内容証明郵便で残業代請求する際のコツは?書き方について千葉オフィスの弁護士が解説

2018年11月30日
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内容証明郵便で残業代請求する際のコツは?書き方について千葉オフィスの弁護士が解説

平成26年の経済センサス基礎調査によれば、千葉県内のサービス産業の事業所数は、全産業の53.4%もの割合を占めているそうです。つまり、全産業の事業所の半分以上が何らかのサービス業の事業所となっていることがわかります(※)。しかし、サービス業界は人材不足による長時間労働が問題となっているため、サービス業に従事されている方の中には、残業代が未払いのまま働いている方も多いのではないでしょうか。

会社側と残業代請求に関する交渉を行うときに必要となるのが、内容証明です。そこで今回は、内容証明の書き方や注意点についてお伝えします。

1、残業代請求における内容証明とは

未払い残業代請求を会社に請求するときは、まず「内容証明」と呼ばれる文書を相手方に送ります。この「内容証明」とはどのような手紙なのでしょうか。なぜ、交渉を行うときに内容証明が必要になるのでしょうか。

  1. (1)内容証明とは

    内容証明郵便とは、郵便物に「内容証明」というオプションを付けたもので、一般的に、普通郵便の場合は封書やはがきの内容を郵便局が感知することはありません。一方、内容証明は、いつ・誰が・誰宛に・どのような内容の文書を送ったのかを、日本郵便が証明してくれるものです。そのため、内容証明は高い証拠能力を持つと考えられています。

  2. (2)内容証明にはどのような効力があるのか

    どのような請求権にも、「時効」が存在しています。その時効を中断するためには、提訴したり労働審判を申し立てたりするなどの裁判上の請求が必要です。しかし、裁判上の請求をしようとすれば、証拠資料をそろえて書類を作成するなどの準備をしなければならず、時間がかかります。

    そこで、内容証明を相手方に送れば、相手方に「催告」をしたことになり、時効の進行を6か月間止めることが可能です。時効成立まで間がないときは、まずは内容証明を送っておくとよいでしょう。

  3. (3)残業代請求に内容証明がなぜ必要なのか

    残業代請求に内容証明が必要なのは、「言った・言わない」のトラブルを避けるためです。内容証明は第三者が文書の内容を証明してくれるものなので、相手方から「未払い残業代請求などされていない」と主張されることを防止することができます。

    また、内容証明を送ることで、相手方に心理的なプレッシャーを与える効果もあります。弁護士の名前を使って送れば、こちら側が本気で残業代請求をしようとしていることを伝えることも可能なのです。

2、内容証明の書き方

内容証明には形式や記載内容に厳格なルールがあり、そのルールをすべて守って作成しなければなりません。ここでは、内容証明の具体的な書き方について解説します。

  1. (1)内容証明を作成するときのルール

    ①行数・文字数
    内容証明では、用紙1枚あたりに書ける行数と1行当たりに書ける文字数が決まっており、以下の文字数・行数におさめることが必要です。

    <縦書きの場合>
    1行20字以内、1枚26行以内
    1枚あたり520文字以内


    <横書きの場合>
    • 1行20字以内、1枚26行以内
    • 1行13字以内、1枚40行以内
    • 1行26字以内、1枚20行以内  のいずれか
    1枚あたり520文字以内


    ②使用できる文字
    内容証明に使用できる文字・記号は以下のもののみとなります。

    • 仮名
    • 漢字
    • 数字
    • 英字(固有名詞に限る)
    • 括弧
    • 句読点
    • その他一般に記号として使用されるもの


    ③文字数の数え方
    内容証明の文字数の数え方には、以下のようないくつか細かいルールがあります。

    • 記号は1個1文字とする 例:%(1字)、㎡(2文字)
    • ●や□で囲んだ文字は2文字とする 例:①(2文字)
    • カッコはセットで1文字 例:(税込)(3文字)
    • ただし、()を使って序列を表す記号として使用する場合は、全部で1文字 例:(1)(1文字)


    ④タイトル
    タイトルには特に決まったルールはありませんが、相手に何を伝えたいのかが一目でわかるようなものが良いでしょう。
    例:「未払い残業代請求書」「契約解除通知書」「債権譲渡通知書」など

  2. (2)内容証明に記載する内容とは

    内容証明に記載する内容にも、特に決まったルールはありません。
    おおむね以下のような要素が入っていれば良いでしょう。

    1. ①タイトル
    2. ②入社日・退社日(退社していない場合は、「現在も在職中の者です」などと記載)
    3. ③未払い残業代を請求したい期間
    4. ④請求金額(未払い残業代と遅延損害金の合計金額を明記)
    5. ⑤支払方法(銀行名や口座番号など)
    6. ⑥支払期限
    7. ⑦期日までに支払われなかった場合の対応
    8. ⑧差し出す日の日付
    9. ⑨相手方の名称(企業名)・所在地・代表取締役名
    10. ⑩差出人の住所・氏名
  3. (3)内容証明を送付する際に注意すべきこと

    内容証明を送付する際には、注意すべきことがあります。スムーズに送付を終えるためにも、内容証明を作成する前にこれらの注意点をおさえておきましょう。

    ①3部準備する
    内容証明は、相手方への送付用、郵便局の保存用、差出人の保存用の3部必要です。パソコンで作成する場合は3部プリントアウトすれば問題ありませんが、手書きで作成する場合は、複写式の用紙を使うことをおすすめします。

    ②封筒には封をしない
    郵便局で内容証明を差し出す際には、ルールに則って作成されているかどうかを郵便局がチェックします。そのため、封筒には封をせずに持っていくようにしましょう。

    ③配達証明を必ずつける
    内容証明がきちんと相手方に届いたことを証明するために、配達証明をつけます。内容証明だけでは、相手方に届いたかどうかを証明することができず、相手方から「そんなものは届いていない」と言われる可能性もあります。配達証明をつけておけば、相手方に内容証明が届いたことの証拠になるので、必ず内容証明の送付時に郵便局に申し出るようにしましょう。

    ④内容証明を扱っている郵便局を確認する
    内容証明はすべての郵便局で扱っているわけではありません。内容証明の扱いがあるのは、本局のような集配を行う郵便局だけです。そのため、自分が行こうとしている郵便局で内容証明が出せるかどうか、事前に確認が必要です。

    近くに内容証明を扱う郵便局がない場合は、インターネットで内容証明を送付することのできる「電子内容証明サービス(e内容証明)」の利用も検討してみましょう。

3、まとめ

内容証明は、法的拘束力はないものの、時効の進行を一時的に止めて時効の完成を遅らせる効果があるものです。しかし、形式上厳格なルールに則って作成しなければならないため、一般の方には少々骨が折れる作業になるかもしれません。

未払い残業代請求のために内容証明を作成する際は、一度ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスまで事前に相談されることをおすすめします。内容証明の作成経験が豊富な弁護士が、ご相談に乗らせていただきます。もちろん、未払い残業代請求をご依頼いただければ、弁護士が内容証明をお客様に代わって作成いたしますし、会社側との交渉もお任せいただくことができるので、一石二鳥です。

未払い残業代請求の問題を有利に解決するためにも、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士にお気軽にご相談ください。

※:千葉県「2. サービス産業」『データで見る千葉県の商工業』(PDF:215KB)

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