残業代請求の時効は2年!時効が成立する前に知っておきたい中断させる方法について
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千葉県は温暖な気候のため農林水産業が盛んである一方、首都圏に近いことから幕張新都心を中心に商工業も栄えているところです。そんな中でサービス業界も発展を遂げてきましたが、サービス業界で働く方の中には、人手不足により長時間のサービス残業を強いられているケースも多いと思います。
残業代の未払が発生していても、解雇などの不利益をおそれて請求をためらっている方も少なくありません。しかし、未払残業代はいつまでもできるわけではないので、できる限りすみやかに請求を行うことが必要です。今回は、残業代請求権に時効はあるのか、時効の進行を止めたり、時効を中断したりするにはどのような方法があるのかについて、解説していきます。
1、残業代請求権にも時効がある
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(1)残業代請求権の時効は2年
ある権利を一定期間行使しなかった場合に、その権利を失わせる制度のことを「消滅時効」といいます。残業代をはじめとする賃金請求権の場合、消滅時効は労働基準法115条により、2年とされています。
例えば給与が月末締め翌月20日払の場合、2016年5月に行った残業の残業代は同年6月20日に請求が可能となります。したがって、この月の残業代はその翌日から数えて2年を経過した時点で消滅時効が到来するのです。なお、残業代は月ごとの残業時間に応じて毎月発生するので、消滅時効の完成も毎月到来することになります。 -
(2)時効を過ぎても残業代請求ができるケース
原則として、残業代請求権の時効は2年ではありますが、例外的に時効を過ぎても残業代請求ができるケースがあります。
■勤怠管理を怠るなど不法行為があった場合
過去に、勤怠管理を怠っていたこと等が不法行為にあたり、不法行為に基づく損害賠償請求権の時効期間である3年を前提に未払時間外勤務手当相当分の支払が命じられたケースがあります。この裁判では、会社が長年従業員の勤怠管理を行っておらず、労働時間の把握を怠ってきていたこと等から、単なる未払残業代請求事件ではなく、不法行為に基づく損害賠償請求事件の観点から裁判所に判断されました。そのため、不法行為に基づく損害賠償の時効期間である3年を前提に判断されることになったのです(杉本商事事件、広島高判平成19.9.4労判952号33頁)。
■時効の援用をしなかった場合
消滅時効は、時効期間が過ぎれば自動的に成立するものではありません。時効期間が過ぎ、なおかつ債務者(未払残業代請求の場合は会社側)が、時効期間の2年間が経過していることを労働審判ないし訴訟において主張しなければ時効は成立しないのです。これを「時効の援用」といいます。
したがって、残業代が未払になっている場合は、本来支払われるはずだった給料日から2年が経過しても、会社側が時効を援用しなければ、未払残業代を請求できることになります。このケースに当てはまることはほぼないかもしれませんが、覚えておくと良いでしょう。
2、時効の進行を止める・時効を中断させる方法
未払残業代を請求しようと思っても、不利益を恐れて躊躇してしまうと、あっという間に時効の成立時期を迎えてしまいます。しかし、時効を中断させることで、時効の成立を妨げる方法があります。
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(1)内容証明を会社に送る
時効の進行を暫定的にストップさせるための手段として用いられるのが、内容証明郵便で会社に対して未払残業代を請求することです。内容証明郵便とは、いつ誰にどのような内容の文書を送ったのかを日本郵便株式会社が証明してくれるものです。時効を中断させるには、労働審判を申し立てることや訴訟を提起することなどによって請求することが必要ですが、労働審判や訴訟を行うためには念入りに準備をしなければならず、時間がかかります。そのため、暫定的に時効の成立を妨げるために、内容証明郵便によって会社へ請求を行い、「催告」をしておけば、6か月間消滅時効の完成を妨げることができるのです。
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(2)労働審判を申し立てる
時効を中断させる方法に、労働審判の申し立てがあります。労働審判は残業代請求などの労働問題を解決する手段のひとつで、3回の審理で結審するため迅速な解決が見込めます。労働審判は短期で決着がつく分、審理もスピーディーに進むので、申し立てる際には周到に準備をしておく必要があるでしょう。
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(3)民事訴訟を起こす
時効を中断させるために、訴訟を提起する方法もあります。先に労働審判を行い、その結果当事者のどちらかが異議の申し立てを行った場合は、自動的に民事訴訟に移行します。
訴訟は労働審判よりも審理期間が長くなるのが通常ですので、決着がつくまでに最低でも半年~1年かかることを覚悟しておいた方がよいでしょう。ただし、訴訟の途中で裁判所から和解勧告があり、和解が成立することもよくあります。
3、残業代請求を弁護士に依頼したら何をしてくれる?
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(1)会社との交渉では
残業代請求の依頼を受けると、弁護士はまず会社側に内容証明郵便を送ったうえで、会社側と交渉を行います。交渉を行う際は、残業をしていたことや残業時間を示す証拠が必要となるため、依頼者に証拠収集のアドバイスも行います。証拠が収集できたら、請求できると考えられる残業代を算出し、会社側に支払を求めていきます。
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(2)労働審判では
会社が交渉や支払に応じない場合、弁護士が裁判所に労働審判の申し立てを行います。労働審判は、審判委員会の仲介のもとで当事者の話し合いで解決が図られるケースも多いですが、最終的には審判が出されます。弁護士は証拠を提示しながら法的根拠に基づいて依頼者の主張を展開し、手続きを有利にすすめるための活動を行います。
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(3)民事訴訟では
交渉でも、労働審判でも解決に至らなかった場合には、民事裁判(訴訟)によって争うことになります。訴訟でも、弁護士は、依頼者が残業をした事実や時間、請求できる金額について、証拠に基づく事実や法律論を主張・立証し、依頼者側に有利な判決を引き出せるように尽力します。
4、まとめ
未払残業代が請求できる期間には限りがあることから、迅速に証拠収集を行い、請求を行うことが不可欠です。
ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスでは、未払残業代請求にお悩みの方をサポートしております。未払残業代請求をご依頼いただいたときに、時効まであまり時間がないと弁護士が判断した場合、ただちに内容証明郵便を会社に送付するなどの対応をいたします。
その後、会社側と交渉を行いますが、交渉が決裂したり相手方が交渉に応じない場合は、労働審判や民事訴訟などの法的措置も行います。弁護士がお客様と相談しながら、問題が解決するまでお客様に伴走してまいりますので、ご安心いただけると思います。
会社に対して未払残業代の請求をご検討の場合は、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスまでご来所の上、ご相談ください。
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