離婚後に財産分与請求する方法! ポイントや注意点は?
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千葉県内でも離婚するご夫婦が少なくありません。
たとえば千葉市が発表している統計データによると、平成29年に千葉市内で離婚したご夫婦の件数は1564件。もっとも多いのが中央区で358件、次に若葉区の287件、次いで花見川区の259件となっています。
1日にすると、千葉市内だけでも4組以上のご夫婦が離婚している計算です。
一方で婚姻についてみると、平成29年に婚姻した件数が千葉市で4222件となっています。離婚件数は婚姻件数の3分の1を超える状態であり、決して少ない数とはいえないでしょう。
千葉にお住まいの方にとっても、離婚は決して人ごとではありません。
協議離婚の際には、親権や養育費だけ取り決めて財産分与を行わないケースもあります。離婚後に相手による財産隠しが発覚し、財産分与の話し合いをやり直したい方もおられるでしょう。
本記事では、離婚後に財産分与を請求する方法や期限、注意点について、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が解説します。
離婚をした時に財産分与について話し合いをしなかった方はぜひ、参考にしてみてください。
1、離婚後に財産分与を請求できる
離婚時に財産分与を行わなかった場合、離婚後であっても財産分与請求できる可能性があります。
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(1)財産分与とは?
一般的な意味での財産分与は、婚姻時に形成された夫婦共有財産を離婚時に分け合う手続きです。これを「清算的財産分与」といいます。
なお財産分与の種類としては「扶養的財産分与」や「慰謝料的財産分与」もありますが、多くのケースでは夫婦の共有財産を清算するための「清算的財産分与」が問題となるので、この記事では、清算的財産分与を中心に解説します。
婚姻後に購入した不動産や婚姻後に加入した生命保険の解約返戻金相当額、婚姻期間中に貯蓄した預貯金などは、離婚時に財産分与を行って分け合います。ただ、離婚時にきちんと財産分与の話し合いができないケースもあるでしょう。そういった場合、離婚後でも財産分与の請求が可能です。
離婚時に財産分与をしなかった方も諦める必要はありません。 -
(2)離婚後に財産分与できないケース
ただ、以下のように離婚後の財産分与ができないケースもあるので注意しましょう。
● 離婚時に財産分与をしないと決めていた
離婚時に夫婦で話し合い「財産分与は行わない」と取り決めていたら、財産分与請求はできなくなります。
協議離婚の際に作成した離婚協議書に「お互いに一切の債権債務がない」「財産分与請求はしない」などの一文を入れていたら、財産分与請求は難しいでしょう。
ただし相手からだまされた、財産隠しされていた場合などには、そのような清算条項があって財産分与請求できないとは言い切れませんので、検討が必要です。
● 期限を過ぎてしまった
次項で詳しく説明しますが、財産分与請求には期限があります。期限を過ぎると離婚後の財産分与請求はできなくなるので注意しましょう。 -
(3)離婚後の財産分与の期限
離婚後の財産分与請求権は、離婚のときから2年で除斥期間にかかってしまい、権利を失います。
除斥期間は時効と異なり、催告による完成猶予(延長)が認められません。つまり離婚後2年経過する直前に内容証明郵便を送っても時効の完成が猶予されないので、必ず2年以内に請求する必要があります。
2年が経過しそうな場合には、家庭裁判所に財産分与調停を申し立てましょう。期間内に調停を申し立てれば、調停成立時に2年が経過していても財産分与を受けられます。 -
(4)離婚後の財産分与と慰謝料請求の違い
離婚後の財産分与請求は、離婚の慰謝料請求と、離婚にからむ金銭請求であるという点ではよく似ていますが、請求期限や請求方法の点で異なります。
● 請求期限の違い
まず「期限」について違いがあります。
財産分与請求は「離婚の時から2年」経過する前に行わねばなりません。この2年は除斥期間なので内容証明郵便などで請求をしても時効の完成が猶予されません。
これに対し慰謝料の場合は、「離婚後3年以内」であれば請求できます。この3年は「時効」なので、内容証明郵便による請求によって6か月間延長することが可能です。
● 請求方法の違い
次に請求方法についても、財産分与と慰謝料に違いがあります。
どちらもまずは当事者同士で話し合うことが一般的です。
離婚後に財産分与について話し合いで決められない場合、「家庭裁判所」で「財産分与調停」を申し立てなければなりません。
調停での話し合いでも合意できない場合には「審判」になって裁判官が財産分与の方法を決定します。
一方で慰謝料請求の場合、当事者同士で話し合っても解決できなければ「地方裁判所」で「慰謝料請求訴訟」を提起します。訴訟では、当事者の主張内容と提出された証拠にもとづいて、最終的には裁判官が判決を下します。 -
(5)離婚後の財産分与請求方法
離婚後、財産分与を求めたい場合には以下のような流れで進めましょう。
● 相手と話し合う
まずは別れたパートナーへ連絡し、話し合いを開始しましょう。お互いに離婚時の財産を開示し合って清算するための条件を設定します。
● 財産分与契約書を作成する
話し合いの結果、合意ができたら財産分与契約書を作成しましょう。口約束では合意内容が明らかにならず、約束を守ってもらえない可能性もあります。
また財産分与契約書を作成したら、必ず公正証書にしましょう。公正証書があれば、相手が支払いをしないときに預貯金や給料等を差し押さえることができるようになるので、回収の確実性が高まります。
● 財産分与調停を申し立てる
話し合いで合意できなければ、家庭裁判所で「財産分与調停」を申し立てましょう。
管轄は相手の住所地を管轄する家庭裁判所です。管轄の家庭裁判所に対し、「申立書」と離婚時の夫婦の戸籍謄本や夫婦の財産に関する資料を提出して調停の申し立てをしましょう。
費用としては1200円分の収入印紙と連絡用の郵便切手が必要です。
● 財産分与審判で財産分与方法を決めてもらう
調停での話し合いでも合意できない場合には、財産分与審判に移行します。審判になると裁判官が財産分与方法を決定します。
審判書には執行力(強制執行をすることができます)があるので、義務者が支払いなどの義務を果たさない場合には、差し押さえによって回収できる可能性があります。
2、離婚後の財産分与対象資産と割合
離婚後の財産分与の対象は、離婚前の財産分与と同様です。
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(1)財産分与の対象資産
財産分与の対象となる財産は、婚姻期間中に形成された財産(具体的に、財産分与の対象となる財産として、よく以下のような財産が出てきます。)が対象となります。
- 預貯金
- 不動産
- 車
- 保険
- 動産類
- 積立金、出資金
- 退職金(現時点で、退職金の支払いがほぼ確実である場合など)
どちらかの実家から引き継いだ遺産や一方で独身時代から持っていた財産は「特有財産」となり、財産分与の対象になりません。
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(2)分割割合
財産分与の割合は基本的に「夫婦で2分の1ずつ」とします。
一方が専業主婦であったり収入格差があったりしても、基本的に分与割合は変わりません。
ただし夫婦の一方に特殊なスキルがあって著しい高収入を得ている場合などには、分与割合が調整される可能性もあります。
一般的な会社員や自営業者の離婚のケースでは、原則として2分の1ずつに分けるものと考えましょう。
3、離婚後の財産分与のポイント
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(1)2年の除斥期間が適用される
離婚後の財産分与請求には「離婚の時から2年」の除斥期間が適用されます。
もしも2年が経過しそうになったら、早めに財産分与調停を申し立てましょう。2年以内に調停を申し立てれば、調停中に2年が経過しても権利は失われません。
● 財産隠しをされた場合
相手が悪質な財産隠しをした場合であっても離婚後2年を過ぎると、財産分与を請求することができなくなります。
しかし、離婚の際に財産を隠されてしまい、財産分与を請求する機会を失ったケースで、損害賠償請求を認めた裁判例があります。
ただ、こうしたケースは少ないので、相手の財産をできる限り把握し、早めに財産分与を請求することをおすすめします。 -
(2)対象資産の確定・評価は正確に
財産分与請求をするには、対象財産を確定したうえで、その価値を適切に評価しなければなりません。
どういった財産が対象か明らかでなければ話し合いもできず、評価ができなければ2分の1ずつに分け合うことも難しくなります。
自分や相手の手持ち財産を明らかにして正しい財産評価方法をあてはめ、手早く手続きを進めましょう。
4、離婚後に財産分与を請求する場合の注意点
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(1)資料を探しにくい
婚姻中は夫婦が同居しているケースも多く、比較的婚姻期間中に形成された財産に関する資料(預貯金通帳や住宅ローン、自宅の評価に関する書類など)を探しやすいです。しかし離婚後は、相手名義の財産の有無及びその内容を調べることが難しくなることが多くなります。
離婚のときから2年という除斥期間にも注意が必要です。短期間に財産を把握して評価しなければなりません。適切に対応できないと財産分与を受けるのは難しくなる可能性が高くなります。 -
(2)財産隠しのリスクが高まる
婚姻中は、相手が財産を隠しても比較的探し出しやすいものです。
しかし離婚後時間がたつにつれて、相手の生活状況や財産内容を把握するのは困難になるでしょう。離婚後に預金の預け替えや所有物を売買するなどして、財産の形が変わっているケースも少なくありません。
また相手が財産隠しをする可能性も高まります。こちらが積極的に指摘しない限り、相手が自ら財産開示するとは限りません。
このように、離婚後の財産分与請求においては適切に財産開示されず、本来受け取れるだけの財産分与を受けられなくなる確率が高まるので注意が必要です。
5、離婚後の財産分与は弁護士へ相談を
離婚後に財産分与請求するなら、弁護士への依頼を検討しましょう。
調停や審判になれば、裁判所へ申し立て、職権で財産を調査してもらえるケースもあり、財産隠しを防ぎやすくなるでしょう。
また弁護士は、法律的な考え方に沿って財産を適正に評価できます。相手と協議する際にも弁護士が代理人として話し合えば、有利な条件で合意できる可能性も高くなるでしょう。
離婚後の財産分与で不安を感じたら、できるだけ早めに弁護士への相談をおすすめします。
6、まとめ
離婚後も財産分与請求が可能ですが、離婚してから2年という期限がありますので、ある程度早めに進める必要があります。
説明したように、離婚後時間がたつと、相手の財産内容を調査するのも困難になりがちです。
ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスでは、離婚後のトラブルにも積極的に対応しており、これまで数多くの財産分与案件に対応してきました。
千葉エリアで離婚後の財産分与の請求をご検討されている場合には、ぜひ一度ご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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