相続権がない連れ子に遺産を受け継がせるには?千葉オフィスの弁護士が解説

2019年11月22日
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相続権がない連れ子に遺産を受け継がせるには?千葉オフィスの弁護士が解説

千葉市が発表している統計資料によると、平成29年中に婚姻した夫婦のうち、夫か妻いずれか、もしくは両方が再婚だった夫婦は18%を占めているようです。同じく平成29年中に離婚した夫婦のうち、ひとり以上子どもがいた夫婦はおよそ55%を占めていたことから、子連れ再婚も珍しくはないといえるでしょう。

しかし、子どもを連れて再婚をした場合、再婚した相手の遺産を連れ子の子どもが相続できるのでしょうか? 再婚した当時は気にならなくても、介護やその後の生活を考えるようになり、不安になったという方もおられるでしょう。

結論から言えば、再婚をしただけでは連れ子に相続権は発生しません。そこで本コラムでは、連れ子に相続財産を受け継がせる方法とその注意点を、千葉オフィスの弁護士が解説します。子どもを連れて再婚を考えている方や、再婚相手の相続について不安を抱いている方は、ぜひ参考にしてください。

1、連れ子に相続権はある?

結論からお伝えすると、血のつながりがない連れ子には相続権はありません。

  1. (1)基本的な相続のルール

    まずは、基本のルールを抑えましょう。
    法律上、夫婦のどちらかが亡くなった場合、配偶者とその夫婦の子どもに2分の1ずつ、相続権があります。

    事例:子どもが2人いるケースで、1000万円の遺産を分配する割合
    仮に遺産が1000万円だったとすると、配偶者と子どもが相続する金額はそれぞれ500万円ずつです。もし子どもが複数いるのであれば、2分の1をさらに人数で割って分配することになります。


    • 配偶者 500万円
    • 子ども 500万円(1人あたり250万円)


    つまり、子どもが増えれば増えるほど、子ども1人あたりの金額が減るということです。

  2. (2)連れ子のみの場合

    では、子どもが連れ子のみの場合はどうなるでしょうか。
    たとえば、Aさんが息子のBくんを連れてCさんと再婚した場合、AさんとBくんには血のつながりがありますが、CさんとBくんには血のつながりがありません。


    もしCさんが亡くなれば、配偶者であるAさんには相続権があるので遺産を相続できます。しかし、相続権がないBくんは遺産を相続できないのです。

  3. (3)連れ子+実子がいる場合

    では、子どもの中に連れ子がいた場合はどうなるのでしょうか。
    先ほどの例で登場した、AさんとCさんの場合で考えてみましょう。

    事例:連れ子+実子で、1000万円の遺産を分配する割合
    仮に、再婚したAさんとCさんの間に子ども(D)が生まれていたとします。はたからみれば、DくんはBくんの弟にあたるでしょう。
    しかし、DくんはCさんの子どもですが、BくんとCさんは血縁上でも戸籍上においても親子関係にありません。

    その場合、遺産の額を1000万円と仮定すると、遺産の分配は以下のとおりになります。


    • Aさん 500万円
    • Dくん 500万円


    つまり、Bくんの取り分は1円もないということです。
    では、どうすれば連れ子のBくんにもCさんの相続財産を承継させてあげられるのでしょうか。

2、連れ子に相続財産を受け継がせる方法

連れ子に相続財産を受け継がせる方法は、3つあります。

  1. (1)養子縁組

    連れ子に相続をさせる方法のひとつ目は、養子縁組です。
    子連れ再婚の相続権が心配な方は、まずこの方法を検討することが多いでしょう。

    養子縁組とは、本来なら他人同士である2人を、血のつながりがなくとも法律上の親子として認める制度です。養子縁組を行えば、養子となった子どもが相続権を得るだけでなく、養親となった親には未成年の子の扶養義務が生じます。

    先ほどの例でいえば、BくんとCさんが養子縁組をすることによって、Bくんを扶養する義務がCさんに生じるということです。

    同時に、養子縁組をしていれば、もしAさんとCさんの間にDくんが生まれたとしても、BくんはDくんと平等に相続権が与えられます。

  2. (2)遺言

    ふたつ目は、遺言に残す方法です。

    たとえ相続権がなくても、遺言によって財産を贈与(遺贈)できます。
    先ほどの例でいえば、Cさんが自分の遺言に「全財産のうち、Bに4分の1の割合で遺贈する」といった文言を残すという方法です。

    正式な相続者となれるわけではありませんが、遺言があれば連れ子であっても遺産を受け取れます。ただし、遺言をどのような内容にするかは遺言をする本人にしか決められません。

    たとえば、Cさんに対して「Bにも相続させられるように遺言を書いてほしい」と妻であるAさんが頼んでいたとしても、実際にその内容の遺言をしてもらえるかは、遺言書を開けてみなければわからないということです。

    連れ子に遺産を確実に受け取ってもらいたいと考えるのであれば、ほかの方法を選んだほうが確実かもしれません。

  3. (3)生前贈与

    生前贈与も、連れ子が財産を受け取る方法の1つです。
    生前贈与とは、亡くなる前に財産を贈与することを指します。生前贈与なら、相続権を持たない方でも財産を受け取れます。
    遺言と生前贈与を選択した場合、他の相続人に対する遺留分への配慮も必要になります。

    どの方法を選択するのか、連れ子と再婚相手との関係等をふまえて、ご検討いただくのがよろしいのではないでしょうか。

3、養子縁組の種類

続いて、養子縁組についてもう少し詳しく解説しましょう。
養子縁組には、「普通養子縁組」「特別養子縁組」があります。

  1. (1)普通養子縁組

    子どもの実親との親子関係を継続させたまま、再婚相手とも親子関係をつくるのが、普通養子縁組です。

    たとえば、CさんとBくんが普通養子縁組によって親子関係が生じた場合、Cくんにとって法律上の親が、血縁関係にある父とAさん、そしてCさんの3人に増えることになります。

  2. (2)特別養子縁組

    実親との親子関係をなくしてから再婚相手との親子関係をつくる養子縁組の方法です。

    たとえば、CさんとBくんが特別養子縁組をした場合、Bくんの親はAさんとCさんの2人のみになります。血縁関係にあったCさんの父親とは法律上他人になるということです。

  3. (3)普通養子縁組と特別養子縁組の違い

    さらに、普通養子縁組と特別養子縁組には、制度上の違いもあります。
    具体的な違いについては以下をご確認ください。

    ①戸籍への記載
    普通養子縁組:男子の場合は「養子」、女子の場合は「養女」。
    特別養子縁組:「長男」「長女」と記載されます。

    ②実親の扶養義務
    普通養子縁組:残ります。
    特別養子縁組:残りません。

    ③実親の財産を相続する権利
    普通養子縁組:残ります。
    特別養子縁組:残りません。

    ④養親に対する年齢制限
    普通養子縁組:養親の年齢が20歳に達している、もしくは結婚していること。
    特別養子縁組:養親の年齢が25歳以上であること。(夫婦どちらかが25歳以上なら20歳以上であればよい)

    ⑤養子に対する年齢制限
    普通養子縁組:養親の尊属や、養親よりも年長者を養子にすることはできません。
    特別養子縁組:6歳未満、もしくは6歳未満のときから養親となる者から監護されていた8歳未満の子どもに限られます。

    なお、特別養子縁組を選んだとしても、養親と養子が離縁をすれば実親との親子関係が復活します(民法第817条)。ただし、以下の条件に当てはまり、かつ裁判所が認めなければ離縁はできません。

    ⑥養親による虐待や悪意の遺棄、そのほかに養子の利益を著しく害する事由がある

    ⑦離縁後は実親がしっかり監護できる


    特別養子縁組の場合は、原則離縁が難しいと思っておくべきです。
    どちらの養子縁組を選ぶかは、今だけでなく将来のこともよく考えて選びましょう。

4、養子縁組の注意点

最後に、子連れの再婚で養子縁組をする際の注意点をいくつか紹介します。

  1. (1)養育費をもらえなくなる可能性

    再婚によって養子縁組をすると、子どもに対する扶養義務は第一次的に養親が負うため、元配偶者から養育費を減額されたり、もらえなくなったりする可能性があります。

    先ほどお伝えしたように、普通養子縁組では親子関係が継続するので、実親の扶養義務もそのままです。再婚しても夫婦の収入が増えない場合などは、養育費は継続して受け取ることができます。

    しかし、特別養子縁組をすると扶養義務が消滅するため、養育費はもらえなくなります。

  2. (2)子どもの名字

    再婚によって養子縁組をすると、基本的に、養子となる子どもの名字は養親の名字へ変わります。
    このため、養子縁組をした相手と離婚した場合、夫婦は別姓へ戻りますが、離婚とあわせて養子縁組をした相手と連れ子との離縁をしませんと、養子縁組をした子どもの名字は変わらず、離婚後は実の親子にもかかわらず別姓となってしまう場合があります。

    なお、離縁をしますと、元養親からの養育費をもらえなくなり、また、元養親が亡くなったときの相続権も失うことになります。

5、まとめ

子どもを連れて再婚をした後、再婚相手が亡くなった場合、連れ子に相続財産を取得させる方法について考えたとき、養子縁組、遺言、生前贈与といった方法が選択肢になりうるでしょう。しかし、いずれの方法にもメリットだけでなくデメリットもあります。

しかし、子連れで再婚をした後に配偶者が亡くなった場合、何の準備もしていないと、通常の親子関係であれば、配偶者と子どもに2分の1ずつ分配されるはずの遺産が、亡くなった配偶者の両親や祖父母などへ分配されることになることになります。
それでは、残される家族の生活が不安だという方も多いのではないでしょうか。

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