残業代請求に必要な証拠は? 証拠となるもの・ならないもの
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1989年の幕張メッセ完成後、名実ともに国際コンベンション都市となった千葉市。その後幕張周辺では次々とアミューズメント施設や商業施設がオープンし、幕張新都心が誕生しました。県内では千葉市を中心にサービス業界の店舗が多数展開されていますが、サービス業界で働く方々の中には、人手不足により長時間のサービス残業を強いられている方も多いのではないでしょうか。
未払い残業代を会社に請求するときは、残業していた事実や時間を示す証拠を集めることが重要です。そこで今回は、未払い残業代を会社に請求するときに必要な証拠について解説していきます。
1、残業代が発生していることを示す証拠を集める際の注意点
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(1)会社にばれないように集める
残業代の支払いを労働者に求められることは、会社側にとって好ましいことではありません。そのため、証拠集めを行っていることが発覚すれば、上司との関係が悪くなり、職場で不利な扱いを受けるおそれがあります。そればかりか、何らかの方法で証拠集めを妨害され、残業代請求自体がままならなくなる可能性もあるでしょう。
したがって、信頼できる上司であっても残業代請求のための証拠集めをしていることは、極力明かさず行う必要があります。ただ、自分で集められる証拠を確保した後、自分の力だけでは集められない証拠があると思われるときは、仲間に相談するのもよいでしょう。 -
(2)証拠は「質」だけでなく「量」も重視する
残業をしていたことを示す証拠としてもっとも有力なものはタイムカードですが、定時で打刻をした後にそのまま残って仕事をしていた場合、タイムカードの記録は労働の実態に合わないためことになるため、証拠として十分ではありません。
そこで、タイムカードの記録だけに頼らず、証拠になりそうなものは何でもそろえておくことが必要です。「これは証拠にならないかもしれない」と思うものでも、ひとまず確保しておきましょう。残業代を請求するときには、証拠は「質」だけでなく「量」がものをいうこともあります。たとえ質の高い証拠であるタイムカード(労働時間を忠実に表しているもの)があったとしても、それだけで満足せず、タイムカードどおり労働していたことを裏付ける別の証拠もどんどん集めていきましょう。 -
(3)どうしても証拠が見つからない場合
労働基準法上、使用者には個々の労働者の労働時間を適切に管理することが義務付けられています。そのため、残業代請求に使える証拠資料がどうしても見つからない場合は、会社側に証拠開示請求を行うことで証拠資料が入手できる可能性があります。
もし、会社側が証拠を破棄したり改ざんしようとしたりしているような場合には、裁判所で証拠保全手続きを行います。そうすることにより、裁判所に証拠資料を確保してもらうことができます。ただし、厳格な手続きを行う必要があるため、証拠開示請求や証拠保全を利用する際は、まず弁護士に相談するとよいでしょう。
2、残業代請求の証拠
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(1)労働時間を示す証拠になるもの
■タイムカード、IDカードによる入退室記録など
これらはいずれも機械で労働時間や職場にいた時間を記録するものなので、もっとも有力な証拠となるものです。タイムカードであれば自力で写しを入手することができると思いますが、IDカードで勤怠を管理している会社の場合は、会社に証拠開示請求を行う必要も出てきます。
■PCのログイン・ログオフ履歴
最近ではPCを使って仕事をすることが一般的になってきました。そのため、PCのログイン・ログオフの記録があれば、ログインした時間からログオフした時間まで仕事をしていたとの裏付けに利用することができます。
■残業中に送信したメール
残業中に取引先とやり取りをしたり、上司に指示を仰いだり業務報告をした、などのメールは、残業をしていたことを示す証拠になります。送信した時間も履歴として残るので、残業した時間もわかります。会社のアカウントで送ったメールであることが重要です。もちろん、その他のアカウントで送ったものは証拠にならないということではありません。
■同僚や出入りしている業者の証言など
「○○さんが△時より前に帰る姿を見たことがない」「△時に納品に行くと、いつもいるのは○○さんだ」などの証言も有利な証拠となります。証言をしてくれる人数は多いほうがよいでしょう。
■出退勤時間を記したメモ
出退勤時間や、残業時に行っていた仕事内容を書き留めたメモは、十分に残業をしていたことを示す証拠になりえます。ただし、筆跡からまとめて書いた可能性を疑われるようなメモは、信ぴょう性が薄くなる可能性があります。そのため、出退勤時間などのメモを証拠として提出するのであれば、毎日コツコツと記録することが必要です。
■SNSの投稿
SNSへの「今仕事が終わった」などの書き込みは、その時間まで残業をしていたことを示す証拠になる可能性があります。投稿した時間の改ざんはできないと考えられるからです。ただし、毎日残業のことだけを書いていると、かえって証拠として弱くなる可能性もあるので、注意が必要です。 -
(2)労働条件を示す証拠になるもの
■雇用契約書・労働条件通知書など
雇用契約書や労働条件通知書には、就業時間や基本給、時間外手当などの規定が定められています。そのため、これを参照することで何時以降に仕事をしていれば残業になるのか、また残業代がいくらになるのかを計算することが可能です。
■給与明細
残業代を正しく計算するためには、支給された賃金の金額やその性質(●●手当等)を知る必要があります。給与明細を見れば賃金やその性質が確認できるほか、タイムカードなど労働時間を示す証拠資料と突き合わせることで、未払いになっている残業代の有無も調べることができます。
■就業規則
雇用契約書や労働条件通知書などと同様に、就業時間や休憩、休日、給与などの定めが記載されています。そのため、就業規則も、未払い残業代を請求するにあたり、重要な資料といえます。
3、業種や肩書に見るサービス業界の未払い残業代問題と残業代の請求方法
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(1)小売業や飲食業などの場合
小売業や飲食業などでは、終業時間の間際にイレギュラーな顧客対応やクレーム対応をしなければならなくなり、顧客対応やクレーム処理が終わるまで帰れないことがあります。また、制服に着替えたり、閉店後にレジの締め作業や後片付けをしなければならなくなったり、場合によっては商品が納品されるまで業者を待たなければならないこともあります。それらの時間を労働時間とカウントしない会社もあるのでそれらの時間についてしっかり残業代を請求していくことが必要でしょう。
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(2)理容・美容業の場合
美容院でも、開店前に準備や清掃をしたり、閉店後にレジの締め作業や後片付けをしたりする必要があります。また、休憩時間になっても電話番をしたり来客に備えたりしなければならないケースもあります。さらに、理美容室であれば、新人のうちは特にカットやヘッドマッサージなどの施術の練習を終業後に行うこともあるでしょう。これらの時間は、会社の指揮命令下にある可能性が高いため、その分の残業代を請求できないか検討する必要があります。
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(3)「店長」「リーダー」などの肩書がある場合
「店長」や「リーダー」などの肩書を持っている場合は、「管理職」とされて残業代を支払う対象から除外する会社が多く見受けられます。たしかに、労働基準法では、「監督若しくは管理の地位にある者」には残業代の規定の適用外とされています。しかし、ここでいう「監督者」や「管理者」(「管理監督者」と呼ばれます。)は、会社内での地位の呼称によって決まるものではなく、実態に即して判断されます。そのため、「店長」や「リーダー」といった役職であっても、必ずしも残業代を受け取れないとなるわけではありません。この判断は非常に難しいので、自身で判断して諦めるのではなく、専門家に相談することを勧めます。
4、まとめ
サービス業界では、いまだに残業代が十分に支払われていないのが現状です。残業代請求を行うためには証拠が必要になりますが、タイムカードで勤怠管理をしていない会社では、労働時間を示す証拠がなかなか見つからないこともあります。
そのように、残業代請求の証拠がなくてお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所・千葉オフィスへご相談ください。当事務所の弁護士が、タイムカードに代わる証拠資料となるものについてご提案し、証拠収集をお手伝いいたします。正式にご依頼いただければ、あなたに代わって会社との交渉もいたしますので、精神的な負担も軽減されるでしょう。未払い残業代問題を満額に近い金額で解決するために、ベリーベスト法律事務所・千葉オフィスのスタッフ一同、全力でサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
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