特別縁故者として遺産を相続したい! 必要条件や手続きとは?
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平成30年、千葉県内では4万3404名の方が亡くなり、相続が開始しています。
相続の形態は多種多様であり、被相続人(亡くなった人のこと)の財産と相続人が置かれた状況の数だけ存在するといっても過言ではありません。なかには、相続人の存在、不存在が明らかではないというケースも実際にあるのです。
このような場合、被相続人の相続財産は、家庭裁判所より選任された「相続財産管理人」によって清算され、最終的に残余財産は国庫に帰属することになります。
しかし、被相続人の法定相続人ではなかったとしても、たとえば被相続人の人生に不可欠なほど親密な関係であったり、被相続人の生前のクオリティー・オブ・ライフ(生活の質)に多大な貢献をしたという方がいた場合、特別縁故者として、清算後に残った遺産の一部、またはすべてを受け取れることがあります。
特別縁故者として被相続人の遺産を受け取るためには時間を要することに加え、法的要件を満たし家庭裁判所に対して必要な手続きを踏まなくてはなりません。
本記事では、特別縁故者として被相続人の遺産を受け取るための法的要件と手続きについて、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が解説します。
1、特別縁故者とは
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(1)特別縁故者とは?
特別縁故者とは、被相続人の法定相続人ではないものの、生前に生活をともにしていた、介護などの世話をしていたなど、被相続人と緊密な関係にあった人のことをいいます。
被相続人の死後、たとえば、相続が発生しても、被相続人に戸籍上の相続人がいない、遺言がなく遺贈(遺言の指定により遺産を受け取る人)を受ける人が指定されていない、相続人全員が相続放棄などにより相続資格を喪失している、などのケースがあります。そのような場合は、残された財産を相続する人がいないということが確定し、さまざまな費用を清算後、特別縁故者に対する相続財産分与がなされる場合があります。 -
(2)相続人がいない場合の手続き
相続人の存在、不存在が明らかでない場合は、被相続人の内縁の妻、または夫や被相続人にお金を貸していた人などの利害関係人、または検察官が家庭裁判所に申し立て、相続財産の管理人を選任してもらいます。
家庭裁判所は相続財産の管理人を選任して(民法第952条第1項)、その旨を公告します(民法第952条第2項)。相続財産管理人の選任の公告から2か月が経過してから、相続財産管理人は、被相続人の遺言で遺贈を受けることになっている人や、被相続人にお金を貸していた人(債権者)がいないかを確認するため公告をします。
相続財産管理人が行った公告から2か月が経過した後、家庭裁判所は、相続財産管理人の申立てにより、相続人を探すため、6か月以上の期間を定めて公告をします(民法第958条の1)。それでも法定相続人が現れない場合は「相続人不存在」が確定します(民法第958条の2)。
相続人不存在が確定したあと、3か月以内に特別縁故者に対する相続財産分与の申し立てがされることがあります。
そして、家庭裁判所が、特別縁故者からの相続財産分与の申立てに対して相当と認めるときは、清算後に残った相続財産の全部、または一部を与える審判をします。
相続財産管理人は、相続財産の中から債権者や受遺者への支払いをしたり、特別縁故者に対する相続財産分与の審判に従って相続財産の分与をしたあと、相続財産が残った場合には、相続財産を国庫に帰属させて終わりとなります。
2、特別縁故者と認められる人とは?
特別縁故者と認められる人は、被相続人と内縁関係にあった人だけではありません
相続人不在時に特別縁故者と認められる人は、以下のとおりです(民法第958条の3)。
- ①被相続人と生計を一にしていた人
- ②被相続人の療養看護に努めた人
- ③その他、被相続人と特別な縁故があった人
上記のうち、①は内縁の夫または妻だけではなく、法定相続人ではない同居の親族などが該当しますが、それだけではありません。
たとえば、愛人についての議論があります。愛人関係は公序良俗に反するものという見方が根強く、被相続人に配偶者がいないからといって果たして愛人を特別縁故者としてよいのか、というものです。もっとも、内縁関係と愛人関係は線引きが難しいため、結局のところは家庭裁判所の判断にゆだねられることになります。
②は、被相続人と特別な縁故があった人の一つの類型として、被相続人の療養看護に努めたという人を挙げていると考えられます。
③については、個別事情を勘案のうえ家庭裁判所が特別縁故者に該当するか否かを決定することになります。
過去の判例では、被相続人の配偶者の死後に親身に被相続人の相談に乗っていたいとこの子どもが認められたケース、被相続人に長年生活資金の仕送りや住居購入資金の支出を行っていた被相続人の義理の妹が認められたケース、被相続人の身元引受人と任意後見人になっていたまたいとこの配偶者が認められたケース、歌人である被相続人の活動に協力し葬儀や遺稿の整理を行った義理の弟が認められたケースなどがあります。
3、遺言書の法的効力とは
遺言は、作成した人の意思を死後に実現させるものです。
遺言書に記載することによって法的な拘束力が生じる事項を「法定遺言事項」といいます。主な法定遺言事項とは、以下のとおりです。
- 財産の処分に関すること……第三者への遺贈など
- 相続に関すること……遺贈や相続させる財産の特定、法定相続割合と異なる分割割合の指定、遺言執行者(遺言書の内容を実現する人)の指定など
- 身分に関すること……子どもの認知、法定相続人の廃除や取り消し、未成年後見人や後見監督人の指定
- その他……葬儀や墓の管理など、祭祀(さいし)を主宰する人の指定
被相続人に法定相続人がおらず、遺言で上記のうち「財産の処分に関すること」であなたのことが指定されていれば、「受遺者」として遺産の相続については法定相続人と同等の権利を有します。したがって、遺産の分与を受けるために特別縁故者になることについてはもう気にする必要はありません。
しかし、遺言書がなく、または、遺言書があっても法的要件を備えていなかったり、法定相続人がいないのに遺言書に財産の処分について何も記載がなかった場合は、遺産の分与を受けるために特別縁故者として認められるための手続きをとる必要があります。
4、特別縁故者の手続き
特別縁故者として相続財産分与の申し立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。ただし、被相続人が死亡して相続が発生した直後に申し立てても、直ちに家庭裁判所に認めてもらえるわけではありません。
特別縁故者として遺産分与を申し立てることができるタイミングは、家庭裁判所が相続財算管理人の申し立てにより、相続人を捜すため、6か月以上の期間を定めて公告をして、相続人がいないことが確定したあとです。
相続人がいないことが確定する前に法定相続人が現れた場合は、特別縁故者として財産の分与を受けることができなくなります。
また、戸籍謄本などの調査により明らかに法定相続人が存在しているものの、家庭裁判所の呼びかけに応じない、あるいは行方不明になっている場合も、特別縁故者は、相続財産分与の申し立てをすることができません。
家庭裁判所に対する特別縁故者としての遺産分与の申し立て・請求は、相続人不存在が確定してから3か月以内です(民法第958条の3第2項)。このときに必要な費用や書類は、以下のとおりです。
- 収入印紙800円
- 家庭裁判所からの連絡用の郵便切手
- 申し立て書
- 申し立て人の住民票または戸籍附票
- その他、家庭裁判所が要請する書類
特別縁故者として家庭裁判所に相続財産分与の申し立てをするときは、被相続人とどのような関係にあったのか事実をできるだけ詳しく説明し、被相続人の遺産を国庫に帰属させるよりも分与する方がふさわしいと認めてもらわねばなりません。そのためには、申し立て書にできるかぎり実情を説明するための書類を添付するとよいでしょう。たとえば、被相続人とやり取りした手紙やメール、日記などが考えられます。
5、まとめ
特別縁故者として認められ被相続人の財産の分与を受けるためには、さまざまな書類の準備や家庭裁判所へ申し立てなどをする手数が発生します。また、特別縁故者として相続財産分与の審判を受けるまで、時間がかかります。
ひとりで準備を行い、特別縁故者としての権利を主張することは、想像以上に大変な手間がかかることになります。
相続問題の解決に知見と実績のある弁護士に依頼をすれば、特別縁故者として認められるための必要なアドバイスの他、あなたの代理人として家庭裁判所へ必要な各手続きを代行することも可能です。
特別縁故者の申し立てをご検討する際は、ぜひベリーベスト法律事務所 千葉オフィスまでご相談ください。あなたのために、ベストを尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています