停の利用を検討しましょう

  3. (3)家庭裁判所の審判により養育費が減額される

    養育費減額調停は、当事者間で新たな養育費の合意が得られなければ不成立となります。
    この場合、家庭裁判所が審判を行って、新たな養育費の金額や支払方法について結論を示します。

    家庭裁判所は、養育費減額調停のなかで提出された資料や、審判手続きに移行した後で提出された資料を精査したうえで、どのような結論を示すべきかを判断します。
    養育費の減額を求める義務者としては、調停手続きの段階から養育費の減額が正当であることを示す根拠資料をそろえて提出することで、裁判所に理解してもらうことが重要になります

    なお、養育費に関する審判に対しては、即時抗告による不服申し立てが認められています(家事事件手続法第186条)。
    即時抗告の期間は、審判の告知を受けた日から2週間です(同法第86条第2項)。

3、養育費の滞納はNG|支払わないと強制執行のおそれあり

養育費の支払いが大変だとしても、相手に無断で滞納してはいけません。
相手から強制執行を申し立てられて、財産を失ってしまうおそれがあるためです

養育費の支払いが困難になった場合は、相手に無断で滞納するのではなく、養育費の減額の実現を目指しましょう。

  1. (1)債務名義を持っていると、すぐに強制執行を申し立て可能

    相手が養育費についての「債務名義」を持っている場合には、すぐにでも強制執行を申し立てられてしまう可能性があります

    債務名義とは、強制執行を申し立てる際に、裁判所に提出する必要がある公文書です。
    具体的には、以下の公文書が債務名義に該当します(民事執行法第22条)。

    • ① 確定判決
    • ② 仮執行宣言付判決
    • ③ 抗告によらなければ不服申し立てができない裁判
      ※民事保全処分の命令(仮差押・仮処分)など、判決以外の決定や命令
    • ④ 仮執行宣言付損害賠償命令
      ※殺人・傷害致死・強制性交等・逮捕監禁・未成年者略取などの罪に関する損害賠償命令
    • ⑤ 仮執行宣言付届出債権支払命令
      ※消費者被害に関する支払命令
    • ⑥ 仮執行宣言付支払督促
    • ⑦ 訴訟費用等の金額を定める裁判所書記官の処分
    • ⑧ 執行証書(強制執行認諾文言付公正証書)
    • ⑨ 確定した執行判決のある外国裁判所の判決
    • ⑩ 確定した執行決定のある仲裁判断
    • ⑪ 確定判決と同一の効力を有するもの
      ※和解調書・調停調書・審判書など


    もし養育費の支払いが公正証書・調停調書・審判書・和解調書・確定判決などによって定められている場合には、債務名義に基づく強制執行のリスクを常に負うことになる点に注意してください。

  2. (2)強制執行により差し押さえられる財産の例

    養育費に関する強制執行が行われた場合、以下のような財産が差し押さえられてしまうおそれがあります。

    • 現金(66万円までは差押禁止)
    • 預貯金
    • 給料債権(手取り額の2分の1または33万円のいずれか少ない金額は差押禁止)
    • 金融商品(株式など)
    • 不動産
    • 自動車
    • 高価な動産(美術品、時計など)


    特に給料債権については、将来発生する養育費の支払いを確保する目的での差し押さえも認められています(民事執行法 第151条の2第1項第4号、第2項)

    これらの財産が差し押さえられると、生活に多大な影響が生じてしまうでしょう。
    したがって、当面は金銭を工面して養育費の滞納を回避しながら、協議・調停・審判を通じた養育費の減額を図ることが重要です。

4、養育費の減額に応じてもらえない場合は弁護士にご相談を

元配偶者が養育費の減額に応じない場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、交渉・調停・審判の手続きを通じて、養育費の減額を早期に実現できるように尽力します。
法的な観点から適正妥当な減額を請求できるほか、相手と顔を合わせる必要もなくなるため、安心して任せられるでしょう。

養育費の支払いが困難となった方や、事情が変更したことを理由に養育費の減額を求めたい方は、まずは弁護士に相談してください

5、まとめ

養育費の金額を一度合意した後でも、事情変更があれば減額を求めることができます。
協議・調停・審判の手続きを通じて、法的な根拠に基づいて請求を行うことで、養育費の減額を早期に実現できる可能性が高まるのです。
もし元配偶者が養育費の減額に難色を示している場合には、弁護士を代理人として減額請求を行うことを検討してください。

ベリーベスト法律事務所は、養育費の取り決めや支払いに関するお悩みの相談を承っております。
養育費に関する問題のほかにも、配偶者や元配偶者との間でトラブルが発生した場合には、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください

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