「性格の不一致」では慰謝料請求できない!? 離婚で慰謝料請求が可能な離婚理由
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離婚する際、離婚の理由によっては相手に慰謝料を請求できるケースもあります。しかし、離婚理由として多い「性格の不一致」では、相手に慰謝料を請求できないとされています。
性格の不一致で離婚する場合、なぜ相手に慰謝料を請求できないのでしょうか?また、性格の不一致であっても相手に慰謝料を請求できるケースはあるのでしょうか。今回は、離婚理由としても多い「性格の不一致」と慰謝料について解説します。
目次
- 1、慰謝料請求できる代表的なケース
- 2、性格の不一致でも慰謝料の請求が認められるケース
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(1)性格の不一致だけが理由ではなく他の離婚理由が競合している
①結婚後相手の性格が一変した
②相手が全く歩み寄らず、モラハラやDVをするようになった
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(1)性格の不一致だけが理由ではなく他の離婚理由が競合している
- 3、性格の不一致で離婚したい場合の注意点
- 4、まとめ
1、慰謝料請求できる代表的なケース
一般的に、慰謝料を請求するというのは、精神的な苦痛の賠償を相手に対して求められる請求権があることをいいます。そのため、慰謝料を請求するためには、それだけの正当な理由が必要です。
民法770条は、離婚の訴えを起こせる場合を定めています。
離婚する際に、相手に慰謝料を請求できる代表的なケースについてみていきましょう。
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(1)配偶者の不貞行為があった(不倫や浮気)
自分の知らないところで配偶者が不倫や浮気をしていた場合には、離婚原因となるほか、慰謝料の請求が可能です。しかし、不倫や浮気があれば必ずしも慰謝料が請求できるかというと、そうではありません。
慰謝料が請求できるためには、配偶者に不貞行為があったことが必要と考えられています。ですが、不貞行為と浮気や不倫との概念とでは、少しズレが生じることがあるからです。
一般的に不貞行為とは、配偶者以外の人と性行為を行なったこととされています。 ですので、性行為がなく交際していたという場合は、裁判所も慰謝料の認定には慎重になるので注意が必要です。 また、性行為のない交際の場合、慰謝料の額も性行為がある場合より低くなります。 -
(2)暴力をふるわれた(DV・モラハラ・家庭内暴力)
結婚する前は優しかったのに、結婚した途端に暴力を振るい始める人もいます。DVのような肉体的な暴力だけではなく、無視や支配的な振る舞いをするようなモラハラなども、離婚原因の一つです。配偶者から暴力を振るわれたり、モラハラを受けたりした場合は、慰謝料請求の対象となります。
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(3)生活費が支払われない、家に帰ってこない(悪意の遺棄)
悪意の遺棄とは、夫婦としての同居義務や相互扶助義務などを一切果たさずに、配偶者を放置することです。たとえば、結婚しているのに生活費を入れない、家に全く帰らずに別居している、夫が働ける状態なのに全く働かない、日常家事を一切放棄するなどのケースです。
このように配偶者から悪意で遺棄されたときにも、離婚をする正当な理由があるとされ、相手に慰謝料を請求できると考えられています。 -
(4)その他に婚姻を継続し難い重大な理由がある
そのほかに、婚姻生活の継続が難しい重大な理由があるときにも、離婚の正当な理由があり、配偶者に慰謝料の請求が認められる場合があります。
「婚姻を継続し難い重大な理由」というのは、不貞行為や悪意の遺棄などに比べると、とても抽象的で漠然としており、判断が難しいところがありますが、たとえば以下のような場合、慰謝料の請求が認められる可能性が出てきます。
配偶者が同性愛者である・結婚後一切の性行為がない・配偶者の家族や親戚と一切交流をはかろうとしない、過度の借金癖がある場合などです。 -
(5)なぜ性格の不一致で慰謝料請求ができないのか
離婚の際に慰謝料の請求が認められるケースについて解説してまいりました。。しかし、性格の不一致が婚姻を継続し難い重大な理由に入るのかというと、なかなか難しいところがあるようです。
家族や知人でも、どうしても相性が悪い人はいるものです。しかし、だからといって「自分と性格が合わない=相手が一方的に悪い」ということにはなりません。
夫婦間の性格の不一致もこれと同様で、性格が合わないからといって相手を責めることはできません。そのため、慰謝料を請求する正当な理由があるとはいえないの場合が多くなります。
もし、性格の不一致を理由に慰謝料の請求が可能だとしたら、そこには夫婦のどちらかに、それを正当化できるだけの帰責性がある場合です。
2、性格の不一致でも慰謝料の請求が認められるケース
性格の不一致を理由に離婚するときでも、なかには慰謝料の請求が認められるケースもあります。
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(1)性格の不一致だけが理由ではなく他の離婚理由が競合している
性格の不一致は、一方のみが悪いという性質のものではないため、慰謝料の請求は難しいというのが一般的な結論です。しかし、性格の不一致が他の理由と組み合わされることによって、慰謝料の請求ができることもあります。
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①結婚後相手の性格が一変した
結婚する前は優しくて素敵な人だったのに、結婚した途端に手のひらを返したように暴力的になったり、束縛しようとしてきたりする人は残念ながらいます。結婚すると、相手が自分のものになると錯覚してしまう人もなかにはいるようです。
結婚後に相手の性格が一変し、束縛したりプライバシーを侵害したりするようになった場合、その程度によっては慰謝料請求が認められることもあります。 -
②相手が全く歩み寄らず、モラハラやDVをするようになった
結婚して夫婦になると、相互扶助義務や同居義務などいろいろな義務が発生します。そして、義務というほどではないかもしれませんが、元々は他人同士が一緒に暮らして生活をしていくことから、性格の不一致があったとしても、お互いに歩み寄る必要性はあるでしょう。
しかし、配偶者がそういった歩み寄りを見せずに、自分の言うことを相手に聞かせようとしてモラハラやDVに出るような場合には、性格の不一致と合わせて、モラハラやDVを理由に慰謝料が請求できる場合があります。
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①結婚後相手の性格が一変した
3、性格の不一致で離婚したい場合の注意点
配偶者の不倫や、借金癖があるわけではないが、どうしても性格の不一致が耐えられないので離婚したい、ということもあります。性格の不一致で散々嫌な思いをしたから、慰謝料を請求したいと思うこともあるでしょう。
性格の不一致で離婚し、慰謝料を請求したいと考えるときに注意しておきたいポイントをまとめました。
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(1)慰謝料がもらえない可能性があることを念頭に置く
これまで解説してきたとおり、性格の不一致だけが離婚原因であるときには、相手に慰謝料を請求することは非常に困難です。そうなったときに、それでも離婚したいのか、なんとか慰謝料を請求できる方向で働きかけていきたいのか、自分の考えをまとめておくことは重要です
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(2)相手が納得しない場合、長期戦になることがある
性格の不一致を理由に離婚したいと考えたとしても、相手が離婚に同意しないこともあります。
夫婦がお互いに離婚に同意すれば協議離婚が可能ですが、一方が同意しない、または離婚には同意したとしても、条件面で揉めているような場合には、協議離婚が難しいため、調停離婚が行われることになります。さらに調停でも解決が難しいときには、裁判離婚に移ります。
ですが、民法上は、離婚の訴えを起こせる条件は明確に決められています。性格の不一致だけでは、離婚裁判を起こすこと自体が難しいこともありえます。そうすると、実際に離婚に至るまでには長期戦を覚悟しなければならないこともあるでしょう。性格の不一致で離婚を考えている場合、相手の反応によっては、離婚自体に時間がかかる可能性があることを念頭に置いておきましょう。
4、まとめ
性格の不一致で修復が不可能となり、婚姻関係が破綻して離婚に至る夫婦は少なくありません。しかし、性格の不一致で精神的な苦痛を被ったからといって、それだけを理由として相手に慰謝料を請求し、認められることは難しいものです。
しかし、これまで見てきたとおり、性格の不一致が離婚原因だったとしても、慰謝料を請求できるケースもあります。慰謝料を請求することができるかどうかの判断はなかなか自分では難しいものです。判断に迷った時は、離婚案件を数多く扱い、経験と知識が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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