残業代請求は退職後でも可能できる? 請求するタイミングを弁護士が解説

2019年01月09日
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残業代請求は退職後でも可能できる? 請求するタイミングを弁護士が解説

つくばエクスプレスが平成17年に開通して以来、千葉県内では乗降客数が年々増えているといわれています。その沿線地域では土地区画整理事業が進められており、今後商業施設なども増えてくると予想されます。

そうなれば、サービス業に従事する方も増えてきますが、昨今ではサービス業界で人手不足による過重労働が社会問題化しています。業務負担が重く、すぐに辞めてしまう方も多いのですが、退職してから残業代請求を行う場合、在職中と比べて請求のしやすさなどに違いはあるのでしょうか。

1、退職後に残業代の請求はできる?できない?

  1. (1)退職後に残業代請求は可能

    未払い残業代の請求ができるのは、在職中に限定されているわけではありません。退職後に残業代請求を行うことは十分可能です。残業代は、「労働者が行った労働」に対する賃金の一種なので、それが未払いの場合、通常の給与と同様に退職前・退職後に関わらず請求することができるのです。

  2. (2)退職後に残業代請求ができるのはいつまで?

    未払い残業代を請求できるのは、その残業代が支払われるはずだった給料日から2年間のみです。使用者側が勤怠管理を怠っていたなどの悪質な場合には例外的に時効が3年となるケースがありますが、基本的に未払い残業代が請求できるのは過去2年分のみと理解しておくとよいでしょう。

2、退職後に残業代請求を行うケースのほうが多いのか

  1. (1)退職後に残業代請求を行うほうが多くなる理由

    消滅時効による請求期限があるにもかかわらず、残業代請求は退職後になされるケースが多いとされています。残業代請求を行うことは労働者にとって正当な権利である一方で、会社側にとっては好ましくない行為でもあります。残業代請求をすれば、会社との関係が悪くなって不利益を被るおそれがあるため、在職中に残業代請求を行うことをためらってしまう方が多いのです。

  2. (2)退職後に残業代請求を行うときの注意点

    退職後に残業代請求を行うほうが不利益を被らずに済みますが、実際には在職中に請求するほうが何かとやりやすいこともあります。やむを得ず退職後に請求する場合には、以下のような点に注意して行うようにしましょう。

    ●退職後は証拠集めをするのが難しい
    法律上、相手方に金銭の支払いなどを請求するときは、請求する側が請求の根拠となる事実を立証しなければならないとされています。したがって、残業代請求を行う際には、労働者側が残業をしていた事実を示す証拠や残業時間を示す証拠を提示しなければなりません。しかし出勤簿など勤怠データは、ほとんど会社が管理していることが多いため、実際に退職後に証拠を入手することは難しいといえます。

    ●時効が成立する前に請求する
    残業代請求ができるのは、支払われるはずだった給料日から2年間のみなので、受け取れる残業代の金額を減らさないためにも、早めに請求することが重要です。時効成立まで時期が迫っている場合には、労働審判や訴訟を申し立てて時効を中断させる、あるいは内容証明郵便を送って時効の進行を止めることが必要になります。

3、残業代請求を行うタイミングは退職前・退職後のどちらがおすすめ?

未払い残業代請求を行うのは、退職前(在職中)と退職後、どちらのほうがよいのでしょうか。どちらにも一長一短があり、一概にどちらがよいとはいえませんが、退職前に請求する場合と退職後に請求する場合のメリット・デメリットをまとめると、以下のようになります。

  1. (1)退職前(在職中)に残業代請求を行うメリットとデメリット

    <メリット>
    ①証拠資料が集めやすい
    在職中であれば、残業代請求にもっとも有力な証拠となるタイムカードやIDカードの入退室記録が入手しやすいといえます。また、パソコンのログイン・ログオフ記録についても、周りに人がいないときを見計らってプリントアウトしたりスマートフォンで写真を撮ったりしておくことをおすすめします。また、就業規則も就業条件が記載されている貴重な証拠資料となるため、可能であればコピーを入手しておきましょう。

    ②消滅時効との関係で、より多くの残業代を請求できる可能性がある
    退職後に残業代請求をする場合、請求するのが遅れると未払い残業代の一部が時効にかかって請求できなくなってしまうおそれがあります。在職中であれば、状況にもよりますが、請求できなくなる金額を少しでも減らすことができる可能性があります。

    <デメリット>
    ①会社や上司との関係が悪化し、不遇を受けるおそれがある。
    ひとりの従業員が会社に未払い残業代を請求すると、周りの従業員も一斉に残業代を請求する可能性があります。そのため、会社側は残業代請求をしてきた従業員に対し、今までのキャリアと全く関係ない部署へ異動させる、突然地方への転勤を命じるなどの不当な扱いをするおそれがあります

  2. (2)退職後に残業代請求を行うメリットとデメリット

    <メリット>
    ①会社や上司との人間関係の悪化をおそれずに請求できる
    退職してしまえば、会社の人間関係のことを気にしなくてよくなります。そのため、強気な姿勢で残業代請求を行うことができるようになるでしょう。

    ②待遇面で不利益を受ける心配がない
    退職すれば、異動や配置転換などをされるおそれもなくなり、待遇のことも気にしなくてよくなります。そういった面でも、退職してからのほうが残業代請求はしやすいといえます。

    <デメリット>
    ①証拠集めが大変になる
    退職後は会社の中に立ち入ることができず、タイムカードなど有力な証拠になりうる資料が入手しにくくなります。また,証拠資料を破棄されたり、隠されたりする可能性もあります。そうすれば、残業をしていたことを示す証拠の入手が難しくなるかもしれません。そのため、会社以外で入手できる証拠を数多く用意して請求を行わなければならなくなる可能性があります。

    ②消滅時効にかかってしまい、受け取れる残業代が減る可能性がある
    退職後だとすでに転職していて新生活が始まり、忙しい毎日を過ごすことになる方もいらっしゃると思います。その場合、未払い残業代を請求するのが遅くなり、未払い残業代の一部が請求できなくなって受け取れる残業代が減る可能性があるので、注意が必要です。

4、まとめ

在職中に残業代請求をすれば、会社から遠方への異動などの報復的措置を受けるおそれがあることから、在職中に請求することをためらう方が多いのが現状です。そのような場合は、退職後に未払い残業代を請求することができます。しかし、もらえるはずの残業代を少しでも減らさないためには、早め早めのアクションが不可欠です。

そのため、退職後に未払い残業代を請求しようとお考えの場合には、なるべく早い段階でベリーベスト法律事務所・千葉オフィスに相談されることをおすすめします。ご相談をいただければ、当事務所の弁護士が状況についてヒアリングを行い、消滅時効にかかりそうなときにはすぐに内容証明郵便を送るなどの必要な措置を講じます。会社との交渉などもお任せいただけるので、自力で行うよりも有利な条件で解決できる可能性も高まるでしょう。

退職後の残業代請求は、在職中よりも証拠収集が難しくなることも考えられます。退職後に残業代請求を行う場合でも、できる限り在職中の間にベリーベスト法律事務所・千葉オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています