解雇予告後の有給消化は可能? 消化できないときはどうなるのか
- 不当解雇・退職勧奨
- 解雇
- 有給消化
突然、会社から「来月末をもって解雇する」などの解雇の予告があった場合には、それを受け入れるとしても、有給を消化してから退職したいと思う方が大半ではないでしょうか。
本コラムでわかることは、大きく以下の3つです。
・会社から解雇予告を受けたときに確認すべきこと
・解雇日までに有給を消化することは認められるのか
・有給消化したら解雇予告手当はもらえるのか
会社から解雇予告を受け、有給消化について不安や疑問を抱えている方に向けて、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が詳しく解説します。
1、会社から解雇予告を受けたときに確認すべきこととは
会社から解雇予告を受けたときには、労働者は、解雇を受け入れるのかどうかを決めるためにも、次のような事項について確認する必要があります。
-
(1)解雇の内容・理由を確認
解雇には、「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」の3種類の内容があります
「懲戒解雇」は制裁としての解雇であり、「整理解雇」は会社に人員削減の必要性があるときになされる解雇の種類で、これらは厳しい要件のもとでしか認められません。
「普通解雇」は、「懲戒解雇」「整理解雇」以外の解雇といえますが、労働者側の能力不足や就業規則違反などによりなされる解雇です。
解雇の告知や解雇通知書を受け取った場合には、どの種類の解雇なのかを確認する必要があります。そして、「不当解雇」にあたるかどうか判断するためにも、解雇の理由についても併せて確認しましょう。
解雇通知書に解雇理由の記載がない場合、労働者には会社に「解雇理由証明書」の交付を求める権利が認められています。 -
(2)不当解雇にあたらないかを確認
労働契約法には、“客観的に合理的な理由があり社会通念上相当”といえない解雇は、権利濫用として無効になることが定められています。
そのため労働者側の能力不足や就業規則違反などの債務不履行を理由とする解雇であっても、権利濫用にあたるのであれば、不当解雇として解雇の有効性を争うことができます。
会社から解雇予告を受けたときには、解雇理由から不当解雇にあたらないかを確認して、解雇を受け入れるかどうかを判断する必要があるといえるでしょう。 -
(3)解雇予告手当の有無を確認
労働基準法では、解雇するときには、解雇日の30日前までに解雇予告が必要であることを規定しています。そして、もし解雇日まで30日に満たないときには、会社は労働者に対して、その分の解雇予告手当の支払わなければならないとしています。
たとえば、解雇を告げた日を解雇日とする「即日解雇」であれば、30日分の解雇予告手当の支払いが必要になります。また、解雇日まで10日しかない時点で解雇予告したのであれば、30日に満たない部分の20日分の解雇予告手当の支払いが必要になります。
そのため解雇予告手当が必要なケースでは、その点についても解雇通知書などで確認しましょう。
2、解雇日までに有給消化は認められる?
たとえば解雇予告された従業員に10日間の有給休暇が残っていた場合には、解雇日までに有給を消化することは認められるのでしょうか。
-
(1)有給消化は基本的に認められる
解雇対象の労働者が有給の取得を請求すれば、基本的に会社は拒否することはできません。
月初に「今月末で解雇する」と解雇予告された場合などには、20日ごろまでは出勤して、そこから月末までの10日間は有給消化にあてるなどといったことができます。 -
(2)即日解雇であれば有給消化できない
解雇される労働者は有給消化できるのが基本ですが、例外的に有給消化が認められない場合があります。それは、即日解雇される場合です。
たとえば会社から「今日をもって解雇とする」と言われた場合には、即日解雇にあたります。
会社としては、原則として30日分の解雇予告手当の支払いは必要になりますが、即日解雇することも可能とされています。
即日解雇であれば、その日のうちに雇用契約が終了することになり、労働者は、雇用契約に基づいている有給を取得する権利も失うことになります。したがって即日解雇の場合には、有給消化はできないことになります。
なお消化できなかった有給については、会社に買い取りを請求することもひとつの選択肢になります。有給の買い取りは会社の義務ではないことを踏まえつつ、買い取りの可否やその金額を話し合いましょう。
3、有給消化したら解雇予告手当はもらえない?
解雇日までに有給を消化できる場合に、解雇予告手当はその分もらえなくなってしまうのでしょうか?結論からいえば、予告された解雇日までに有給消化しても解雇予告手当はもらえます。
有給消化と解雇予告手当の関係は、双方に影響しないものであるためです。
たとえば解雇日より20日前に解雇予告があった場合には、30日に満たない部分(10日分)の解雇予告手当が支給されます。
この場合、労働者が有給を使い切るため、解雇日までに有給を5日間取得した場合には、勤務した15日間と有給の5日間についての賃金と10日分の解雇予告手当が支給されます。
一方、有給消化せずに解雇日までの20日間出勤したとしても、10日分の解雇予告手当が支給されることに変わりはありません。
つまり、有給の取得の有無は、解雇まで日数を確保できなかったことへの補償である解雇予告手当に何ら影響を与えないのです。
4、不当解雇などの労働問題は弁護士に相談を
「会社から解雇を言い渡されたが不当解雇ではないか」、「解雇は受け入れるが、これまで未払いになっている残業代を請求したい」、「退職金がもらえるはずなのに支払われない」。
このような労働問題でお悩みの方は、弁護士に相談することがおすすめです。
-
(1)弁護士に会社との交渉を任せられる
労働トラブルにおいては、労働者個人が会社という組織を相手に交渉することは難しいという問題があります。個人で交渉しようしても、相手にしてもらえなかったり、会社の法務部や顧問弁護士などが対応すれば言い負かされてしまったりすることも考えられます。
しかし弁護士に相談すれば、弁護士がご相談者の代理人として会社と交渉するので、個人で交渉するよりも会社側の真摯(しんし)な対応がのぞめます。
また弁護士に会社との交渉を任せられることによって、ご相談者の精神的な負担や手間を大きく軽減できる可能性も高くなります。 -
(2)労働審判や裁判になったときでも安心できる
労働トラブルでは、当事者同士の話し合いがうまくいかない場合、裁判所の労働審判や労働裁判で解決を図ることができます。労働審判や裁判で有利な結論を得るためには、裁判所に対する適切な主張や立証が重要となります。
弁護士は、どのようなタイミングで主張・立証をすれば裁判所に認められやすいのか対応経験により熟知しており、裁判所の手続きにおいても安心して任せられます。
なお裁判所の審議において証拠の存在が非常に重要になりますが、弁護士は証拠の収集についてもアドバイスできるので、有利に進めていく可能性が高くなります。 -
(3)早期解決を図れる可能性がある
「弁護士は裁判になったときに相談するもの」などと、誤解している方も少なくありません。
しかしトラブルの早期の段階から弁護士へ依頼すれば、弁護士が相手と対応し、当事者同士で話し合うよりもスムーズに進む可能性が高くなります。
弁護士は、法的根拠や裁判になったときの見込みを示して交渉できるので、相手も大ごとになる前に解決の姿勢となることが期待できます。
5、まとめ
解雇日まで日がある場合には、有給消化を申し出れば、基本的に会社は拒むことはできません。ただし「即日解雇」の場合は、雇用契約の終了と同時に有給を取得する権利も消滅するため有給消化できなくなるので注意が必要です。
なお予告された解雇日までに有給を消化したからといって、解雇予告手当が減ることはありません。
ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスでは、弁護士が不当解雇や残業代請求などの労働問題を解決できるよう全力でサポートしています。
お一人で悩むことなく、ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています