未払いの残業代を計算する時に知っておきたい3つのことについて千葉の弁護士が解説

2018年11月09日
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未払いの残業代を計算する時に知っておきたい3つのことについて千葉の弁護士が解説

千葉県の統計によると、千葉県は第三次産業に従事する事業所の割合が83%とかなり高い数値を示しており、サービス業をはじめとする第三次産業がさかんであることがわかります。(※)しかし近年、サービス業界では人手不足による過重労働が社会問題になっていることも事実です。

サービス業では、残業代が未払いのまま働かされているケースもあると聞きますが、未払いの残業代を請求する場合、残業代をどのように計算すればよいのでしょうか。本記事では、残業時間の考え方や残業代の計算方法について解説します。

1、残業時間の考え方

  1. (1)法定労働時間と所定労働時間

    労働基準法では、労働時間の上限は1日8時間・週40時間と定められています。これを「法定労働時間」と言います。使用者は、この範囲内で個々の労働者が働く時間である「所定労働時間」を設定することができるのです。

    原則として、実労働時間が法定労働時間を超えることは禁止されています。使用者と労働者の間で36協定と呼ばれる労使協定を結んだ場合のみ、使用者は例外的に法定労働時間を超えて労働者を働かせることが可能です。

  2. (2)法定内残業と法定外残業(時間外労働)

    残業には、「法定内残業」と「法定外残業(時間外労働)」があります。法定内残業とは、所定労働時間を超えて法定労働時間まで働くことを指します。一方、法定外残業(時間外労働)とは、法定労働時間を超えて働くことを言います。

    例えば、所定労働時間が9:00~17:00(休憩1時間)と定められている会社のケースで考えてみましょう。この会社で9:00~19:00まで働いた場合、17:00~18:00の間は法定内残業、18:00~19:00の間は法定外残業となります。

  3. (3)残業時間を計算する前に基礎賃金を算定する

    残業時間を計算する前に、まずは「基礎賃金」の算定が必要です。基礎賃金とは、「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額」をさします。
    以下の手当は、基礎賃金には含まれません。

    • 家族手当
    • 通勤手当
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住宅手当
    • 臨時に支払われた賃金・ボーナス

2、残業代の計算方法

  1. (1)一般的な残業代の計算方法

    法定内残業をしたときと法定外残業をしたときで、残業代の計算方法は異なります。

    法定内残業の場合は、働いた時間分の基礎賃金が支払われることになります。一方、法定外残業をしたときは、基礎賃金に25%上乗せした割増賃金が支払われます。深夜残業(22:00~翌朝5:00の残業)をした場合は割増率が50%、週に1日ある法定休日に働いた場合は割増率が35%になるのです。

    例えば、所定労働時間が9:00~17:00、時給1000円の会社で9:00~19:00まで働いたとしましょう。この場合の1日当たりの残業代は、以下のような計算方法で算出されます。

    1(時間)×1000(円)+ 1(時間)×1000(円)× 1.25% = 2250(円)

  2. (2)変形労働時間制での残業代の計算方法

    変形労働時間制とは、旅館やホテル、飲食店など、交替制労働を採用したり、時期による繁閑の差が激しい業種において、繁忙期には必要に応じて労働時間を長く、閑散期には労働時間を短くすることで、対象期間全体として労働時間を削減するための制度です。

    変形労働時間制には、①1か月単位の変形労働時間制、②1年単位の変形労働時間制、③1週間単位の変形労働時間制の3種類があります。

    この変形労働時間制の適用要件は、やや複雑で、法律の解釈にもかかわることですので、要件を満たしているかどうか、慎重に検討する必要があります。

    変形労働時間制を採用されている職場で働いている方は、まず弁護士にご相談いただいた方がよろしいのではないでしょうか。

3、こんな時間も残業時間になる

実務上では労働時間と考えられていないようなケースでも、法律上は労働(残業)時間にあたるような場合があります。

  1. (1)着替えの時間

    スーパーや飲食店などでは、会社指定の制服に着替えて業務を行うことが就業規則で決められていることが多々あります。制服に着替えるために会社指定の始業時刻の少し前に出社することになりますが、この着替えの時間も労働時間にあたります。たとえば会社指定の始業時刻前及び同じく終業時刻後の各15分間を着替えの時間にあてているとすれば、合計30分が残業時間となりうるのです。

  2. (2)開店準備や閉店後の片づけ

    サービス業では、開店準備のために品出しをしたり、閉店後にレジの締め作業や後片付けをしたりすることが必要です。こうした作業も、始業時刻前や終業時刻後に行われていれば、労働時間にあたり残業代が支払われる対象となりえます。

  3. (3)研修や懇親会への参加

    サービス業界では、業務時間外に接客に関する社内研修や施術に関する講習会・勉強会などが開かれるケースも多いことでしょう。また、研修や講習会の後は参加者同士の親睦を深めるために懇親会が設定されていることもあります。

    これら研修や講習会、懇親会が会社から参加を義務付けられているものであれば、これらに参加している時間も労働時間にあたるとして、残業代を受け取れる可能性があるのです。

  4. (4)始業前の清掃・朝礼

    始業時刻前に、従業員全員が社内の清掃や朝礼へ参加しなければならない会社も多いのではないでしょうか。この場合も、清掃や朝礼への参加が会社から義務付けられているものであれば、労働時間にあたるとして残業代の支払い対象となりえます。

4、まとめ

サービス業はその特性として就業規則上の始業時刻に始まり就業時刻に終わることがもっとも難しい業界ではないでしょうか。なぜなら、準備や後片付け、着替えの時間も必要になるほか、お客様やクライアントへのイレギュラーな対応を迫られることも往々にしてあるからです。しかし、残業をしたからと言って、必ずしも働いた分の残業代をもらえるとは限らないこともあります。

「勤務先で残業代が未払いになっている」などとお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスまでご相談ください。当事務所の弁護士がお客様から事情をお伺いし、残業したことを示す証拠の収集についてアドバイスをいたします。証拠が入手できれば、弁護士が受け取れるであろう残業代を計算し、未払い残業代を取り戻すべく会社側と交渉いたします。

働いた分の残業代を受け取ることは労働者にとって正当な権利です。未払い残業代の請求を行うときにはベリーベスト法律事務所 千葉オフィスが全面的にサポートいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

(※)千葉県「2.県民経済計算等」『データで見る千葉県の商工業』

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