相続手続きの代行はどの専門家に依頼すべき? 得意分野・選び方
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人口動態統計のデータによると、2019年中の千葉市内における死亡数は9340人(前年8777人)、人口1000人に対する死亡率は9.5(前年9.0)となりました。
相続手続きの代行サービスを取り扱っている専門業者はいくつか存在しますが、相続に関する具体的な事情に応じて、適任の業者に依頼することが大切です。
この記事では、相続手続きの代行を取り扱う業者ごとの得意分野や、具体的な事情に応じた選び方などについて、ベリーベスト法律事務所 千葉オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「令和元年合計特殊出生率等(確定数)の統計データ」(千葉市))
1、相続発生後に必要な手続きとは?
家族が亡くなって相続が発生した場合には、遺産の承継などに関してさまざまな手続きが必要となります。
以下では、相続で必要となる手続きの一例を紹介しますが、必ずしもこれらに限らないので、専門家に相談しながら漏れのないように対応しましょう。
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(1)遺言書の確認・検認
被相続人が遺言書を残している場合には、原則として遺言書の内容に従った遺産分割を行います。
そのため、まずは遺言書があるかどうか、ある場合にはその内容を確認することが先決です。
なお公正証書遺言を除いては、遺言書の保管者は相続開始を知った後、遅滞なく、家庭裁判所に対して遺言書を提出し、検認を請求する必要があります(民法第1004条第2項)。 -
(2)遺産分割協議
遺言書がない場合や、遺言書の中で配分が指定されていない遺産がある場合には、「遺産分割協議」によって誰が遺産を承継するかを決定します。
遺産分割協議では、各相続人の法定相続分を踏まえたうえで、それぞれの遺産承継に関する希望を調整し、最終的な遺産分割案への合意を目指します。
遺産分割案への合意が得られたら、遺産分割協議書を作成したうえで、相続人全員が調印します。 -
(3)遺産の名義変更(相続登記・預貯金や証券の移管など)
遺言書または遺産分割協議で遺産の配分が決定したら、配分内容に従って、実際に資産の名義変更を行う必要があります。
名義変更手続きの代表例としては、不動産の相続登記や、預貯金口座の払い戻し手続き、証券口座の管理者変更手続きなどがあります。 -
(4)準確定申告・相続税申告
相続発生後には、「所得税の準確定申告」および「相続税申告」という税務上の申告を行う必要があります。
それぞれ期限が定められているので、早めの対応が必要です。① 所得税の準確定申告
被相続人の所得に対して課税される所得税について、1月1日から死亡日まで期間に対応する申告を行います。
相続開始を知った日の翌日から4か月以内に、申告と納税を済ませることが必要です。
② 相続税申告
相続財産の金額に応じて課税される相続税の申告を行います。
延納が認められる場合を除き、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に、申告と納税を済ませることが必要です。
2、相続手続きの代行を依頼できる専門業者の種類
相続手続きの代行を依頼できる業者としては、主に弁護士・司法書士・税理士・信託銀行などが挙げられます。ただし、当事者間に話し合いで解決しない法律問題が生じている場合に代行できるのは弁護士だけとなっております。
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(1)弁護士
弁護士は、法律事務全般を取り扱う資格を有しています。
相続には多様な法律問題が関係しますが、弁護士はそのすべてを取り扱うことができるので、相続手続きを全面的に任せることが可能です。
特に法律問題が絡む相続の場合は、弁護士への依頼が必須と言えます。 -
(2)司法書士
司法書士は、弁護士に次ぐ法律資格として知られています。
司法書士も最近では、相続手続き全般を代行する「遺産整理業務」の取り扱いを打ち出しています。
当事者間で争いが一切なくシンプルな相続案件であれば、司法書士に依頼することも可能でしょう。
司法書士は、「紛争性のある相続案件」を取り扱うことができない点に注意が必要です。 -
(3)税理士
税理士は、相続手続きの中でも、所得税の準確定申告や相続税申告など、税務上の手続きに特化した専門家です。
相続財産の規模が大きい場合などには、税務申告との関係で税理士のサポートが必要になるでしょう。
ただし、税理士は「法律事務を取り扱うことはできない」ので、相続手続きへの対応に当たっては、税は税理士、法律事務は弁護士が行うという連携が一般的に行われています。 -
(4)信託銀行
紛争性のない相続案件であれば、信託銀行に遺産整理業務を依頼することも可能です。
信託銀行には遺産整理業務に関するノウハウも集積されていますので、各面においてサポートを受けられます。しかしながら各分野(法律、税、登記など)に関して各専門家でなければ対応できないケースもありますので、費用面については注意が必要な場合もあるかもしれません。
3、相続代行の依頼先ごとの得意分野
相続手続きに関する専門性を重視するのであれば、やはり各種士業に代行を依頼することが第一の選択肢となります。
弁護士・税理士・司法書士にはそれぞれ得意分野がありますので、ご家庭の事情に合わせて依頼先を選択しましょう。
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(1)相続人同士で揉めている場合は弁護士
相続人同士の間で、遺産の承継方法や配分などについて争いがある場合には、弁護士への依頼が必須となります。
特に、遺産分割協議の段階から専門家のサポートが必要な場合や、特別受益・寄与分・遺留分侵害額請求などが問題になっている場合には、弁護士への依頼をまず検討すべきでしょう。 -
(2)準確定申告・相続税申告は税理士
所得税の準確定申告および相続税申告については、税務上の手続きであるため、税理士の専門領域となります。
ただし、相続に関する法律上の処理については、基本的に弁護士または司法書士が担当するので、上記の申告業務を税理士に依頼をする場合は、弁護士や司法書士への依頼とセットになることが多いです。 -
(3)相続登記は司法書士
司法書士は、本来登記業務を専門的に取り扱う資格です。
相続の場面では、特に不動産の相続が発生する場合、登記手続きをワンストップで依頼できることから、司法書士に依頼するメリットがあるといえるでしょう。
ただし、相続人間で不動産に関する紛争が生じている場合には、司法書士ではなく弁護士に依頼をしなければなりません。
その場合は、弁護士によって紛争が解決され、不動産を相続する人が確定した段階で、登記手続きのみを司法書士に依頼するという流れをとることになります。
4、相続時のトラブルは弁護士に相談を
相続手続き代行の依頼先としては、これまで解説したように、各種士業や信託銀行などさまざまな業者が考えられます。
しかし、相続手続き全体を見据えて総合的に考えると、以下の理由から、当初より弁護士に依頼するのがおすすめです。
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(1)あらゆる相続問題を取り扱うことができる
弁護士はすべての法律事務を取り扱うことができるので、税務上の申告を除けば、相続に関して取り扱うことのできる事務に制限がありません。
相続では、実にさまざまな法律的な問題が発生する可能性があります。
相続手続きを進めるうえで、何が起こるかわからない以上、業務範囲がもっとも広い弁護士に依頼するのが得策でしょう。 -
(2)紛争を解決できるのは弁護士だけ|潜在的な紛争への備えにもなる
相続に関して発生する問題の中でも、特に紛争の解決を業務として取り扱うことができる点に、弁護士の大きな強みがあります。
たとえば特別受益・寄与分・遺留分侵害額請求などは、相続に関してよく問題になる典型的な論点ですが、これらを取り扱うことができるのは弁護士のみです。
現実にこれらの論点に関して相続人同士で揉めてしまっている場合には、弁護士への依頼が必須でしょう。
さらに、現状では円満に相続手続きを完了できるように見えても、途中で一部の相続人が前言を撤回し、遺産相続について他の相続人とは対立する主張を展開する可能性もあります。
その場合、司法書士などの別の専門家に依頼をしていたとしても、改めて弁護士に依頼をしなければならず、二度手間になってしまい、費用も余分にかかることになります。
このような二度手間を避けるためにも、当初から弁護士に依頼しておいた方が安心です。 -
(3)税理士・司法書士の紹介も受けられる
相続税申告や相続登記の手続きは、弁護士が自ら取り扱うことは多くありません。
そのため、相続税申告は税理士、相続登記は司法書士に別途依頼するのが一般的です。
この点、相続を弁護士に依頼する場合、提携先の税理士・司法書士の紹介を受けることができるため、別途税理士や司法書士を探す手間が生じることはありません。
特にベリーベスト法律事務所では、グループ内に税理士・司法書士が在籍していますので、必要に応じてスムーズにご紹介することが可能です。
5、まとめ
相続手続きの代行は、相続に関する紛争をはじめとしたトラブルに備えるため、当初から弁護士に依頼することをおすすめします。最初から弁護士が手続きに関与することで紛争の原因を取り除くことも可能です。
ベリーベスト法律事務所では、相続手続きを専門的に取り扱うチームが、相続紛争の解決をはじめとして、相続に必要となる各種の手続きを全面的に代行し、依頼者の負担を軽減いたします。
相続手続きや、他の相続人との間でのトラブルにお悩みの方は、お早めにベリーベスト法律事務所 千葉オフィスにご相談ください。
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