離婚慰謝料の相場は? 請求手続きを有利に進めるには弁護士へ相談!
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2016年の厚生労働省の統計によれば、婚姻が約62万1000件,離婚が約21万7000件となっており,離婚が婚姻の数の3分の1に及んでいるという結果が出ています。どのような夫婦であっても、なにかのきっかけで深刻な離婚問題に直面してしまうことはめずらしくありません。しかしながら、離婚は思った以上に精神的、経済的、時間的な負担が重くのしかかるもの。一体どのように離婚の手続きを進めたらいいのか、誰に相談したらいいのか、慰謝料はどれくらい請求できるのかといった点で、難しい問題がたくさんあります。そこで今回は具体的な慰謝料請求の金額の相場や、どのような場合に離婚できるのか、また手続きや交渉を弁護士に依頼するメリットにはどんなことがあるのか、という点について説明していきます。
1、不倫が原因で離婚する場合の慰謝料請求と相場
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(1)不倫で慰謝料請求できる場合とは?
数ある離婚原因の中でも「性格の不一致」に続いて多いのが、浮気、不倫などの不貞行為によるトラブルです。夫や妻の浮気、不倫によって夫婦関係が破壊されてしまうことは、された側からすると非常にショッキングな出来事です。一度壊れた信頼や絆の修復は難しいため、こうしたトラブルに直面すると具体的に「離婚」の二文字が頭をよぎる方も多いことでしょう。
しかしその一方で、たとえ配偶者や不倫相手に対してかなりの怒りを覚えていたとしても、離婚まではしたくないとお考えの方も多いのが現状です。子どもがいたり、生活費や収入の問題があったりと、それぞれのご夫婦には多種多様な事情があるため、いざ離婚という決断をするには相当勇気がいります。そうした場合には、相手側に対して何も慰謝料請求などができず、自分の心のなかでグッと我慢をしなければならないとお考えの方も多いようです。
しかし、たとえ離婚という選択をしなかった場合でも、不倫や浮気をした配偶者、不倫相手に対して慰謝料請求をすることは可能です。慰謝料請求権は法律上「精神的苦痛」を被った場合に行使できる権利ですから、離婚をしなければ請求できないというわけではありません。ただし離婚をする、しないにかかわらず、慰謝料請求をする場合には浮気行為の具体的な証拠などを集め、相手が言い訳できない状態で交渉する必要があります。 -
(2)不倫が原因の離婚での慰謝料の相場は?
具体的に不倫が原因での慰謝料の相場は、婚姻期間10~20年の夫婦の場合,およそ300万円前後が多いです。婚姻期間が2年程度と短ければ100万円以下になることが多いように思います。ただし,慰謝料は,婚姻期間だけでなく,不貞期間,不貞行為の回数,支払側の資力,有責性の程度,未成年の子の有無等によって判断されますので,一概に婚姻期間だけで決まるわけではありません。状況次第では反対に慰謝料が増える場合もあれば,不貞の時点で夫婦関係がすでに破綻していたので、慰謝料請求自体が認められないという場合もありえます。
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(3)慰謝料金額の具体的な決め方は?
慰謝料金額の決め方は主に2つの方法があります。まず1つ目は当事者同士で話し合って決める方法です。ただ当事者だけの話し合いだと話がこじれるおそれがあるため、その場合は第三者を交えて話し合いの場を設けたほうがいいでしょう。相手側と会えない場合は内容証明郵便による請求方法も可能です。それでも解決しない場合は裁判所を利用した法的手続きへと移行することになります。
もう1つの方法は弁護士に依頼して話し合いや法律上の手続きの一切を任せる方法です。慰謝料請求や離婚による財産分与は法律上の要件や判例にしたがって行われるので、手続きや交渉に専門的な法的知識は欠かせません。このような複雑な手続きを安心して進めたいとお考えの場合には、弁護士に依頼したほうが手間やストレスを大幅に省くことができます。プロによる交渉によってより自分に有利な条件を引き出すことも可能になるでしょう。
2、悪意の遺棄があったときに離婚する場合の慰謝料請求と相場
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(1)悪意の遺棄とは?
「悪意の遺棄」とは、配偶者や家族をほったらかしにして、家族としての責任を放棄することです。民法では夫婦の同居、協力および扶助の義務(民法752条)という規定があり、同じく民法770条にあげられている離婚原因にも、民法770条1項2号に「配偶者から悪意で遺棄されたとき」という条文が明記されています。
「悪意の遺棄」を原因とする訴えの提起はさほど多くはありません。これは別居の背後には不貞行為や暴力などがある場合がほとんどであり,別の理由に基づいて離婚請求していることが原因と考えられます。しかし,「悪意の遺棄」とみなされる行為は立派な離婚の原因とされているのです。
「悪意の遺棄」とは具体的にどんな事例かを挙げていきましょう。具体的には、夫が生活費を入れない、健康なのに仕事をしない、家に戻らない、配偶者を理由もなく追い出す、あるいは家に入れない、専業主婦なのに妻が家事を放棄している、といった行為のことを指します。子供の教育上の理由や単身赴任、病気療養やドメスティックバイオレンス(DV)を避けるための別居など、なにか正当な理由があって別居しているといった場合は、悪意の遺棄には当たりません。 -
(2)悪意の遺棄が原因の離婚での慰謝料の相場は?
「悪意の遺棄」が原因の離婚手続きにおいて慰謝料を請求する場合には、その金額は悪意の遺棄が行われた期間がどの程度あったかによって変わってきます。悪意の遺棄が行われたと認められた期間が長く、子どもの養育にかかる費用などを一切負担しなかった場合、それらの事情を含めた慰謝料金額が認められることになります。一般的な相場としては50万円から100万円程度といったところです。
3、家庭内暴力が原因で離婚!慰謝料の相場はいくら?
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(1)家庭内暴力で慰謝料が請求できる場合とは?
家庭内暴力、いわゆるドメスティックバイオレンスも極めて深刻な離婚原因の1つです。単に離婚原因というだけでなく、暴力行為は重大な人権侵害であり、刑法にも抵触する不法行為とみなされます。暴力行為には身体的暴力だけでなく、継続的に暴言を言い続ける、罵倒するといった精神的暴力や、いやがっているのに無理やり一方的な性行為を強要するといった性的暴力も含まれます。こうした暴力行為を原因とした離婚手続き、慰謝料請求においては、継続的に暴力を受けたことを証明する記録や写真などの証拠が必要です。
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(2)家庭内暴力が原因の離婚での慰謝料請求の相場は?
家庭内暴力を原因とする慰謝料請求が認められた場合、他の原因と比べても被害の深刻さが大きいので、全体的に慰謝料金額は高額になる傾向にあります。婚姻期間21年で500万円の慰謝料を認めた事案もあります。もちろん,暴力の対応が悪質であったり,暴力以外にも離婚原因が複数あり,複数の慰謝料請求原因があったりする場合には,さらに高額になることもありえます。
暴力の実態や期間の長さ、悪質性によって金額は大きく違ってきますが、一般的な相場として、身体的な暴力があった場合は100万円以上になることが多いです。証拠を集めることが難しいとされる精神的暴力の場合、慰謝料の相場は50万円から300万円程度であり、こうした分野について経験豊富な弁護士を通じて請求すると、全体的に高めの金額を請求できることが多いです。
4、モラハラで離婚する場合も慰謝料請求はできる?
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(1)モラハラが原因でも離婚できるの?
モラルハラスメント(モラハラ)という言葉もかなりメジャーになってきています。ただこの「モラハラ」はDVとどう違うのかわかりにくいです。モラハラも精神的暴力の一種ですが、明確な暴言や中傷行為とはちがって、より複雑な形をとります。例えば相手側に無言の圧力をかけたり、相手のやることなすことにいちいち注文を付けたり、過剰に束縛しようとしたりといった言動、これらはすべてモラハラ行為です。夫婦の関係性がきちんとした対等関係にない場合に生じやすく、日常的に継続して暴力行為が続きがちという特徴があります。
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(2)モラハラが原因の離婚での慰謝料請求の相場は?
モラハラは精神的暴力よりもわかりにくく、日常的に継続して行われる傾向があるため、外側からは非常にわかりにくいです。そのため、浮気などの不貞行為やDVなどの暴力行為など、事件性の高いものと比べると立証の難度が格段に上がります。また、モラハラが原因の離婚が認められた場合の慰謝料については、先例も少ないため一般的な相場を示すことは難しいですが、数十万円から数百万円と言われています。
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(3)モラハラでの離婚が難しい原因とは?
モラハラは証拠集めが難しいというだけでなく、その独特の暴力の実態が立証を困難にしています。その理由の1つに、当事者に加害行為の自覚がないことがあげられます。モラハラ行為をする側は自分が正しいと思っているにすぎず、モラハラ行為自体を「相手のためを思って行ったもの」と勘違いしていることがほとんどです。また加害者側と被害者側で過剰な支配関係が成立してしまっていることも事態を複雑化しています。
加害者のなかには相手の経済的な自由や財産を奪うような行動(相手が働きに出ることを止めるなど)に出ることがありますが、こうした行為を目に見える形で立証することは困難です。夫婦間の心情的な問題もからんでしまうこともあって、なかなか慰謝料請求が認められないというケースが多いのも現実です。
そのため、モラハラでの慰謝料請求では被害者自身が明確にモラハラを受けていると自覚すること、そして継続的な暴力に対して録音、日記などの物的証拠をコツコツ集め続けることなどが重要になります。場合によっては専門家に相談してサポートしてもらうことも必要です。
5、離婚の慰謝料請求で弁護士に依頼するメリット
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(1)交渉、手続きを任せられる
離婚手続きや慰謝料請求は法律に則って手続きが行われるため相談すべき専門家は弁護士です。
弁護士に依頼するメリットは単に法律手続きを任せる、というだけにとどまりません。離婚に関する交渉の一切を代理してもらえるので、相手側や不倫相手など、直接会いたくない相手と会わなくても交渉を進められます。交渉の結果を反映した合意書の作成などの専門的な手続きまで一貫して任せられますし、こちらが有利になるための法的なアドバイスをしてくれるので、自分の想定以上の成果を得られる可能性が高まります。
弁護士事務所での事前相談などで、どうすればいいか一人で悩んでいたことを解消することができるのも大きなメリットです。裁判所での手続きを進める、内容証明郵便を送る、損害賠償請求をするといった具体的な行動をまだ起こさない場合でも、自分に合った法的な解決の道筋が示される可能性があります。 -
(2)自分に有利な結果をもたらしてくれる
最大のメリットと言えるのが、弁護士に頼むと相場よりも高い金額での慰謝料請求が認められる可能性があるということ、それから慰謝料を確実に請求するために必要な手続きや書類を作ってもらえる点です。
離婚は双方の話し合いによる「協議離婚」、裁判所の調停による「調停離婚」、裁判で決着をつける「裁判離婚」のいずれかの形をとります。
なかでも多いのが公正証書によって離婚条件を明文化し、その内容を残しておく「協議離婚」です。協議離婚は裁判手続きはありませんが、和解交渉や公正証書の作成などで専門的な知識が必要となるので、自力ではなく弁護士に依頼したほうが確実です。作成した公正証書は、もし相手側が慰謝料の支払いを拒んだ場合に相手の財産を差し押さえるための「債務名義」としての役割を果たしますから、しっかりと法的に隙のない文書を作成しておく必要があります。
また協議離婚であれ裁判離婚であれ、弁護士はどのように証拠を集めて立証すれば請求権が認められるのかを熟知しており経験豊富です。慰謝料請求権の行使を検討し始めたり離婚手続きを将来的に実行したいと考えたりした段階で弁護士に相談しておけば、事前にしっかり準備するための具体的なアドバイスを受けることができるので、のちの交渉を有利に進めることが可能となります。
まとめ
離婚は、離婚の決断へいたるまでの苦痛だけでなく、手続きが始まってからも神経をすり減らすことがたくさんあります。相手との交渉や話し合いなしに進めることはできませんし、慰謝料請求、養育費の請求などの金銭問題もからんできます。こうした精神的な負担を軽減し、自分に有利な条件を引き出すための法的知識を整えるという意味でも、弁護士に相談するメリットは大きいと言えます。一口に離婚と言っても、それぞれのご家族の事情や希望する解決の方法はさまざまです。自分の人生にとってよりよい将来を切り開くためにも、一人で悩んでいるよりは専門家と相談することから解決の糸口を探っていくことが重要となるでしょう。
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