事実婚の解消で慰謝料請求はできる? 財産分与や養育費についても解説
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千葉県の平成30年の婚姻数は2万8202組と前年より490組減少しています。この数は市役所の各窓口へ届け出があるもので、さまざまな事情などによりそれがなされていない、いわゆる「事実婚」は含まれていません。
新しい夫婦の形として増えつつある事実婚ですが、当然ながら何らかの理由で別れを決意するケースもあります。たとえば、その理由が相手の浮気によるものだった場合はどうなるのでしょうか。事実婚の場合、そもそも慰謝料の請求はできるのでしょうか?
この記事では、事実婚とは何か、また事実婚の場合でも慰謝料の請求や財産分与が可能か、子どもがいる場合に養育費はどうなるのかなどについて解説します。
1、事実婚とは?
事実婚とは、お互い結婚の意志を持ちつつも婚姻届を出さずに夫婦生活を送るという新しい婚姻の形です。従来使われてきた「内縁(内縁関係)」と同じ意味で捉えても差し支えありません。
これに対して、婚姻届を提出して法律上の婚姻関係にあるものが法律婚ですが、事実婚は準婚(婚姻に準じて扱われる男女関係)として扱われるため、夫婦共同生活に関係する法律婚の効果は準用され、同様の義務が発生します。具体的には、次のような義務が共通しています。
- 同居する義務
- 互いに協力して夫婦生活を送る義務
- 夫婦生活を送るために必要な経済的負担をそれぞれの収入に応じて分担する義務
- 離婚の際、財産分与する義務
- 貞操を守る義務
事実婚は婚姻届を提出しないため法律上の婚姻関係が認められません。当然、法律婚とは異なる点、事情によってはデメリットとなる点もありますので、注意が必要です。
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(1)戸籍や姓が変わらない
法律婚では、夫婦は同一の戸籍に入り同じ姓になるものとされていますが、事実婚は婚姻届を提出しないので戸籍も姓も変わりません。また、法律婚の夫婦が離婚すれば戸籍に記載されますが、事実婚の解消については何の記載も残らないということになります。
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(2)相続権が発生しない
法律婚の場合、配偶者は法定相続人とされますが、事実婚では法定相続人になることができません。遺言によってある程度対応できるものの、やはり金銭が絡む問題のため相続トラブルに発展しやすい面もあります。
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(3)配偶者控除や配偶者特別控除が受けられない
事実婚では税法上の扶養という概念が適用されないため、配偶者控除や配偶者特別控除を受けることができません。法律婚の夫婦では、共働きでない限りこの控除を有効に活用していることを考えると、税の負担が増えることはデメリットとも言えるでしょう。
なお、社会保険の被扶養者にすることは可能ですが、事実婚であることを別に証明する必要があります。 -
(4)認知しないと法律上の父子関係が成立しない
法律婚の夫婦間に生まれた子どもは当然その夫婦の戸籍に入りますが、事実婚の夫婦に子どもが生まれた場合には、母親の戸籍に入り同じ姓になります。
これは、生まれた子どもが「婚姻関係にない男女間の子ども」、つまり「非嫡出子」として扱われるためで、法律上の父子関係を成立させるためには父親の認知が必要です。
父親が認知しないと子どもは法定相続人になれないことから、この点も相続トラブルに発展する可能性があります。
2、事実婚で慰謝料の請求はできる?
では、相手の浮気が原因で事実婚の解消に至った場合、慰謝料を請求できるのでしょうか。
前述したように事実婚は法律婚と同様の義務が発生し、そのひとつが貞操義務です。つまり、どちらか一方の浮気が原因で事実婚が解消されたのであれば、慰謝料請求が可能ということになります。
また、正当な理由なく事実婚を解消された場合にも慰謝料の請求は可能で、その判断には法律婚の離婚に関する規定が参考になります。具体的には、次の場合に準じる場合には「正当な理由」が認められると考えられます。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者に悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神障害にかかり回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
上記に準じる場合には正当な理由があるということです。言い換えれば、これらに該当せず、一方的に事実婚を解消された場合には慰謝料請求ができる可能性があります。
3、事実婚での財産分与はどうなる?
法律婚の場合、離婚の際の財産分与について規定がありますが、これは事実婚にも準用されます。事実婚期間中に夫婦で築いた財産は解消時に請求することが可能です。
財産分与の対象となる共有財産とは、その名義に関係なく、事実婚期間中に夫婦の協力によって形成・維持されたものです。具体的には、預貯金や有価証券、不動産、自動車、保険解約返戻金、退職金などがあります。
なお、事実婚前にためた預金や、相続によって取得した不動産など、夫婦の協力とは無関係に取得した財産については、特有財産であるため財産分与の対象とはなりません。
4、子どもがいる場合の養育費は請求できる?
養育費とは、そもそも子どもを育てるための費用で、法律上親が支払うべきものです。そのため、事実婚の場合も請求することは可能ですが、あくまで法律上の親である必要があります。
前述した通り、事実婚の夫婦間に生まれた子どもは、自動的に母親の子どもとなりますが、父親が認知をしないと法律上の父子関係は成立しません。つまり、父親が認知していない場合、養育費を請求することができないのです。
なお、父親が認知したとしても親権は母親にあります。父親が親権を持ちたい場合には、父母の協議又は家庭裁判所の審判により父親を親権者とすることが可能です(民法819条3項、4項)が、父母の共同親権となるわけではありませんので注意してください。
5、事実婚が解消できない場合の対応方法とは?
法律婚の夫婦が離婚するケースと同じように、事実婚の解消についても、当事者同士の話し合いだけではまとまらないことがあるでしょう。そのような場合、内縁関係調整調停というものがあります。
内縁関係解消調停とは、いわゆる事実婚向けの調停で、内縁関係の解消だけでなく財産分与問題などについても話し合うことができます。
なお、内縁関係解消調停を望む場合には家庭裁判所に申し立てを行いますが、調停の際には事実婚であるという事実を認められることが前提です。
その場合、必要書類の準備や事前のアドバイス、調停委員への働きかけなどを弁護士に依頼するというのも選択肢のひとつです。
調停を申し立てずに当事者同士の話し合いを行う場合でも、弁護士が交渉することで有利に話を進められる可能性が高まります。慰謝料の請求や財産分与など、後悔しない事実婚の解消を検討している場合、弁護士に相談してみるのもいいでしょう。
6、まとめ
今回は、相手の浮気が原因で事実婚を解消する場合に慰謝料が請求できるのか、また、財産分与や養育費を請求できるのかについてお伝えしました。
そもそも婚姻届を出していないので、金銭的な請求は難しいと考えてしまうかもしれませんが、事実婚は準婚として扱われます。浮気が発覚した場合などは早く片付けてしまいたい気持ちもあるかもしれませんが、損をしないように慎重に準備を進めていきましょう。
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- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています