企業とフランチャイズ契約をする際に気をつけるべきことを弁護士が解説

2020年04月27日
  • 一般企業法務
  • フランチャイズ契約書
企業とフランチャイズ契約をする際に気をつけるべきことを弁護士が解説

平成13年7月5日、千葉地方裁判所は、大手コンビニエンスストアとの間でフランチャイズ契約を締結していた原告が、フランチャイザー本社に対し、情報開示義務違反および指導義務違反などを主張した損害賠償請求事件において、原告の主張を一部容認、一部棄却する判決を下しました。

フランチャイズ事業は、個人や中小企業でも大手の名前やノウハウをもとに、スタートできると昔から人気がある事業形態です。
しかし、しっかりと確認した上で契約しなければ、トラブルが発生する危険性もあります。

そこで、本記事では千葉オフィスの弁護士がフランチャイズ事業の概要や契約を結ぶ前に確認しておくべきことなどを丁寧に解説します。

1、フランチャイズ事業とは?

フランチャイズ事業とは、フランチャイザーと呼ばれる「本部」が、フランチャイジーと呼ばれる加盟者側に、店舗名やブランド、オリジナル商品やノウハウ等を提供するかわりに、加盟者が本部に対して、ロイヤリティーとして、月々契約で定められた方式で算出した金額を支払うシステムです。加盟する際に加盟金を支払う場合もあります。

有名なのはコンビニエンスストアですが、それ以外にも学習塾やファミリーレストラン、焼き鳥店やクリーニング店などさまざまな業態で活用されています。

本部側は加盟金やロイヤリティーが得られ、加盟店は大手の商標や商品開発力を武器に営業できると双方のメリットがある制度です。

しかし、加盟店側が契約時の取り決めによって不利益を被るケースが話題になっています。フランチャイズ契約を結ぶ際はあらかじめ契約内容を細かく精査しておく必要があるのです。

2、フランチャイズ本部が決めておかなければならないこと

次に、フランチャイズ本部(サービス業は除く。以下同じ)があらかじめ決めておかなければならないことを説明します。

フランチャイズ本部側は、中小小売商業振興法及び中小小売商業振興法施行規則に基づき、全部で22の項目について記載された書面を交付し、その記載事項について説明をしなければならないとされています。

フランチャイズ本部が開示を求められている事項のうち、ここでは主な開示項目のみを抜粋して示します。

フランチャイズ本部が開示を求められている主な項目
  • 本部事業者の氏名や住所、従業員数
  • 本部事業者の資本金や出資の総額、主要株主の氏名や名称など
  • 子会社の名称や事業の種類
  • 本部事業者の直近3年分の貸借対照表と損益計算書
  • 直近5年分のフランチャイズ契約に関する訴訟の件数
  • 営業時間や営業日および休業日
  • テリトリー権の有無
  • 契約終了後の秘密保持や競業禁止などの有無
  • ロイヤリティーの計算方法や徴収時期など
  • 商品や原材料などの取引条件
  • 契約期間や更新条件、契約解除について


これらの項目は、どれもフランチャイズ契約後の加盟店側の収支に大きく影響するものです。

必ずすべての項目が開示されているかどうかを確認した上で、納得できるまで説明を受けましょう。

3、契約内容を理解できないまま契約を結んではいけない

契約を結ぶ前に、特に確認しなければならないのが、

  • テリトリー権の有無
  • ロイヤリティーの計算方法
  • 無理な営業時間や営業日数を強いられていないか


などです。

テリトリー権やロイヤリティーの計算方法は、開業後の利益に直結する事項です。
何度でも説明を受けて、理解しなければなりません。


本部側が大手企業だからといって遠慮してしまうと、のちのち「こんなはずではなかった」と不利益を被る危険性があります。

開示事項とともに、本部側が提示する売り上げや業績の予測も実現可能な数字かどうかを客観的に判断しておかなければなりません。

なお、独占禁止法ガイドラインは、サービス業も含め、全てのフランチャイズ・ビジネスを対象としており、フランチャイズ本部が加盟希望者に開示することが望ましい事項等が示されていますので、そちらもご参照ください。

>独占禁止法ガイドライン(公正取引委員会WEBサイト)

4、見逃し厳禁!契約書を確認時に特に気をつけるべきポイント

ここでは、多くトラブルが発生する項目を抜粋し、気をつけるべきことを解説します。

  1. (1)訴訟件数

    フランチャイズ契約について本部側と加盟店側にどのようなトラブルが発生しているかは、前述した開示事項の訴訟件数を確認するとわかります。必ず把握しておきましょう。

    他の加盟店がトラブルになっている項目に重点をおいて契約書を確認すると、契約後に起き得るトラブルを予測できます。

  2. (2)ロイヤリティーの計算方法

    ロイヤリティー(royalty)とは、毎月フランチャイズ本部に支払わねばならない費用です。

    ロイヤリティーには、主に3つの計算方法があります。

    • 粗利分配方式
    • 売上歩合方式
    • 固定額方式


    一概にどの方式がいいのか、判断はできません。

    「売上歩合方式」の場合の注意点
    売り上げから、人件費や仕入れ等を差し引いた「純利益」に対してロイヤリティーが発生する粗利分配方式ではなく、売上高に対してロイヤリティーが発生すると取り決められている売上歩合方式の場合は、売り上げに対して経費等が高くなる「赤字」にもかかわらずロイヤリティーを支払わなければならない事態に陥ることもありえます。
    あらかじめ確認しておきましょう。

  3. (3)テリトリー権の有無

    テリトリー権とは、同じチェーン同士の商圏が保護される権利です。

    同一チェーンで同一商圏に別店舗が出店された場合、既存の店舗の売り上げに大きな影響があります。
    その不利益を回避するための権利がテリトリー権で、あらかじめ決められた範囲内に同一チェーンの店舗が新設されないことが規定されています。

    テリトリー権がない場合は、同一チェーンが近隣にできる可能性があるということです。

  4. (4)契約違反の際のペナルティー

    フランチャイズ契約にはさまざまな事態を想定した規則が定められており、違反すると罰則が科される場合もあります。

    大手企業の場合は法務担当や弁護士によるリーガルチェックが行われておりますが、中には違法な、もしくは違法すれすれの罰則規定を設けている企業もありますので、必ず確認しておきましょう。

  5. (5)中途解約金の有無や金額

    フランチャイズ契約は、必ず契約期間の定めがあり、更新するかどうかを都度判断することになります。

    契約期間が満了する前に規約する場合は、中途解約金を支払う契約が少なくありません。
    開業後さまざまなトラブルが発生して、解約をしなければならない事態を想定して必ず中途解約金の有無と、金額を確認しておきましょう。

5、フランチャイズトラブルを回避するためには契約前に弁護士に相談を

フランチャイズ契約を結ぶ前には、加盟店側も弁護士への相談が必須です。

本部は、細部にわたって本部側に有利な条件で契約書を作成しています。
契約のために本部側は都合のよい説明しかしない可能性があるからです。

フランチャイズ事業において、契約は非常に重要です。締結前に細部にわたって確認しておかなければ、後々大きな不利益を被る危険性があります。

ロイヤリティーの計算方法を理解していなかったばかりに、想定外の赤字経営になったり、規定された営業時間を確保するために加盟店側の負担が大きくなりすぎたりと、「こんなはずではなかった」と後悔することが少なくありません。

本部側が大企業でもそうでなくても、契約書の隅から隅まで確認した上で、納得できない部分はその旨を主張しなければなりませんし、理解できなければ説明を受ける必要があります。

独占禁止法では、本部側が加盟店側に対して、正当な理由なく仕入れ業者や内装業者等を指定することを禁じています。また、仕入れ数量も強制してはならないと定められています。このような点についても、ひとつずつ確認が必要です。

しかし、関連する法律に精通していない加盟店側がすべてを把握し、問題ないかを理解するのは非常に困難と言えます。

だから、フランチャイズ契約を結ぶ前には必ず弁護士に相談しましょう。
契約書に違法となる部分がないか、不利益が生じるような規約がないかを綿密に確認してもらえます。

相談する弁護士を選ぶ際は、企業法務を取り扱っている事務所、税理士等の専門家が在籍している法律事務所を選ぶとより安心です。
法人設立のアドバイスや、税務面でのアドバイスを受けることもできます。

6、まとめ

フランチャイズ契約は、ニュースで度々取り上げられるように加盟店側に不利になる条項が規定されていることがあります。

把握せずに契約すると本部側とのトラブルに発展する可能性が考えられます。
万が一、裁判になれば数年にわたり争うことになりかねません。

契約前には必ず弁護士に相談すること、そして開業後もさまざまな事態を想定して、弁護士と連携をとっておくとよいでしょう。

ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスではフランチャイズ契約に関する相談を受け付けていますので、まずはご連絡ください。
ベリーベストグループには税理士も在籍していますので、各方面から適切なアドバイスが可能です。開業後のトラブル防止、対策を検討している方のために、リーズナブルな顧問弁護士契約プランも用意しています。

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  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています